日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第363夜 生存者奪回作戦

木曜の朝方に観ていた夢です。

俺は特殊警備隊の隊員だ。
1チーム12人の編成で、敵の拠点を攻撃している。
この場合の「敵」とは、死霊ウイルスの感染者だ。

ある研究所から軍事用に研究していたウイルスが漏れ出たのだが、これはすぐに変異して大流行した。
このウイルスに人が感染すると、神経系統を乗っ取られる。
たんぱく質を求めて、あたり構わず生き物に食いつくようになってしまう。
ゾンビに似ているが、ゾンビと違い背骨の中央付近に巣を作るので、脳に損傷が生じても死なない。
顎を落として食い付けなくするか、背骨を分断するほかは、倒す手立てがない。
脳は良質のたんぱく質の塊なので、ウイルスは最初に脳を食べる。
だから、一度発症すれば、元には戻らない。

感染経路はさまざまで、接触のみならず飛沫感染する者もいる。
ゾンビだったら齧られなければ大丈夫だが、こっちはいつどこで感染するか分からない。
抵抗力の乏しい者が感染してしまうのだ。

このため、対抗措置は「殺して焼く」しかない。
俺たちのチームはそのために編成された部隊だった。
もはや人類の9割が感染し、残っているのは1割以下だ。
今の仕事は、感染者を殺すことの他、未感染の生存者を救出することになっている。
まあ、今の時点で感染・発症していなければ、空気や飛沫くらいでは感染しない。
抵抗力があるから、生存出来ていたわけだ。
齧られなければ、おそらく大丈夫だろう。

この日の作戦は、砂丘の中にある研究所だった。
ここは数年前に、感染症予防研究所として作られた施設だ。
他と切り離すために砂丘の中に作られ、死霊ウイルスの研究を行っていた。
ところが、やはりここでも感染者が多数出て、感染者たちに支配されてしまった。
結局、「捨てられた施設」になっていたが、たまたま偵察機が上を通り掛かったら、屋上に「助けて」という文字が見えた。
実際に、研究員らしい服を着た人が確認されもした。
そこで、俺たちの出番になったのだ。

研究所の前まで来ると、建物の周りには何万人かの感染者がいた。
「隊長。どうします?」
「どうするもの何も、突破するしかあるまい。俺たちが来たことを中に知らせて、突入するしか方法はない。いつもの曲をかけろ」
すぐに隊員の1人がスピーカーで曲を流す。
曲はもちろん、「ワルキューレの騎行」だ。
こっちが感染者ではないことを示すためなら何でも良いわけだが、威勢が良いからこれにした。
ま、今どき『地獄の黙示録』なんて古い映画を憶えている者も少ないのだが。

感染を予防するため、俺たちの部隊は皆、ゴーグルとマスクをしている。黄色い蛍光色だから、仲間同士で見間違うことは無い。
ところが、感染者にとっても同じで、この色を見ると、一斉に寄り集まって来る。
実はそれがこっちの狙いでもある。
十分に奴らが集まったところで、火炎放射器で焼き尽くすためだ。
こうすれば、相手が何万人いようと、大して手数は掛からない。

玄関から入るまでに、俺たちは何千人もの感染者を焼いた。
しかし、どこから湧いて出て来るのか、途切れることなく感染者が現れる。
「うひゃあ。なんだここ。1万2万じゃないですね」
俺の隣で隊員の小林が呻いている。
「とりあえず中に入ったら、スペースを確保しよう。未感染者を収容したら、すぐに脱出して、ここにはミサイルで攻撃してもらうことにする」
火炎放射器には燃料に限りがある。
中庭の途中でそれが切れたので、俺たちは小火器で応戦しながら中に入った。

1階のフロアが激戦で、隊員の2人が犠牲になった。
銃を撃ちまくりながら、階段を上がり2階に向かう。
2階に上がってみると、どうしたことか、感染者たちは上には追って来なかった。
「隊長。あいつらはどうしたんでしょう?」
階段の下に感染者たちが見えている。皆立ち止まって、上の方を恨めしそうに見上げているだけだった。

「上には来られないんですよ」
背後で声がしたので、そっちを振り返ると、白衣を着た女性の研究員が立っていた。
「感染者が嫌う匂いがここには充満しているのです」
女はやはり研究員で、ここで死霊ウイルス対策を研究していた。
「ここで研究していたことで、成功した1つは、この忌避剤です。感染者が出す臭いは、互いに仲間であることを示すサインでもあったので、これを濃縮しました」
「じゃあ、それを使えば襲われないわけだな。なんでもっと早く報せない」
女が首を振る。
「通信施設が壊れています。それに、この忌避剤の匂いの基は感染者から抽出したものです。百グラム作るのには数千人の髄液が必要になります」
ここで俺はもう1つのことに気がついた。
「それと、効き目がそんなに長く続かないってことだな」
だから、屋上で助けを求めたのだ。
「はい。あともう少しで、死霊ウイルスに対抗するためのウイルスが完成しますが、結果が出るのは、この忌避剤が無くなった後です」
「じゃあ、どうしてもそれを持ってここを脱出しなくてはならんな。その抗ウイルス・ウイルスはどこにある?」
「私です」
「え?」
「効果を確かめるために、私自身に打ちました」
「大丈夫なのか」
「他に方法がありません。生存者は私独りですから」
「なんだかよく分からんが、そいつはどんなやつなんだ?」
「死霊ウイルスを変異させ、無力化します。元は同じウイルスですが、一定の条件下では発症しないように遺伝子を操作しました」
下の階で「うおう」「うおう」という喚き声が聞こえる。
感染者が動き出したのだ。
「話を聞いている時間は無いな。よし、とにかくここを脱出しよう。忌避剤はどれくらい残っているんだ?」
「3グラムです。5、6分くらいしか持ちません」
「よし。ひとまず行けるところまで行こう」

ここで女性研究員を中心に置き、俺たちは一団となった。
階段の中ほどまで下ったところで、研究員が瓶のキャップを開く。
すると、その女が言った通りに、感染者たちが後ろに下がった。
俺たちの周りに十辰隆峽笋出来た。
「よし。今のうちだ。行けるところまで行って、後は早いとこ装甲車に乗るだけだ」
じりじりと前に進む。
俺たちが前に進むと、感染者は次々に道を開ける。

しかし、施設の玄関を出ると、薬の効力が切れて来た。
「うう」「おお」
感染者がうなり始め、間合いが近くなった。
「そろそろだな。よし、皆。車まで走るぞ。俺が援護するから、真っ直ぐ走って装甲車に乗り込めよ」
返事を待たず、俺はバリバリと銃撃を始める。
前列の感染者がバタバタと倒れた。

俺はありったけの銃弾を感染者たちに浴びせて、死体の山を築いた。
後ろを振り返ると、隊員の大半は車に乗り込むところだった。
「そろそろ良いようだな」
もう一度、バリバリと撃つ。
撃ちながら俺は少しずつ後退を始め、弾が切れたところで銃を放り捨てた。
感染者に背中を向けて走り出す。

「隊長。頭を下げて!」
装甲車の上で小林が叫んだ。
俺が腰を屈めると、小林はすぐさま機関銃を撃ち始める。
途切れなく続く銃弾が、感染者に降り注ぐ。
俺は十分に余裕を持って、装甲車の1つに乗り込んだ。

「さあ出発だ!」
すぐに発進した。
俺が腰を下ろすと、目の前にはあの研究員が座っていた。
「こいつに乗ってたのか」
改めて見直すと、この女研究員はなかなか美人だった。三十を少し過ぎたくらいか。
かなり痩せている。だいぶ苦労したんだな。
そりゃそうだ。孤立した研究所に長い間こもっていたのだから。
「疲れただろ」
「はい」
「それくらいの間、あそこに独りで居たんだ?」
「半年くらいです」
「よく食料がもったよな」
ここで俺は、ほんの少しだが、この女が同僚の研究員を食っている姿を想像した。
まさかね。
「腹は減ってないか?」
女が頷く。
「死ぬほど」
俺はひとまず水筒の水を渡した。
「ひとまずこれを飲んで。食料は非常食が少しあるかもしれないので、隊の者に探させる。まあ、1時間もすれば前線基地に戻れるから、その時にはあきれるほど食べられるよ」
「どうも有り難う」
女はぐびぐびと音を立てて、水を飲んだ。

「ところで、抗ウイルスのことだが」
話が途中までだった。
「どんなものなんだい?」
女が答え始める。
「死霊ウイルスは、紫外線や放射線の影響を受けていることが分かったんです。そこで、その影響力を増幅させた改良型のウイルスを作りました」
「どうなるの?」
「感染者に入れると、改良型アルファウイルスは、元のウイルスを自分の仲間に変えます」
「効果は?」
「まだはっきりしていませんが、紫外線の強い時には活動を停止します。昼に太陽が出ている時は平気です。放射線の量にもかなり敏感になっており、夜はこちらの影響で眠ります。夜の方が放射線量が幾らか高いですからね」
「すると、いずれは自然を頼りにするだけでなく、人工灯や放射線の照射でウイルスを不活性化出来るわけか」
「それが目標なのですが、まだ未完成です」
「そっか。早く完成すれば良いよな」

装甲車の隙間から、月の光が差している。
いつの間にか、夜になっていたのだ。
研究所ではかなりの激戦だったから、時間の経つのを忘れていた。
俺は上のハッチを開き、頭を出した。
「良い月だ。この分じゃあ、明日も晴れだな」
砂丘の上に、丸い月が出ている。

梯子を下りて、装甲車の中に戻る。
すると、隊員たちがごろごろと倒れていた。
「何だ。何があった」
すぐに俺の右肩の後ろから、女研究員の声がした。
「ごめんなさい。まだ夜のコントロールは出来ないの」
女が俺の首の動脈にかじりつく音が響いた。

ここで覚醒。

しばらく前に観た夢の続きか、それから派生したものです。
ゾンビウイルスに対抗するために開発したのがバンパイア・ウイルスだった。
そんな内容でした。
小説に直すには、辻褄の合うような構成にする必要がありそうです。