日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第377夜 首切り関白

日曜の2つ目の夢です。

オレは侍だ。
主人の護衛をしており、常時その傍にいる。
と言っても、主人の視野に入るか入らないかくらいの距離だ。
間合いは概ね五間。何か場が緊張した時には、三間まで詰める。
その距離なら、誰かが主人に斬りかかっても、間に飛び込んで防御できる。
この日も大広間の片隅に立ち、中を見回していた。

主人の前に1人の男が進み出る。
男は床に手をついて座礼をした。
「後ろに手相見を連れて来ました。都で一番と言われている手相見でござりまする」

これを聞いた主人の目が光る。
「ふん。前に連れて来い」
オレは内心ドキドキした。
「不味い。関白さまがご立腹だ」
それもそのはずだ。手相見だものな。

オレは主人の近くにいる前田さまの方を向いた。
オレの視線を感じたのか、前田さまもオレの目を見た。
眉間の間に皺が寄っている。

広間の前に進んで来たのは、五十歳くりの男だった。
「どれ。わしの手を見てみろ」
主人が右手を差し出した。
男が歩み寄って、その手を取る。
「ああ。これは・・・」
「何だ。すぐに申してみよ」
男は黙ったままだった。

いかん。これから嵐が来るぞ。
オレはとばっちりを食らうことが無いように、視線を床に落とした。
「声に出して言ってみよ。何か気の付いたことがあるのか」
きっとオレの主人は、今は怖ろしい顔つきをしていることだろう。
こんな状況は幾度もあった。
また幾つもの首が飛ぶだろうな。

狼狽える手相見を前に、主人が怒声を浴びせた。
「こんな役にも立たない奴をなぜわしの前に連れて来た。こやつとさっきの男の首を刎ねろ。ここから良く見えるように、城の真下で刎ねるのだぞ」
「ああ。そんな」
先ほど仲介した男も大慌てで前に出る。
「お待ち下され。何かの手違いでござりまする」

主人が「ふん」とせせら笑う。
「何が間違いだ。これを見よ」
いかん。オレは一層、深く頭を下げ、前を見ないようにした。
おそらくオレの主人は自分の右の掌を開いて示している筈だ。
そして、その掌には指が六本ついている。

「ああっ!」
男たちの数人が声を上げた。
すかさず主人が命じる。
「今、声を上げた者たちの首も刎ねよっ」

視線を上げると、前田さまがオレに目配せをしていた。
「すぐに収拾しろ」という合図だ。
オレは立ち上がって、小走りで男二人に近づいた。
「お前たちを拘束する。神妙に従え。従わずば、一族皆が苦しむことになるぞ」
オレは前の男を蹴り倒した。
オレの同僚が三人で男二人を取り囲む。
「無礼者」「覚悟しろ」

大声を上げるのは、他の者を守るためだ。
大仰に騒ぎ、当事者二人を捕縛することで、主人が「声を上げた者総てを殺せ」という後の命令を忘れてくれるかもしれん。
話を極力小さくするには、当事者二人にすぐに死んで貰わねばならぬのだ。

二人を捕縛し、オレたち護衛は廊下に出た。
長い廊下を渡り、階下に降りる。
後ろに人の気配が無くなったところで、オレは二人に告げた。

「関白さまの指が六本あることをお前たちは知らなかったのか。まあ無理もない。噂話をしたことが知れただけで、首が飛ぶ」
「どうかお助け下さい」「お願いします」
「もはやどうにもならぬ。もしお前たちの家族の命を助けたくば、出来るだけみじめな死に方をせよ。声を高く泣き叫べ。そうすれば、関白さまはそれで満足なされる」
男たちががっくりと頭を垂れる。

オレはここで深くため息を吐いた。
「ああ。こんな世の中は早く終わってくれぬものか」
しかし、あの男が生きている限り、ずっとこれが続くのだ。
オレはもう一度、ため息を吐いた。

ここで覚醒。

「そろそろ続きを書け」という暗示だろうと思われます。
それなら、日に数時間ずつでも机に向かえるようにならないとね。