日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第447夜 冥界の小部屋

夢の話 第447夜 冥界の小部屋
 22日の午前2時頃に観た夢です。

 瞼を開くと、和室に座っていた。
 20畳くらいの広さで、旅館の一室風だ。
「またここに来たのか」
 ここはこの世とあの世との境目にある空間だ。
 「あの世への中2階」と言うべきか。「冥界に向かう途中の部屋」なのだが、表現が面倒なので「冥界の小部屋」と呼ぶことにした。大広間のこともあるが、概ね20畳程度までの広さだから「小部屋」というわけだ。
 オレにとってのこの場所は和風の旅館だ。形相は人が描き出すイメージに依っているから、受け止め方は人によって違う。教会に見える者もいれば、山の中だったりもする。
「かたち」はあまり関係が無い。
 俺にとってのこの場所は平屋建ての旅館で、和室が沢山連なったつくりになっている。連なった部屋の周囲を縁側廊下が囲んでいて、そのどこかに出入り口がある。
 オレは入り口のありかが分かっており、そこから出入りしている模様だ。
 正式な出口のことは知らないし、知りたくもない。もし、正しい出口から外に出ると、そこは完全なる「あの世」だからな。
 平屋建てのつくりと言ったが、それもオレのイメージで、実際には何階にも、何万階にも階層が重なっている。ただし、各階を行き来することが出来ないから、平屋だと認識するわけだ。
 この場の説明はここまでだ。いずれ誰でも通る場所だから、あとは自分で確かめろ。

 さて、我に返ると、オレは和室に座っていた。
 少し離れたところに、数人の男女が寝ているのが見える。
 オレは立ち上がって、そっちに行ってみた。
 真ん中に鍋が置いてある。それを囲んで男が3人、女が1人寝転んでいた。
 皆若い。20歳台の半ばくらいだな。
 卓台の上には、使った後の食器が散らばっている。
 「ああ。ここで物を食っちまったのか」
 ここはあの世の手前だから、本人が帰ろうと思えば帰ることが出来た。
 「でも、それは物を食う前の話だ。ここで食事をしたら、もはやアウト。もう先に進むしかない」
 すなわち、あの世行きってことだ。
 「ダイジェストで良いから、古事記や般若心経の解説を読めばいいのに。全部書いてあるぞ」
 ま、文面でなく、その裏の本意を汲み取るのは容易じゃない。
 坊さんは知識に頼るから、逆に誤っていることの方が多い。一般人なら、死ぬのが怖いから、「あの世」が存在することすら認めようとしない。
 ま、こんなごたくは要らないが。

 この若者たちは車に乗っていた。皆でスキー場に行ったのだ。
 昼はスキーで夜中は遅くまで騒ぐ。帰る直前まで滑るから、高速に乗った頃には疲れ果てていた。それでも、何とか運転して、ようやく高速の料金所に差し掛かる。
 誰でもホッとするよな。
 そのホッとした瞬間に、運転手が居眠りをしてしまう。
 ブレーキを踏まずに料金所に突っ込んで、前の車や料金所の壁に激突したということだ。
 運転手以外は眠り込んでいたから、自分たちが事故に遭ったことすら知らずに、ここに来たことだろ。

 「うう」
 4人のうちの1人、女の子が呻き声を上げた。
 気が付いたのだ。
 「おい。起きろ」
 女の子が両眼を開いた。
 「君はここで何か食べたのか」
 「いえ。何も食べてません」
 赤ランプが回るのが見える。
 この子は救急病院のICUにいるのだ。
 「ふうん。じゃあ、まだ間に合うかもね。さっさと起きてついて来な。死ぬには早い齢格好だし」
 「え」
 「考えている時間は無い。早く起きろ」
 「他の子たちは?」
 「もう死んだ。戻れるのは君だけ。他はたぶんもう遅い」
 右手を差し出して、女の子の腕を掴む。

 「君は外の様子を窺ってな。誰かがいると不味い。オレは念のため、別の子たちを確かめる」
 男の子の様子を確かめる。しかし、やはりもう死んでいた。眼を開き、自分がどこにいるかを悟るまでは、ここに横たわっていることになる。
 「きゃあっ」
 女の子が悲鳴を上げる。
 「どうした?」
 「あの穴から誰かが見てる」
 女の子が指差す方を見ると、襖に穴が開いていた。
 その穴からひとつの目が部屋の中を覗いていた。
 心の無い視線だ。

「ああ。これは悪霊なんだよ。縁側にはこの世に戻れず、あの世にもいけないやつらが沢山いる。現世の者がこいつらのことを霊と呼ぶが、正確には『あの世に行けない魂』のことで、魂の中のごく一部だ」
 オレは襖に開いた穴に、思い切り人差し指を突き入れた。
それと同時に、襖の向こうから「ギャッ」という悲鳴が上がる。
「こういうのは、招き入れない限り入っては来られない。縁側をうろつくだけだ。もちろん、こっちが出て行くときには、十分に気を付ける必要があるけどね」
 オレは襖の前に立ち、外が静かになるのを待った。

 「これから帰るから、後ろをついて来て。怖がらないのが大切だ。怖がると波が立って、その隙間に悪霊が入り込む。悪霊は君に取りつくんじゃなくて、君の中に入り込んで、君自身になる。だから強い志で弾き飛ばすことが肝心だ」
 「はい」
 外の気配が無くなったところで、襖を開いて廊下に出た。
 「今のところは行けそうだけどね」
 ゆっくりと足を踏み出した。

 もちろん、そんなには甘くない。
 縁側廊下を中ほどまで歩くと、周りに煙が流れて来た。
 これは古い魂のかけらだ。
 程なく、まだ人格のあるヤツがやって来る。オレの苦手なあの縦縞の着物を着た女もすぐ近くに居るような気がするぞ。
 「前はここに来る度に、本当に恐ろしい思いをしたが、今は違うな」
 何故なら、今のオレはご神刀を持っているからだ。
 これがあれば、悪霊をぶった切ることが出来る。
 オレは刀を引き抜いた。
 それと同時に、廊下の奥から色んな首が飛び出して来た。
 オレはあまり動じることなく、そいつらを刀で斬った。
 「案外簡単なもんだな」
 ま、神さまからこの刀を拝領したから簡単なわけで、これが無ければすぐに捉えられたことだろ。
 長いと思えば長い、短いと思えばあっという間の時間が過ぎて、オレは縁側廊下の端に着いた。
 いつもはここに階段があるのだが、この時はドアだった。
 これを開けると、現世に戻ることが出来る。
 ドアノブに手を掛け、軽く引くと、扉は簡単に開いた。
 「ほら。ここから出て先に進むと、君は病院のベッドに戻る。ベッドで眼を醒ました時には、ここでのことは忘れているだろうけど」
 しかし、後ろを振り返ると、そこには誰もいなかった。

 「ついさっきまでそこにいたのに・・・。あの子、出口を間違えたんだな」

 ここで覚醒。

 最近はこの世とあの世の境目に行く夢を頻繁に観ますが、そういう時はやはり調子が悪い時です。夢を観ながら、自分の体の感覚をも自覚していますが、息苦しくて呻いています。
 心臓の調子が悪い時にこの夢を観るのだろうと思いますが、目覚めた後に血圧を測ると、上がかなり高くて、下が低いという理解不能な値になっていました。
 「ご神刀」のイメージは、幾度となく参拝しているうちに身に着いたのでしょう。
 これがあると、悪夢の中でも恐怖心を打ち祓うことが出来、心強いです。