日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話 第454夜 パーティ

◎夢の話 第454夜 パーティ

 瞼を開くと、宴会場の入り口に立っていた。
 たぶんホテルの1階のフロアだろ。
 受付には誰も居らず、そのまま中に入ってみる。
 宴会場の中では、老若男女が楽しそうに会話をしていた。
 「2百人はいそうだな」
 皆、飲み物を片手に持ち、談笑している。

 「お飲み物をどうぞ」
 女性が差し出すグラスを受け取る。
 中身はシャンパンだった。
 「あ。あれは」
 5団?茲法見覚えのある顔がある
 あれは確か・・・。
 寮で暮らしていた時に、一緒だったヤツだ。
 もう30年以上前の話だよな。
 その男はオレの部屋から5つばかり奥の部屋にいた寮生だ。
 寮生が250人もいたから、同じテーブルで飯を食ったことがあっても、ひと言も会話を交わした事が無い。
 背が高くて長髪の姿は、あの時のままだった。
 「しかし、あの男は」
 確かO山の飛行機事故の時に死んだはずではなかったか。
 そう言えば、外見も20歳かそこらだな。

 別の方角に視線を向けると、そこにも見覚えのある顔がある。
 女の子だ。
 「あれは同級生だっけな。中学だったか。それとも」
 その子のことはよく覚えている。
 だって、オレはその子が死んだときに葬式に行ったものな。
 まだ二十台だったのに、人は死ぬべき時にはあっけなく死ぬ。

 「おいおい。もしかして、この部屋にいる者は」
 全員が死んだ者ばかりだったりして。
 そう言えば、この会場は、『シャイニング』っていう映画のホテルの場面に似ている。
 主人公の売れない作家がバーカウンターで、存在しないバーテンから酒を注いで貰う場面だ。
 もしかして、この部屋の参加者全員が死んでたりするのか。
 そこで、年齢と年齢階級別死亡率のことを思い出す。
 「えーと、西暦2千年くらいの死亡率で計算すると、同時出生者で65歳までに死ぬ者の確率は百人中8人か9人だ。死ぬ者は乳幼児の時と、20歳前後の自殺、30歳女性の子宮がんと男の厄年に集中している。65歳を過ぎると、毎年5人から7人ずつ減って行く」
 でも、それは全人口の死亡率をあてはめた場合の話で、あくまで机の上で描く「物語」だ。
 同時出生集団の死亡率を知りたいなら、実際に、ある特定の年に生まれた者が、何年後にどれくらい死んだかを計測する必要がある。
 そうすると、団塊の世代とオレたちその下の世代とは状況がまったく違う。
 各歳で死んだ者の割合を見れば、団塊の世代が極端に低く、他はバラバラ死んでいる。
 となると、団塊後期高齢者になった辺りから、日本人の死亡率または生存率は激変する筈だ。
 団塊よりひと回り下の世代の概算死亡率は、団塊の1.2倍で、これは比較的若年での話だから、高齢期に差し掛かれば、さらに開きが出るかも。
 これまでに、オレが入ったあらゆる学校の同級生で、一度でも対面したことのある人をカウントすれば、おそらく5千人から2万人の間だ。
 「交流があった」と見なすと、同級生だけでなく上下級生数年が入るから2万人から3万人だ。
 オレはまだ高齢期までは間があるから、団塊よりもやや高い租死亡率を想定すると・・・。
 「あんれまあ。ちょうどこの部屋にいる人数くらいだ」
 
 ここでオレの背中に悪寒が走る。
 「ここにいる参加者の全員が、もはやこの世を去った者だとして、しかも全員のことをオレが知っていそうな気がする」
 それじゃあ、このパーティは一体何のために開かれてるんだよ?
 「もしかして、オレの歓迎会ってこと?」

イケネ。すぐにここから出なくては。
 「まだ飲み食いしていないから大丈夫だろ」
 あの世に踏み込んだ時に、飲み食いしてしまうとそっちの住人になるんだったな。
 そこは、日頃から自戒していることだから、まさかしくじってはいないだろ。
 「グラスを置いて、とっとと逃げ出そう」
 最初にオレにシャンパンをくれた女の子が通り掛かったので、オレはその子の持つトレイにグラスを乗せようとした。
 「うっ」
 オレが改めてそのグラスを見ると、中身が1/3ほどに減っていた。
 「まさか・・・。オレって、これを飲んでしまってるのか?」

 オレはついさっきまでの記憶を辿ろうとするが、どうしても思い出せない。

 ここで覚醒。