日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎障害者日記(5/25)

◎障害者日記(5/25)
 今日は眼科の検診日。
 眼科には車では行けないので、電車に乗ります。
 駅と電車は鬼門なのですが、致し方ありません。
 駅を出て、医大行きのバス停に向かうと、さすが水曜の午前中で混雑していました。
 その場に立っていると、70歳くらいのバーサンが近寄ってきました。
 「医大に行くにはどれに乗ればよいのでしょうか」
 「医大行き」は30分に1本しかなく、途中停車する便は不定期便になってます。
 そう説明したのですが、やはり不安そうな表情です。
 「私もそれに乗りますので、近くにいて下さい」
 そう言うと、周囲の4,5人のバーサンたちが集まりました。
 他の人もどうしてよいか分からなかった模様ですね。
 これじゃあ、まるで「バーサン通院ツアー」の添乗員になった気分です(笑)。
 
バスに乗ったら、こちらも満杯。
 当方のすぐ前に立っていた女性だけが若くて、他はバーサンとジーサンだけです。
 「オレも大体、そのジーサンの仲間だよな」
 少しがっかりします。
 
ここで何気なく、前の女性の背中が目に入ってしまいます。
 背中の大半が開いていたからで、真夏の服の着かたです。それもビーチか何かでの。
 しかし、女性はつるんとしたきれいな肌をしており、感心してしまいました。
 「しみひとつない。お見事」
 でも何だか肩幅が広いし、その割にはケツが小さいのです。
 「水泳部?それとも」
 この時、女性がこっちを振り向いたので、その正体が分かりました。
 「マカオ出身かよ」(地名ではありません。念のため。)
 午前中のこの時間にマカオかあ。
 男の背中に少しドキドキしたバカジジイです。
 
 今日はあんまり良いことはなさそう。
 そう思ったら、実際、狭心症が出てしまいました。
 症状はこれです。
●準備運動をしないで、急に走ったりすると、お腹が重くなる。
 これは誰でも経験したことがあると思いますが、その2倍くらいの重さが鳩尾で出る。
 あるいは
●いきなり重い酒(ウォッカとかウイスキーとか)をぐいっと飲んだ時に、鳩尾が重くなる。
 こういう時の感覚に非常に良く似ています。
 たぶん20年位前から出ていたのだと思いますが、自分では「胃の調子が悪い」とみなしていました。
 心臓病だと自覚したのは7、8年位前からで、今では胃通なのか、狭心症心不全なのかはすぐに分かります。

 数分で立っていられなくなったのですが、途中で降りると、まわりは全部田んぼや畑だし、救急車を呼んだあとで連れて行かれるのは、終点の医大です。
 「ならこのまま乗っとくか」
 玄関なら、もし倒れても、誰かが中に入れてくれるだろ。
 そこからの十分は、かなりキツかったです。
 「汗が滝のように出る」という表現がありますが、まさにそれです。
 パンツはおろか、シャツ、ズボンともぐっしょぐしょに。

 この「脂汗が出る」というのも心臓病の症状です。
 「トイレに行きたい」気分になるのもそうです(これは人にもよりますが)。お腹を壊しているのなら、実際にトイレに行くと出ますが、こういう時はそういう気分だけで何も出ません。

 「こういう時、妻がいてくれると良かったのに」
 妻であれば、「ちょっとすいません。夫の具合が悪いので」と座らせて貰います。
 ダンナ(当方)はこれを言えません。
 獣と同じで、「死ぬ1分前まで立っていよう」と思いますね。
 「そう言えば、昨日、看護師が『Kさんは一度も痛いと言わないし、痛そうな素振りも見せたことがない』と言ってたっけな」
 ま、痩せ我慢です。
 酒を浴びるほど飲んで来たので、麻酔もあまり効かないですし。
 それでも、家に帰ったあとで、SNSに「痛え」の「苦しい」の「医者や看護師のヤロー」だのと書けばすっとするわけなので、その場は知らん顔で過ごします。

 ああ、なるほど。前の病院で看護師さんたちがなついてくれたのはたぶんこれです。
 看護師が繰り返し注射をしくじったせいで、左も右も青タンだらけになっていたのですが、「痛くないですか?」と訊かれても、いつも「全然大丈夫だよ。気にすんな」と答えていました。
 
 などとぼんやりと考えて、気を散らすのですが、手すりに掴まっても立っていられなくなった時が終点でした。
 「もしかして、今日がXデイかもしれん」
 バスを降りながら、頭の中では「サン・トワ・マミー」を歌っています。
 「2人の恋は終わったのね・・・」というあれです。
 ひと節歌うと、ようやく「目の前が暗くなる」という詩が出ます。
 「そうそう。今のこれが『目の前が暗くなる』ってヤツだよ」
 視界の真中ら辺より外側は、まさに真っ暗です。

 玄関から受付までは30メートルあるのですが、バスの待合室で10分座り、会計窓口で5分座りました。
 「受付に行って、『今、狭心症です』で言えば、そこから担架だよな」
 でも、その前に、やはりトイレに行こう。
 運ばれる途中で脱糞したら悲しいよな。そのままくたばったら、もっと情けない。
 1階のトイレに行きますが、やはり出ません。
 ここで、また10分です。

 トイレを出たら、受付の前は患者が一杯なので、2階の眼科に行きます。
 そこでも同じだし、循環器科はその階になってます。
 2階に行き、とりあえずまたトイレに。
 ここで5分座っていると、次第に落ち着いてきました。
 「ありゃ。峠を越えそうだ」
 心臓病は症状が治まると、「さっきのは何だったの?」と言うくらいなんとも無くなります。検査をしても出ないことが多いので、重症化するまで見逃されます。
 眼科の受付に着いたときには、症状は大分治まっていました。
 「参ったな。カルテのある病院なら話が通じるけれど、ここは眼科だけだ」
 検査だけされて終わりです。
 
「なら、明日にでも普段通っているどちらかの病院に行こう」
 あとは普通に目の検査を受けました。
 レーザーで治療した後は、視力がかなり回復して、左右とも1.0になってます。
 回復と言うより、眼疾になる前は0.6くらいでしたので、前より良くなってますね。
 たぶん、こういうのを繰り返しているうちに、いずれ本番が来るのだろうと思います。
 家に帰り着いた時には、普段の状態に戻っていました。

 今は妻のことを大切に思い、実際にそうしているのですが、「生きていくのに欠かせない」からですね。
 妻が傍にいない時には、せめてニトロを持っている必要がありそうです。
 なお「鳩尾が痛い」ではなく「重い」です。
 「胸」ではなく「鳩尾」で、「痛い」「苦しい」ではなく「重い」ですので、そういう状態になったら、最初に疑うのは心臓です。憶えておくと、いずれ役立つ日が来ます。