日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話 第501夜 時間の渦(続き)

◎夢の話 第501夜 時間の渦(続き)
 18日の午前1時頃に観た夢です。

 目を開くと、目の前に白衣の男がいた。
 (ああ。この人はタカノ教授だったな。)
 そのタカノ教授が口を開く。
 「君らはE = mc2乗という方程式を知ってるだろ。ケンジ君は大学院生だから当たり前だね」
 横を向くと、俺の隣には中年の男が座っている。
(ありゃ。コイツはタイムマシンを奪いに来たヤツだ。いつ手を結んだんだろ。たぶん、夢の途中が抜けてるわけだな。)
 ま、取り合えず流れに乗ろう。
 「先生。特殊相対性理論なら誰でも知っています。でも、あれはただの仮説で、とどのつまり、エネルギーは質量に替わり得ると言っているのに過ぎません。そんなの今どき、安いSF小説でも使われなくなっていますよ」
 タカノ教授は俺のこの反応を予期していたらしい。顔に笑みを浮かべていた。
 「アインシュタインは物理三次元に四次元目の時間軸を加え、この仮説を作った。だが、この仮説には決定的な欠損がある」
 え?そういう話の流れなの?
 なら、ちと話が違ってくる。

 「いいかね。まず君らが列車に乗っているとしよう。線路の上を走る列車は一次元的な動き方をする。もしブラインドを下ろしていれば、君らは自分がどのように移動しているかは分からない。ブラインドを開き、位置関係を確かめるということは、二次元のスケールの中で座標を定めるということだ。すなわち、ひとつ上の次元を加えない限り、人は座標自体を認識できないのだよ」
 「そうなると、四次元目の時間軸を認識するためには・・・」
 「そう。五次元目の軸が必要ということだ」
 「しかし、数学的な理論構造の中での話ならともかく、現実世界の中では我々はまだ五次元目を発見出来ていませんが」
 「そこだ。五次元目は目に見えない。そこがヒントなんだよ」
 タカノ教授は立ち上がって、白板に近づいた。
 すぐさま教授はマジックを取り、方程式を書き始めた。
  iE = imc2乗   (うまく文字が出ません。)

 「いいかね。このiは見えない因子の略だ。五次元目は見えないわけだからね。そこでひとまずその言葉を使いFactor invisibleの頭文字iを取って、イオタ因子と呼ぼう。イオタはiのギリシャ語読みで、こっちの方がそれらしいだろ」
 教授の考えていることはすぐに分かった。
 イオタ因子は「見えない次元」だから、存在が打ち消されている。
 だから、方程式の上では関わっているが、現象としては確認しにくいものと見なすわけだ。
 両側に同じイオタ因子が関わっているのだから、存在していないのに等しい。

 「だが、イオタ因子を消すことは出来ない。それは何故か」
 俺はこれもすぐにピンと来た
 「次元軸が不確実なものだからですね。四次元時間軸までは1、2、3と数えられ、間隔は等しい。ところがイオタは1から2、2から3の間隔が異なる。不確実な軸だから見えないのにも関わらず消去出来ないというわけです」
 時間移動を解く鍵はここにあった。
 過去や未来に移動するということは、エネルギーや質量の状態を変えずに、光速度に変化を加える必要がある。
 元々のE = mc2 の構造では不可能だが、イオタ因子を加えることでそれが可能になる。
 E、Mを変えず、光速度に影響を与える1/iを与えればよいことになる。     
 「この1/iこそが、非(ナル)イオタ因子だ。これがあれば時間の流れを変えられる」
 ここで、俺の隣の男が口を開いた。
 「おいおい。ちょっと待ってくれ。俺にはサッパリ分からない。素人にも分かるように説明してくれよ」
 「光の速度に影響を与えるものを探し、その影響度を測れば、時間移動が可能になる道が開けるということだ」
 理屈は簡単だ。しかし、応用面では大きな問題がある。
 「でも、それは具体的にはどんなものなのでしょう。我々が知覚していないものですよね」
 タカノ教授が頷く。
 「答は宇宙線の中にあった。私はオメガ星団の光の変異を観察することで、その宇宙線を発見した。そして、それがレーザー光の到達時間に干渉することを実証したのだ」
 「ここにあるのがその装置ということですね。案外小さくて軽いものなのですね」
 「いや。それどころか本体はこのくらいだよ」
 教授は装置を開けて、丸い玉を取り出した。それは直径わずか20センチほどの小さな玉だった。
 「この物質から放射されるナル・イオタ線を束ねるだけで、周囲の十数メートル四方の物質が時間を移動出来る。これは川の中に生じる小さな渦のようなものだから、流れそのものには影響を与えない。自分たちだけ移動出来るのだよ」
 なるほど。時間だけを変えようとすると、この世にあらゆる物質に対し働き掛けねばならない。それには宇宙を新しく作り直すくらいのエネルギーが必要だ。
 しかし、小さな渦を作り、その中の者だけ移動するなら、エネルギーもさほど必要とされないことになる。
 「そうすると、案外小さなエネルギーでも可能になる。イオタ因子を打ち消すには、ナル・イオタ因子を照射すれば良いのだが、それは元のイオタ因子よりかなり小さい量て済む」
 ここで男が首を捻る。
 「そりゃ一体どういうことだよ」
 「イオタ1に対して、ナル・イオタは同じく1が必要だが、イオタ2に対しては1/2で0.5となる。必要な量はどんどん小さくなるんだよ。エンジンを動かす時と同じで、始動するには力が要るが、回転している状態からなら小さい力で済む。それに似ている」
イオタは1、2、3と等間隔の軸だが、それに対応するナル・イオタ軸は1、0.5、0.33の不等間隔の軸となる。これは当初の設定に合致している。

 ここで中断(長いので)。
 それから3人は、タカノ教授の装置を利用して、時間移動を試みることになります。
 ようやく話の続きが下りて来てくれました。
 これで話がひとつ書けるのですが、かなり固めのSFのジャンルになりそうです。
 まあ、この手のは気楽に書けるので、時間が空いた時に仕上げて、専門誌に送ろうと思います。