日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第507夜 お盆

夢の話 第507夜 お盆
14日の朝6時ごろに観た夢です。

暑さが和らぎ、過ごしやすい日々が続く。
オレは早起きして、庭の野菜に水をやることにした。
水道の栓を捻り、シャアシャアと放水していると、背後に人の気配がする。
後ろを振り返ると、門扉の前に男が立っていた。
「あ。叔父ちゃん」
父は3人兄弟で、弟が2人いた。
そこに居たのは下の叔父の方だ。親族からは通称で「床屋の叔父ちゃん」と呼ばれている。
この叔父の仕事は馬喰だが、上の叔父も馬喰なので、区別するために、叔母の仕事の方で呼んでいたのだ。
「ずいぶん久し振りですね。もう十年くらいになりますか」
叔父はオレと同じ心臓の病気で死んだ。
2度目のバイパス手術の後、叔父は「もの凄く調子が良い」と漏らしていたが、退院後ひと月も経たぬうちに桃畑の見回りに行った。そうして、そこで死んだのだった。

「うん。ヤマも来てるぞ」
「ヤマ」とは上の叔父のことだ。こっちの叔父が死んだのはもう25年以上前のことだ。
床屋の叔父の背後から、ヤマの叔父が顔を出した。
「おう。良い所に住んでるな」
ヤマの叔父は従前の通り、赤黒く日焼けしていた。
「よくここが分かりましたね」
二人が頷く。
「まあな。どうにかなるもんだよ」
でも、二人揃って現れるとは、一体どんな用事なんだろう。
「中に入りますか。散らかってますけど」
子どもの居る家にはありがちだが、当家の家の中も雑然としており、とても客を招き入れられる状態ではない。

「いや。俺らはおめを迎えに来たんだよ。そろそろ良いかと思ってな。ちょっと来てみた」
やっぱり。
死んだ叔父二人が揃って現れるには、それ相応の理由がある。
しかし、床屋の叔父が「来てみた」と言ったのをオレは聞き逃さなかった。
「いや。まだ駄目ですよ。荷造りも住んでいないし。あれこれやることが残ってます」
娘たちは就職したが、息子はこれから大学生。何とかこいつが卒業するまでは、どんな状態でも頑張らなくてはならないのだ。
「まあ、それはそうだが。でも、皆そうだよ。そんなもんだ。この世に未練を残すことなくこっちに来られる者はほとんど居ない。俺らだってそうだった」
冗談じゃない。
「大体、いきなり来て、連れて行くはないでしょ。少なくとも3ヶ月くらい前に『行く』と言ってくれなきゃあ。今日はもう帰ってください」
叔父二人は同時に済まなそうな顔をした。
「それはそうだけんどな」
それでも、叔父二人は庭に入って来ようとする。

「ああ、そんな用事なら中に入ったら駄目ですよ」
仕方ない。オレはお祓いの真言を唱えることにした。
「東海の神、名は阿明 西海の神、名は祝良 南海の神、名は巨乗 北海の神、名は禺強四海の大神、百鬼を避け凶災を蕩(はら)う。急急如律令
念には念を入れて、水をぶっ掛けることにした。
ホースの先を二人に向けて、シャアッと放水を始める。
叔父二人は頭から水浸しになった。
「分かった。分かった。それなら今日は帰ることにする」
二人が背中を向け、道の方に歩き出した。

ああ良かった。何とかなるもんだ。
叔父たちの気が変わらぬうちに中に入って鍵をかけよう。
オレは玄関の扉を開く。

ここで覚醒。

「お盆には亡くなった人の夢を観る」と言いますが、実際、叔父たちの夢を観ました。
取りとめの無い内容です。
まあ、叔父たちには少々乱暴な扱いをしましたが、何せ「迎えに来た」と言われては致し方ありません。

この叔父たちには、よくトラックに乗せられて、べご市を見に行ったりしたものです。
雌牛に種付けをする際には、農家のオヤジが牛の肛門に腕を突っ込んで、糞を掻き出した上で、子宮を押さえつけて受胎させます。
一度、下の叔父に「お前もやってみるか」と言われたことがありますが、さすがに肩口まで腕を差し入れねばならず、「出来ない」と断りました。
臭いし、汚いし、生き物の腹の中に腕を入れる行為なので、よほど慣れていないとしくじりそう。
でも、今考えると、「一回は経験しておけば良かったかな」と思います。
牛飼農家なら当たり前のことかもしれませんが、農家以外でそれを経験しているのは、「数十万人にひとり」の割合より少ないです。
「誰もやったことがない」実体験は話のタネとしては申し分ありません。