◎夢の話 第564夜 鉄火場で
20日の午前1時に観た夢です。
「じゃあ、コンドーちゃん。よろしく頼む」
そう言うと、男が席を立つ。
目の前には、四角い卓があり、各面に一人ずつ人が座っていた。
(ああ。これは麻雀だな。オレはこの人の代打ちに入ろうとしているわけだ。)
席を立った男は会社の社長で、急な用事が出来たから、小一時間ほど中座すると言う。
その間、場を繋ぐために、オレに代打ちを頼みたいと言うのだ。
オレは25歳の若造だから、身銭でこんな高額レートのバクチは打てない。
下の階で、安いレートの麻雀を打っていたのだが、上から呼ばれて「ピンチ」に入ることになったのだ。
卓につくと、席がグラグラ揺れた。
「ありゃ。ここはマンションの上の階だと思っていたが・・・」
どうやら列車の中だ。
1車両ひと部屋を借り切って、バクチを打っているらしい。
「なるほど。これなら賭博で捕まる可能性は低い」
配牌が始まったが、配られたのは牌ではなくカードだった。
列車の中で、卓ごと揺れるから、こうしているわけだ。
カードを開くと、突然、オレの対面のオヤジが笑い出した。
「やったやった」
オヤジは自分のカードを開き、皆の前にさらした。
「ようやくオレにもツキが来た。配牌でテンパってらよ。ダブリーでも掛けっかな。可哀想だからプンリにしてやる。振り込まれると困るしな」
手配は、万子の多面待ちだった。アガリは5枚のうちどれでも良い。
赤牌が6枚ある上に、表ドラが2枚とも乗っている。これに裏ドラがあれば、確かにツモったほうが美味しい。
「お前ら、金を持って来てるだろうな。見えてるだけで十万近くある」
オヤジが調子に乗って「吹き」始める。
(え。これで十万なの?案外安いレートで打ってるんだな。)
すると、脇の男がボヤいた。
「おいおい。勘弁してくれよ。十万ドルなんて持って来てねえよ」
げ。円じゃなくドルだったのか。
(不味いよな。いくらら代打ちでも、座ってすぐにマイナス十万ドルをこしらえたとなると。)
対面のオヤジが延々と吹いているので、オレは自分の手配に目をやった。
すると、オレも配牌でテンパっていた。
待ちは、五筒と八索のバッタだ。
(ありゃりゃ。八索なら・・・。)
今まさに、対面のオヤジが「ダブリー」と言って切るはずの牌だ。
これって、地和だよな。あるいは、対面が起家でなければ人和だ。
ここで薄らぼんやりと頭が働き始める。
(よく気をつけねば。)
まずは、「地和ならともかく、人和という手で上がれるかどうか」だ。
ここでオレは人の気配を感じ、後ろを振り返った。
そこにはメンバーが立っていて、オレの手配を見ていた。
そいつは、オレと視線が合うと、小さく頷いた。
(こりゃ大丈夫だ。アガれるらしい。そうなると、残るは相手関係だな。)
こういう場になると、バクチはもはやゲームじゃない。
うかつに上がったがために、家に帰れなくなることもある。
相手が性質の悪い不良なら、外に出た時に襲われることもあるわけだ。
オレはここで、対面の男のことを観察し始めた
(◎ボーなら滅多なことはないだろうが、ただの不良なら面倒だ。)
しかし、よく考えると、「ただの不良」なら、こんなレートのバクチを打つ金はない。
「ならOKじゃん。上がっても大丈夫。殺されない」
長く吹いていたオヤジが、ようやく八索に手を掛けた。
これから、牌カードを河に置いて「ダブリー」と言うわけだ。
オレはカードを揃えて、そいつで上がる支度をする。
ここで覚醒。
夢から死神や悪霊が消え、「不良」が出て来ました。
ようやく三途の川付近から、人間の棲む世界に戻って来たようです。