◎夢の話 第603夜 予言
5日の午前5時に観た夢です。
朝の4時に、友人のKから電話が掛かってきた。
「何だよ。この時間に」
「どうせ起きてるんだから、いいじゃんか。面白いことが分かったから電話したんだよ」
「何?」
「お前。『予言集』を憶えているか」
「ノストラダムス?」
「そう」
「日本じゃ、いや世界全体でも、今どきノストラダムスのことを本気にするヤツはいないよ。もう2千年を越えたわけだし」
「そもそも解釈が違ってたんだよ。いいか・・・」
「話が長くなるなら、電話じゃなく直接話せ。明日にでも・・・」
「今、お前んちの下に来てる」
仕方ない。俺はKを家に入れ、話を聞くことにした。
Kの話は長いので、要点を記す。
まずは、『予言集』第10巻72番の詩からで、これは4行からなる。
「1999年7か月、空から恐怖の大王が来るだろう、アンゴルモアの大王を蘇らせ、マルスの前後に首尾よく支配するために」
このうち、ポイントとなるのは、「1999年7か月」「恐怖の大王」「アンゴルモアの大王」「マルス」の解釈になる。
Kはそれぞれについて、こう説明した。
「ノストラダムスの4行詩に書いているのは、あくまで象徴だ。昨今の偽預言者みたいに、具体的な出来事を指して言うのではない」
ま、毎年毎年、「日本に地震が来る」「どこかで戦争が起きる」などとと言っていれば、そのうち当たることもある。予言者がよく使う手だが、その手のものではない。
「直接的に物事を指し示すケースはほとんどなく、アナグラムや暗号で書いている。ノストラダムスはフランス人だが、ここにはフランス語やラテン語が入り混じっている」
「アナグラムって?」
「語順を変えたりしていて、並び替えると元のものになるような言い換えだよ。ここでは、アンゴルモアの大王がそれだ」
「アンゴルモア」は「Angolmois」で、この語順を替えると「Mongoliam」(ラテン語)に読み替えられる。フランス語末尾のsは読まないから無視してよい。すなわちこれは「モンゴル」で、これは蒙古が欧州に攻め入って以来、アジアの脅威の象徴になっている。
「次は『恐怖の大王』だ。空から降ってくる恐怖と言えば、隕石、人工衛星、ミサイル、宇宙人のどれかだ」
宇宙人は存在そのものが不確かで、ノストラダムスが知りえない代物だから、これを除外すると、残りは3つ。わざわざ「恐怖」と打っているところは、人為的な匂いがプンプンする。まあ、ミサイルか人工衛星で、意思によるものは前者だ。
わざわざ、「ノストラダムスの守護霊と話をした」と持ち出して、ミサイル説を唱えた宗教家がいるが、別段、霊と話さなくとも、空から来る恐怖の最たるものなら誰でもミサイルに行き着く。
「おい。俺はその宗教家が誰かを知っている。その言い方だと、お前はそいつのことが嫌いなんだな」
「まあそうだ。俺も霊を頻繁に見るが、そいつは人の作ったイメージを語っているし、人が信じたいものを言う。すなわち、相手に受けそうな話をしているということ。詐欺師だな。何せ、『守護霊』なんて個霊は存在しないもの。それはともかく・・・」
次は「マルス」だ。
「マルス」はラテン語では「Martis」で、火星のことだ。
「火星。ってことは」
簡単だよな。「火星何号」だかを盛んに飛ばしているヤツがいるもの。
ちなみに、「ムスダン」の意味が「火星」で、今の火星3号だか12号だかは、ムスダン型ってことだ。
「それじゃあ、ムスダンが火星なら、マルスはこいつのことか」
「そうだ。簡単だろ」
火星(ムスダン)が放たれた前後に
ミサイルが撃たれ、
極東に大王が蘇る。
「今の状況を考えると、北がムスダン型ミサイルを打ち、その報復に、たぶん核ミサイルが撃たれる。その後、この地域を大王、これはたぶん中国だな。朝鮮一帯を中国が支配するようになる。ま、朝鮮省が出来るということだ」
既に「火星」は発射されているから、米国が「恐怖の大王」を打ち込む。
報復攻撃を受けるリスクを避けるためには、軍事拠点の近くに核ミサイルを撃てば、報復どころではなくなる。
しかし、疑問は残る。
「じゃあ、1999年ってのは?ノストラダムスをウソだと言う者は、みなここを突く」
すると、Kは笑って答えた。
「おい。1999年と書けば、皆が西暦1999年のことだと考える。でも、ノストラダムスが西暦年で予言をしたケースは他に皆無なんだよ。よく見ろよ。1999年7か月と書いてある。これは暦年じゃなくて、期間を指している。何かから数えて1999年と7ヶ月後だと言っている」
「その何かってのは何だよ。具体的に言ってくれ」
ここでKが頭を傾げる。
「実は、まだそこがはっきりとは解けていない。期間ではなく、何かの暗号かも知れん。これもアナグラムだと、ちとやっかいだな」
「足したり引いたり、掛けたりするかもしれんわけか。あるいは、やはり語順を入れ替えて・・・」
「そうだ」
ここで俺はKに向き直った。
「もうそこで止めとけ。予言者ビジネスが成り立っているのは、皆が当てはまりそうな事実を探してくれるからだ。客が当てはまる出来事を探すから、予言者の言うことは常に当たるわけだな。しかし、こいつは年号以外、うまく当てはまる。そいつが当たった日には、もしかすると半島はおろか、アジア全域がお陀仏だ。あるいは世界が終わる」
Kはむきになって言い返した。
「なるべく早めに危機を予知出来れば、防げるかも知れんじゃないか」
そのKの言葉を遮るように、俺は断言した。
「いや。人間の本質は変わらない。新しい玩具を玩具箱の奥に隠しても、子供は必ずそれを見つけ、実際にそれで遊ぼうとする。そうなると、核ミサイルを作ったのだから、必ずそれを使うのが人間ってもんだよ。それなら、必ず破滅の日は来る。どうせそうなるなら、その前の日まで、それを知らないほうが、幸せに生きられる。焼け死ぬ直前までの話だけどね。だから放って置け。人類なんて、どうせ滅びる」
今度はKも言い返して来なかった。
ここで覚醒。