◎風呂敷の思い出話
前に書いたかもしれませんが、中央官庁では書類を運ぶのに、よく風呂敷を使います。
報告書をかなりの冊数包むことが出来ますし、書類をまとめるのにも便利です。
官庁の仕事を受注していた頃は、やはり同じように風呂敷を使っていました。
いつも使っていると、次第に凝るようになり、「なるべく手触りのよいもの」を持つようになります。
となると、本染で落ち着いた絵柄のものですねえ。
その手の品になると、無難な物でも1万円はします。高級な品だと、2倍3倍のもののあると思いますが、さすがに普段使う分には1万円前後でした。
紺色で絵柄は自分ちの家紋だったと思います。ちなみに家の構えに梅紋。
研究所には女性の事務スタッフがいたのですが、うち1人は20台半ばの小ぎれいな女性でした。若い頃の森高千里さんに似ています。
その女性が私の風呂敷を見て、気に入ったのか、おねだりしてきました。
「これいいですねえ。いただけませんか」
小首を傾げて、微笑みます。
女性が男をたらしこむ時の、あの笑顔です。分かりますね。
「ダメだよ。使ってるもの」
すると、女性は引き下がらず、「お願いです。私に下さい」と、またニコっと笑います。
「だって、これが無くなれば、また買わなくちゃならないもの」
女性は「それなら買えばいいじゃない」って雰囲気です。
おいおい。ただの会社の同僚に、愛用のアイテムをくれてやるほどスケベオヤジじゃねえぞ。
一人にやったら別のも「くれ」と言い始める。その都度1万円かかるんじゃやってられない。
問答を3度繰り返し、最後には「結論はダメってこと。これで終わり」と宣言しました。
ま、プリント柄なら、手拭で数百円、風呂敷は数千円程度でしょうが、本染めで愛着を持っている品をパッとくれてやるほど、人は良くありません。
女性の方は、1、2千円の品のつもりでねだったのだろうと思いますので、「コイツ。随分ケチだな」と思ったかもしれません。
でも、家紋入りだし、鼻の下を伸ばしてくれてやる男のほうが少ないと思いますね。
それに、あれこれ物をねだるのは、多少は相手の男と「出来てから」ではないか。
これ以降は、とりわけ女性の「甘え顔」が嫌いになり、メディアにガールズグループが出ると、顔をしかめてスイッチを切ってしまいます。虫唾が走る。