日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第645夜 夜の訪問者

夢の話 第645夜 夜の訪問者
 5日の午前2時に観た夢です。

 2階のベランダに出て煙草を吸う。
 煙草を吸うのは9年ぶりだ。煙草を吸うのを止めて、残りを整理箱に放り込んでいたのだが、掃除中にそれがたまたま出て来た。 
 そこで気分転換のために吸ってみたのだ。
 まあ、今なら吸おうと思っても、1本吸えば気分が悪くなる。それなら健康被害はさほど無い。

 空には満月が上がっていた。
 今は夜中の2時だが、この時間に外の空気を味わえるなんて、何年ぶりだろう。
 俺は長い間、病院と家を行ったり来たりだったし、秋から冬にかけて、俺の家には夜中に玄関の扉をノックするヤツがいた。この世のものならぬ声が聞こえたり、気配も感じるから、たぶん、あの世の住人がやっている。
 これまで俺はそう思っていた。
 ところが、今年はそういうのが一切無くなった。
 まったく感じなくなってしまったのだ。
 このため、俺は何のてらいもなく、何時でも何処にでも行けるようになった。
 こうやって、こんな真夜中にベランダに出て、月を眺めたりも出来る。

 空を眺めていると、唐突に下の方に灯りが点いた。
 俺は玄関前に動作反応ライトを2つ置いていたが、そいつが光ったのだ。
 「おい。まさか」
 思わず、手すりから身を乗り出して、玄関の前を覗き込んだ。
 すると、俺の家の前に、ひとりの女が立っていた。
 黒いワンピースを着た、長い髪の女だ。
 女は玄関の扉の前でじっと佇んでいる。

 「コツ、コツ」
 階段の下の方から、ノックの音が届いた。
 この女が扉を叩いているのだ。
 「やはりあの音は気のせいなんかじゃなかったわけだ。空耳でもない。ああやって、実際に女が叩いている」
 現実に、ベランダのすぐ下に、その音の主が立っている。

 この時、俺はひとつのことに気が付いた。
 女は玄関のライトを浴びていたが、その女の影が後ろに伸びていたのだ。
「おい。影が出来るとなると、こいつは実体だ。幽霊とか死神なんかじゃないな。生身の人間に違いない」
 だが、ここで俺はもうひとつのことに気が付いた。
 「その生身の人間が、なぜこんな真夜中に見ず知らずの人間の家の玄関の扉を叩くのだろう」

 いやはや。何てことだ。それなら幽霊のほうがはるかにましだ。
 幽霊が出ても、多少気持ちが悪いだけで実害はほとんど無い。
 だが、腹の内の分からぬ人間に付きまとわれることほど、薄気味悪いものはない。
 ここで覚醒。