◎次第に友だちに
まだ20歳台の頃に、悪友のコウちゃんとタイに遊びに行ったことがあります。
私はタイの滞在歴が長いので、概ね何をするにも不自由は無いのですが、観光地に行くのには現地を知り尽くした者がいると楽しめます。
そこで、バンコクの現地旅行代理店に行き、タイ人のガイドを雇いました。この辺は人件費の相場も知っていますので、ボッタくられることもありません。
ガイドはチャイさんという若者で、同じ年頃でしたので、話しやすく、3人でホアヒンやパタヤビーチに行きました。
街のど真ん中でスーパーカブに乗って競争をしたりと、楽しい日々でしたね。
チャイさんはガイドなので、かなり遠い下町のほうに安価な宿を取りました。
深夜まで夜遊びをしているのに、朝早く遠くから迎えに来るのは面倒だろうと、チャイさんをホテルに泊めました。
チャイさんは「こういう高級ホテルに出入りはするが、泊まったことはないですね」と言っていました。
十日間が過ぎ、空港まで送って貰ったのですが、バーツの紙幣が当方、コウちゃんとも各々1万円くらいあったので、チャイさんに「どうも有り難うね」と渡したのです。
すると、チャイさんは顔を赤くして怒り、「こんなものを貰う言われは無い」と突き返して来ました。
一緒に過ごしているうちに、次第に「友だち」のような感覚になっていたのです。
当方はそのことに気づき、「気を悪くするな。日本に持ち帰っても使えないからだよ」と頭を下げました。
「それに、次に来た時のためにこれで予約しておくからさ」
その言葉の通り、翌年は当方の勤務先の人たちをタイに連れて行き、また、その次の年は一人で旅行をしましたが、その都度チャイさんに電話をして案内して貰いました。
滞在時間が限られている時には、やはり事情通がいると迅速に動けます。
残念ながら、その後チャイさんはチェンマイで別の仕事をするようになり、連絡が途絶えたのです。
そうでなければ、その後もチャイさん目当てに彼の国を訪れただろうと思います。
今朝不意にそのことを思い出しましたが、何となくチャイさんは亡くなったような気がします。
まあ、今はお互いそういう年齢に達しています。
若かりし頃が遠くに去って行きますが、まあ、思い出は消えません。