日刊早坂ノボル新聞

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◎夢の話 第689夜 再生

◎夢の話 第689夜 再生
 19日の午前2時に観た夢です。

 旧友の桜井が突然やって来た。
 こいつは考古学者で、全国各地の発掘調査をやっている。
 「近藤。ちょっとお前の頭脳を借りたい。ちょっとこれを見てくれ」
 桜井が俺の目の前に写真を出した。
 土の中から、人間の骨が顔を出している。

 「これは先月、俺が発掘した骨だ。概ね2千年くらい前の人骨だが、ちょっと面白い。と言うか、考えられない事態になっている」
 「考えられない事態とはどういう意味だよ」
 「遺伝子が現代人のものじゃないんだよ。未知の人類、いや生物のものらしい」
 「そんな馬鹿な。どう見ても人類だろうに」
 「おい。『人類』とは現代人に繋がる種のことだ。アフリカ人は100%ホモ・サピエンスで、ヨーロッパ人は99%がサピエンス、1%がクロマニヨン人の混血種。アジア人はクロマニヨン人の割合がもう少し高い。となると、人類とはホモ・サピエンスかクロマニヨン人までの範囲ということだ」
 桜井の説は少し違う。ホモ・サピエンスクロマニヨン人は『現代人』に繋がる人類ということで、ネアンデルタール人だって「絶滅した人類」と見なす方が普通だろう。

 ここで俺は桜井の意図を察した。
 「要するにお前はその人骨を再生したいのだな」
「そうだ。近藤が開発した有機体プリンタで、こいつを復元して欲しいんだ」
 俺の専門は生物学で、つい最近、この「有機体プリンタ」の開発に成功した。
 こいつは、生物のDNAを基に、アミノ酸からたんぱく質を合成して、元になった生物を復元するものだ。よって、DNAを解析することが出来れば、その生物が生きていた頃の姿を復元できる。
 理論的には、DNAを析出出来る生物は、総て再合成可能だから、それが採取できる範囲、すなわち数万年前程度の生物なら再現できる。
 これで、巨鳥ジャイアント・モアなど、多くの絶滅種を復活させることが可能になったのだ。

 「でも、人間の復元はやってはならないことになっている。実際にはそういう法律は無いが、クローン人間が禁止されているんだから、これも同じだろう」
 ここで、桜井は大きく首を横に振った。
 「いや。大丈夫。こいつの遺伝子は、ホモ・サピエンスでもクロマニヨン人でもないからな。強いて言えば、チンパンジーと扱いは同じだろう。チンパンジーでの実験は大丈夫なんだろ」
 「そらま、そうだが」
 「ならやってくれ。これは人類史に残る大発見だぞ」
 「桜井。お前は『チンパンジーと同じ』と言ったが、腹の内はそうではあるまい。お前は、この骨が地球人のものではないと考えているんだな」
 「ばれたか」
 人類に似た姿をしているが、人類とは違う。そんな種族の痕跡が世界各地に残っている。
 「長頭人」しかり、「巨人族」しかり。
 これらは、現代人との共通性が乏しく、遺伝子の繋がりも無い。
 となると、現代人とはまったく違う別の人類が存在していたか、あるいは地球外生物という話になる。
 「要するに、この骨は宇宙人のものかもしれんということだ。だからどうしても復元したいわけだ」
 そういうことなら、俺にも異存はない。
 亜人類にせよ宇宙人にせよ、そういうものが存在するなら、やはり一度目にして見たい。

 早速、俺はその人骨の一部を受け取り、DNAの解析を始めた。
 これに3ヶ月かかり、さらに組成に必要なアミノ酸等の素材を調達するのに4ヶ月を要した。
 所々に遺伝子の欠損があったから、これを配列の良く似た生物のそれで補った。
 具体的には「象」や「豹」で、これに似た遺伝子を持つということは、この生物がかなり長命で、かつ動きが敏捷だったことを意味するのかも知れん。
 これは、出来上がってみなければ分からない。
 何事も、本当のところは「やってみなければ分からない」のだ。

 実験は成功し、俺は桜井を呼び寄せた。
 最初に桜井が訪れた日から、ちょうど1年後のことだ。
 病室の扉を開くと、桜井が驚いて声を上げた。
 「おお。なんと言うことだ。まるっきり人間じゃないか」
 病室のベッドに座っていたのは、30歳位の男だった。
 有機体プリンタで合成してから、ほぼ2ヶ月を経過している。
 俺の装置では、まだ年齢調整が出来ないから、元の生物が死んだ頃の姿にしか再生できない。
 すなわち、この男は30歳くらいで死んだということだが、これはDNA解析の時点で分かっていた。

 「特に変わったところもないようだな。普通の人間だ。どこが違うんだろ」
 その点については、俺はある程度予測出来ている。
 「知能の発達速度がもの凄く速い。ある種の動物は生まれつきその種の習性を覚えていることがあるが、この亜人間は重要な記憶を親から受け継ぐようだ。その証拠に、彼は言葉が話せる」
 「え。組成は復元出来ても脳内の情報までは復元出来ない。知識は教え込むものだろうに」
 「いや。彼は生まれて20日後には言葉を話した。我々には分からない古代語だがね。言語中枢を含め、前頭葉がもの凄く発達しているから、すぐに我々の言葉も覚えるだろう。もう少しは話せるかもしれないぞ。ねえ、君。君はそろそろ話が出来るんじゃないか」
 俺が男に話し掛けると、男が答える。
 「まだ少しだけだね。もう少し、色んな人の話を聞かないと」
 横を見ると、桜井があんぐりと口を開けていた。

 病室を出ると、桜井は深い溜め息を吐いた。
 「俺が予想したものとはだいぶ違うな」
 「グレイ型の宇宙人が出てくれたほうが良かったのか」
 「ま、そう言えぬことも無い。見た目が歴然と違えば、説得力が増す」
 「確かに外見は人間だが、知能レベルはまるで違う。人間社会に混じったら、たちまち世界を支配するようになるかも知れんよ」
 「名前はもう付けたのか」
 「まだだよ」
 「じゃあ、『タイシ』はどうだ」
 「それって、聖徳太子のことか?」
 「そう。でなければ・・・」
 ここで桜井は壁に架かっている絵に視線を向けた。
 「イエスだろ。ジーザスだな」
 壁の絵は十字架に架けられたキリストの姿だった。

 「そう言えば、そっくりだな。髪と鬚を伸ばしたら瓜二つだ」
 「30過ぎで、2千年前に生きていたわけだから、本人かも知れんよ。発掘場所はどこだっけ」
 「シナイ半島。ははは。まさかそんな」
 桜井の顔はどことなく引きつっていた。
 「近藤が作ったのは人間じゃない。もしかすると神だったりしてな」
 全然笑えない。
 「桜井。キリストは平和と愛を説いたが、その結果、信仰の違いを理由とする争いが起きて、それは今も続いている。俺たちが創り出したのは、果たして福音なのか、災禍なのか。今は何とも言えんよ」
 俺たち二人はそれこそ「人類史に刻まれるような成果」を得たというのに、何故か沈鬱な気持ちに陥っている。
 ここで覚醒。

 物語にするには、何か足りません。そこはあくまで夢で、取りとめのない内容になっています。