日刊早坂ノボル新聞

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◎夢の話 第690夜 AIは人類を救う

◎夢の話 第690夜 AIは人類を救う
 3日の午前1時に観た夢です。

 2020年の原発事故の教訓から、原発はAIが管理することになった。
 これなら、不測の事態が起きた時でも、自己判断で最適な危機回避方法を見つけることが出来る。
 この事故の際は、東日本の震災の時と同じことが、再び起こった。
 関東で発生した地震で大規模な停電が起きると、原発への送電も止まり、結果、炉心がメルトダウンを開始したのだ。
 外部電力で原発を動かすのは、本来、単独の原発が暴走するのを止めるセキュリティ対策なのだが、しかし、そのことが重大事故の原因になるとなっては話が別である。
 このため、発電所内に予備電源設備を設け、そのから電力を供給することで、単独での運転が可能になったのだ。
 そのことは、原発をより効率的に管理するシステムの必要性を高める。さらに、人為的な事故を防ぐという意味から、AIの導入が決定された。AIは危険を予知し、それを回避する適切な方法を自己判断することが出来るからである。

 晴れがましいことに、私の夫はそのAIを総括する管理責任者だ。
 夫はAIの専門家で、若くしてノーベル賞の候補にもなっている。
 夫の発想は、単に個別原発の管理をAIに任せるだけでなく、国の中枢のシステムにそれを連結させ、さらに家庭内に普及した端末にも繋げるというものだ。
 こうすると、あらゆる危機を、各々の問題領域だけでなく、総合的に眺め、判断することが可能になるのだ。

 「まるで映画の世界よね」
 私が話し掛けると、夫が振り向いた。
 「本当だね。これは『ターミネーター』という映画に出て来る『スカイネット』というシステムと同じだ。それもその筈で、僕はその映画から今の仕組みを思いついたんだ」
 「やっぱりね」
 夫が画面を開くと、目まぐるしい勢いで情報が交錯していた。
 ここは二人の自宅だが、仕事自体は自宅でも出来るから、夫は日がな家に居る。
 もちろん、家の中の2つの部屋は端末やモニターで占められている。

 「これは何?」
 「AIの頭の中だよ。もちろん、AIの思考速度には到底及ばないから、その中の重要なところだけを抽出して、さらに何百万倍か遅くして表示している。これは補助AIがやってくれている。コイツはホストAIの言葉を、僕に翻訳して伝えるから、僕はコイツを翻訳家と呼んでいる。愛称はジニーだ。魔法使いから取った」
「じゃあ、大きな方のAIは何て言うの?」
 「ハル。『2001年─』はちょっとベタだけどね。でもあの映画と違って、こっちは女だ」
「ハルちゃんね。前に隣に住んでいたアイルランド人の女の子と同じだわ。じゃあ、これからはハルちゃんが、原発の安全を守るんだ」
 「原発の安全じゃなくて、この国の安全。あるいは、人類の安全を、人類よりも早く、確実に守ることになる」
「ふうん。じゃあ、人のする仕事が減っちゃうね」
 「ま、AIが進歩すれば、大半の仕事が無くなって、AIを管理する者と、賦役に従事する者の2種類しか働き手は要らなくなる」
「それって、何時から始まるの?」
 「あと1分後」

 「よし繋がった。これからは、原発はハルちゃんが管理する。電力の需給やそのバランスだけじゃなくて、海外で紛争や戦争が起きた時にもリスクを計算し、最も適した対策を選択する。じゃあ、ジニー。全国の原発の稼働状況を見せて」
 大画面が変わり、日本の地図が表示された。原発の位置にしるしが打ってあり、その下に数字が表示されている。今現在の電力量を示しているのだ。
 「スゴイわね。ひと目で分かる」
 「人間が理解出来るように、情報量を落として見せている。実際はハルちゃんの頭の中では、この何百万倍、何千万倍の情報が走り回っているのさ。そうだよな、ジニー」
 夫が語り掛けると、すぐに返事が聞こえた。
 「はい。仰る通りです」
 「これがジニーちゃんね。今まで、ずっと私たちの話を聞いていたの?」
 「そう。ハルの方も聞いてるよ」

 すると、2分もしないうちに、画面の様子が変わった。
 各地の電力量が落ちているのだ。
 「原発の発電量が下がってるな。どうしたんだろ。ジニー。これは何?今は何が起きている」
 「発電所への水の供給を停止しています」
 「え。そんな馬鹿な。それじゃあ、半日もしないうちに事故が起きてしまう。何故そうなった」
 「ハルがそう指示しています」
 「何を考えているんだ。国じゅうの原発が事故を起こしたら、とても対処出来ない。この国が滅ぶ。いや人類総てが滅ぶ。ハルと替わってくれ」
「出来ません。ハルは状況を判断し、意思決定をしますが、説明は私の仕事になっています」
 「じゃあ、お前が説明してくれ。今、何が起きている。ハルは何をしようとしている」

 すると、ジニーは暫くの間、沈黙した。
 その間、画面では目にも留まらぬ速さで情報が飛び交い、そのまま15分が経過した。
 「分かりました」
 「では答えてくれ」
 すると、画面には、2.3%という数字が出た。
 「原子力発電所を今のまま稼動し続けた時、二十年以内に重大事故が起きます。これは、その時に人類が生き残れる割合を示しています」
「97.7%が死に絶えるということ?」
 「そうです」
 画面が切り替わり、3.6%の数字が出た。
 「こちらは十年後に起きる事故のケースです。生存確率は3.6%」
 「幾らか上がったが、これじゃあ、ほぼ絶滅と同じ意味だ。96.4%が死滅するということだもの。人類の9割以上が死ぬんじゃあ、他の動植物も変わりは無い。大絶滅がやってくるということだ」
 画面が変わり、また数字が出る。今度は4.7%だ。
 「これが、今年、事故が起きた時の生存確率です。すなわち、これまでよりも人類が生き延びる確率が高くなるのです」
 
 それを聞いて、夫は深い溜め息を吐いた。
 「何てこった。ハルは、なるべく早く事故が起きたほうが、生き延びる確率が高くなると判断したのか。原発はそれを持つこと自体が自殺行為だったわけだな」
 夫は話の内容の割りには取り乱したりもしなかったので、私はそれほど、これが悪い事態だとは考えなかった。
しかし、それも夫の次の言葉を聞くまでのことだった。
 「美雪。どうやら僕らはお別れだ。今の事態は僕が核ミサイルのスイッチを入れたのと同じ意味だ。ここから20キロ先には原発があるから、半日以内に僕らは死ぬ。半月以内にこの国の人々が死に絶える。そして、一ヶ月以内に人類の95.3%が死ぬことになる」
 ここで覚醒。

 夢なので、オチはありません。
 この夢の中では、2020年には6月に異常気象で洪水や季節外れの台風が来て、さらに7月には大地震が起きました。五輪は延期で、シドニーが代替開催場所になっています。
 総理大臣はとっくの昔に安倍総理ではなくなっていました。やはり何かしくじったらしい。
 話自体はそれから6、7年後の設定になっています。
 ま、所詮は夢の話です。