テレビ番組に、コインの専門家なる人が出演し、穴ズレ50円貨について解説していた。
「この品が本物だと分かったのは、穴の断面の瑕が本物の機械で無いと出来ないものだったからです。要するに造幣局で作られたものの証明になります」
何と愚かな話だろう。
造幣局を実際に訪れて、貨幣を打刻する手順を実見すれば一目瞭然だが、穴が大きくずれる要素は「微塵も無い」。
もしそれが出来るとすれば、意図的にそれを作った場合だけ。
造幣局を訪れた時に、知人が職員に訊ねた。
「もし、担当職員がエラー貨を持ち出せば、20万とかで売れるんですよ」
すると職員はそれを一笑に付した。
「それは犯罪です。たった数十万のために退職金をふいにする者はいませんよ」
実際、その通りだろう。
普通の状態であれば、エラー貨を外で売ろうとは考えない。もし、借金で苦しんでいたりしないならばの話だ。
事実はこう。
造幣局の貨幣製造機は、穴が大きくずれるようには出来ていない。
また、ほんの少しずれただけでも、チェックにかかり、回収される。
もしそれが市中にあるとすると、そのことの意味は、「造幣局の誰かが意図的に作成し、それを持ち出した」というケースだけだ。
となると、これはエラ-貨幣でもなんでもなく、犯罪の証拠品。
こういうのを珍しがって高値で評価するのは、犯罪を助長するようなものだ。
好事家は本当に愚かな生き物だ。
頭、もしくは人格のほうに穴が空いている。