日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話 第703夜 実家で

◎夢の話 第703夜 実家で
 7日の午後3時の午睡時に観た短い夢です。

 我に返ると、俺は実家の二階にいた。
 かつて35年くらい前まで、俺が過ごした自分の部屋だ。
 「今は倉庫で、ここには誰もいないはずだが・・・」
 しかし、下の方では、人が歩く音が聞こえる。
 前の店舗では、盛んに客が出入りしているらしい。

 「何やってんだろ。いつも通りじゃないか」
 父は昔通り、厨房で魚を捌いているのだろう。
 年末が近いから、叔父たちも手伝いに来ているのかも知れん。

 俺は立ち上がって、部屋を出て、階段を駆け足で下りた。
 階段のすぐ下には、応接間と居間がある。
 とりあえず、応接間のドアを開けた。
 すると、長椅子をベッドに直して、母が横になっていた。
 「あ、何だ。お袋はここにいたのか。姿が見えないから、俺はまたお袋が死んだかと思ったよ」
 俺のブラックジョークに母が苦笑いを漏らす。
 「たまに帰って来たと思ったら、何を言ってるんだか」
 「調子が悪いと聞いていたから帰って来たんだよ。大丈夫だった?」
 「うん。大丈夫」
 母は気丈な人で、どんな時も口癖のように「大丈夫」と言った。
 その言葉で、俺は逆に「かなり具合が悪かったのだな」と悟った。

 母の横には、男児が一緒に寝ていた。
 3歳から4歳くらいの子だ。
 「その子は誰?」
 すると、母は呆れたように言った。
 「お前は自分の息子が分からないのかい」
 え。俺の息子だったか。
 その子の顔を見ると、確かに俺の女房に似ている。
 「ははは。俺はまた、俺の息子はもう20歳を過ぎているのかと思っていた」
 今度は母が少しきつめに答えた。
 「夢を見てたら駄目だよ」

 そっかあ。すべてが夢だったのか。
 それならいいや。
 ドアを閉め、後ろを振り返る。
 廊下の右には居間があるのだが、そこには明かりが点いていなかった。
 廊下の奥には、そこにも扉があり、店舗の側に繋がっている。
 だが、そこにも灯りが見えず、真っ暗だった。

 「あれ。おかしいな。あんなに人の声がしていたのに」
 住居部分も店舗の方も、一様にしんとしている。
 もはや何ひとつ音が聞こえなくなっていた。
 もう一度、振り返ると、玄関は埃だらけで、まるで長く人の住まない家のような佇まいだ。
 「応接間には確かにお袋がいたよな」
 心の中を不安が過ぎる。
 何だか、母は「もう死んでいる」ような気がした。
 ここで覚醒。

 夢の中では、今春、母が死んだことがほとんど欠落していました。
 程なく郷里に向かい、かつての実家にも行きます。
 応接間に座り、缶コーヒーを飲んだ時に、母を感じられれば嬉しいです。