◎夢の話 第715夜 田舎の食堂で
2月4日の午前4時に観た夢です。
僕は食堂で働いている。と言っても、まだ子どもだから、お運びを手伝う程度だ。
僕の年齢は十歳くらいで、髪は赤毛だ。
僕がこの食堂で暮らすことになった経緯は、よく憶えていない。
僕がごく小さい時のことだからで、父母が倒れて死んでいたところに、2歳の僕が残されていたらしい。そこで僕は孤児院に送られるところだったが、この食堂の女将によって拾われたのだ。
「食べ物を与えているのだから働け」と、6歳頃から店の手伝いをさせられるようになり、こうして働いている。
最近、昼ご飯を食べに、40歳台の女性がやって来るようになった。
眼鏡を掛けた、小太りの女性だ。
いつも難しい顔で、ノートを読んでいる。
店の親爺と女将が噂するところでは、「ソルボンヌ大学の先生」らしい。
何かを調べるために、ここに来たのだが、それが一向に捗らない。それで、いつも難しい表情をしているのだ。
注文するのは、いつも同じもので、オニオンのスープにパン。それと軽いソーセージ料理だけだ。
この日はやはり同じくらいの年恰好の男の人とテーブルについていた。
「どうしても、言い方が分からないのよ。音の出し方が分かれば、起源をたどることが出来るのに」
女性の嘆きに男が答える。
「もうかなり昔に無くなってしまった言葉だからね。この街道を通じ、どこかに
移動しただろうから、丹念に探していく他は無いね」
男は女性の仕事仲間か何かなんだな。
「ひとつでも発声法が分かれば、親戚の言語を推定できるのに。この△□※×とか」
女先生がそう言ったのは、僕がテーブルに食器を運んで行った時だったので、その言葉がよく聞こえた。
でも、僕の記憶と言い方が違っていた。
女先生がその言葉を言った直後に、僕は何気なく、その言葉を口にしていた。
「△◆※+。『いつか』という意味だよ」
すると、女先生がぎょっとした表情で僕のことを見た。
「あなた。なんでこの言葉を知ってるの?」
すると、店のカウンターの裏から、親爺が声を掛けて来た。
この町に大学の先生が来るのは珍しいから、テーブルの方を注意して見ていたらしい。
「すいません。そいつが何か粗相をしましたか?」
すると女先生は、親爺にこう尋ねた。
「この子はお宅のお子さんなの?」
「家で預かっているのです。親は行き倒れでした」
親爺はてっきり僕が何かしくじったと思ったらしい。
女先生が僕に向き直る。
「△□※×は△◆※+と言うのね。ね、そうよね」
男性のほうに目を向け、同意を促している。
「ああ。それだと分かりよい」
二人が揃ってにっこりと笑った。
この時、僕は母のことを思い出していた。
母は僕を胸に抱きながら、こう言ったのだ。
「ああ。いつか、いつの日か、お前と一緒に※※※※の祭りを見ようね」
だが、その言葉を果たすことなく母は死んだ。
僕は母の顔を憶えていないが、その時の声だけを記憶に留めていたのだった。
ここで覚醒。
会話は外国語なので、大半を理解できませんでした。
「」書きは、「たぶん、こんな内容だったろう」という推測です。
「僕」はその2年後くらいに、スペイン風邪がもとで死んだような気がします。