日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎海の子・山の子・町場の子

◎海の子・山の子・町場の子
 私と近い年恰好の看護師さんが、長崎出身だったことを思い出して、訊いてみました。
「長崎では、家の庭全部にミカンの木があるの?」
 すると、やはり「そんなことはない」と答えます。
 「でも、静岡に行くと、庭のある家には必ずミカンが植えてある。当たり前過ぎるのか、道の駅にミカンはあまり出ていないね。道に出れば、50メートルごとに売ってるから。埼玉西部じゃ柿だ。秋になると、処置に困り、近所に配ろうとするが、そこにも柿の木があるから貰って貰えない」
 「うちは海まで1分でしたから」
 そいつはいいやね。
 「魚はいつも近所から貰っていたから、買ったことがありません。こっちに来た当初はスーパーの魚が生臭くて困りました」
 そりゃそうでしょ。

 でも、ふと思い出しました。
 家人の田舎も海の近くですが、まったく泳げません。そもそも海に入る習慣が無いし、入ろうとも思わない。
 「海辺で育った子って、ほとんど泳がないよね」
 すると看護師は「海で泳いだことは一度もありませんね。海では浮かんでいればいいもの」。
 感覚が少し違いますね。内陸の子なら、海に入ること自体を「泳ぐ」と言います。
 「そう言われてみれば、俺はスキーやスケートをほとんどやったことがないなあ。小学校には竹スキーで行ったし、その頃はマイナス16度くらいだったから、やろうとも思わない。山ひとつ越えればマイナス30度だったし」
 ここで隣の30台女子が参入。
 「私のお父さんは北海道出身だったけど、子どもの時に一度もスキーに連れて行ってくれなかった。それはそういうわけだったのね」
 「岩手のひとって、皆そうなのかしら」
 おいおい。そりゃ最初の「長崎じゃ、全家庭にミカンの木がある」を超えてますって。
 「いやいや、町場の子はスキーに行きますよ。山の子でも、お父さんが外で働かない家の子は連れてって貰えると思う。俺なら仮に父親が『行こう』と言っても断ったけどね。山は見飽きてるから、どうせなら都会か海に連れてってくれよ、てな感じ」
 ちょうどそこに、福島の某山の村出身の看護師(女性)が来ました。
 「この福島の山の子も、スキーはほとんどやったことがないと思う」
 すると、その看護師は「ありませんよ」と答えました。
 「うちの近所は案外、雪が少ないのです。スキー場もありません」
 
 冒頭の長崎の看護師さんは、親に叱られたりすると、堤防に行き、外からは見えない穴に座って海を眺めたそう。
 確かに波除けに、ボコボコと穴が開いてますね。
 ひとりぼっちで座る子どもの姿が目に浮かびます。