日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

○夢の話 第716夜 大トカゲを倒す

○夢の話 第716夜 大トカゲを倒す
 2日の午前3時に観た夢です

 旅をしている。
 私は女で呪術師なのだが、この世の真理を究めるために、世界中を見て回っている。
 移動手段は専ら「歩き」で、杖をつきながら街道をテクテクと進む。
 この日は荒れ果てた山岳地帯を歩いていた。
 両側が斜面になった底の道を歩いていると、斜面の中腹に男たちが五六人座っていた。
 風体が怪しいし、顔つきが如何にも悪い。
 「ははん。旅人を品定めしているのだな」
 ここは住人が少ない地だが、通行人は割と多い。道はこれしかないからだ。
 往来する者の中から、金品を持ち、かつ狙い易いヤツを襲おうと算段しているわけだ。
 若い女の独り旅なら、別の理由で襲われる場合もあるが、私は呪術師だから大丈夫だ。
 私は自分が呪術師だと分かるように、黒い布で全身を包み隠していた。
呪術師は不吉な存在だから、誰もちょっかいを出さない。
 やはり、男たちは私に目を留めず、後ろの方に目を向けた。

 そこから半丁ほど過ぎた頃に、背後で声が響いた。
 「私は『子を捜す母』だ。邪魔立てをすると許さぬぞ」
 振り返ると、男たちが道に下りていた。
 恐らく男たちの前には女がいるのだろう。その女が標的になったのだ。
 「そりゃ勇ましいこったな。だが、大人しく従わねば痛い目に遭わせるぞ」
 男たちが一斉に笑い声を上げる。
 すると、左の土手の陰から、別の声が届いた。
 「女。もしお前が望むなら、俺が助けてやろう」
 土手の陰から一人の男が現れた。
 見上げるほど背の高い、筋骨逞しい男だ。
 男は女の近くに歩み寄ると、もう一度尋ねた。
 「食い物を持っているか。もしそれを俺に分けてくれるなら、こいつらを蹴散らしてやろう」
 男たちはそれを聞いて、もちろん、腹を立てた。自分たちは六人もいるのに何を言うのかと思ったのだ。
 「女独りではやっかいな事態だろう。わずかな食い物で、やっかいごとが半分に減る」
 この時、私は道を戻り、道の端から様子を窺った。
 女は部族の者で、大きな槍を携えている。日頃から男と同じように狩りもし、戦ってもいるのだ。
 ここで『子を捜す母』が口を開いた。
 「分かった。私の持つ食べ物をお前に分け与えよう」
 それを聞き、男が微笑む。
 「よし。それなら、俺はこいつらを倒す」
 二人で男たちに向かって身構えた。

 ここで、私は「この二人を助けてやろう」と思い立った。
 盗賊たちを放置すれば、この後も罪の無い人々を襲い、殺すだろう。
 この辺で止めねば、多くの人々が苦しむことになるのだ。
 そこで私は男たちの背後に近付き、呪文を唱えた。
 「ガサダバルル・オンゴレダラワ・ガリシリヌ」
 すると、盗賊たちが「うっ」と呻いて、体を静止させた。
 そこで、私はすかさず盗賊の前に立つ男に命じた。
 「おい。動きを止めていられるのは、ごく僅かな間だ。今のうちにやれ」
 男と『子を探す母』が私を見る。
 「え?」
 咄嗟のことだから、判断がつかぬらしい。
 「早くこいつらを殺せ」
 すると男女はようやく動き始め、盗賊たちの首筋の血管を次々に断った。

 盗賊の死体を道の端に片付けた後、私は二人に向き直った。
 まずは『子を捜す母』からだ。
 「お前は自らを『子を捜す母』と名乗った。それには何か謂れがあるのだろう。それは何だ」
 「その言葉の通りだ。三日前に部族が襲われ、子どもたちが攫われたのだ。私はその子等を取り戻しに行くところだ。子どもたちは西の王のところにいる」
 すると、ここで男が口を挟む。
 「それは奇遇だな。俺もこれから西の王の所に行く。何せそいつは親の敵だからな」
 男は深く頷く。
 「よし。『子を捜す母』よ。俺はお前と一緒に行こう。相手は何百人も従えた強いヤツだ。一人よりも二人の方が力になる。俺の名はガリクと言う」
 女の方も異存は無い。西の王は部族の男たちを皆殺しにした敵に他ならなかった。
「私の名は・・・。今は我が子しか望みを持たぬ。なら『子を捜す母』が今の名前だ」
 二人が揃って私の方を見る。
 西の王は二人の共通の敵だが、この呪い師は別だ。「同行してくれ」とは言い難いが、しかし、先ほどの呪いの効力を見れば、かなり役には立つ。恐らくそんな風に考えたのだろう。
 私は『子を捜す母』の気持ちが分かる。私の部族も同じように敵に襲われ、皆殺しにされたのだ。その時、助かったのは、たまたま村を離れていた数人だけだった。
 「いいだろう。『子を捜す母』がその名を捨てられるところまで見届けよう」
 私が戦いに参加することは無いが、脇に立ち、呪いで力を添えることなら出来る。
 「私のことはただ『呪い師』と呼ぶだけでよい」
 
 (長いので中途省略。)
 二日後、もう一人、カインという仲間を加え、私たちは西の王の砦に着いていた。
 砦の外に一町程の広さの柵囲いがあり、その中央に檻が置かれている。
 たぶん、子どもたちはその中にいる。
 しかし、その檻に行き着くには大きな問題があった。
 柵の中には、体長がひとの背丈の十倍はありそうな大きさの大トカゲが二匹いたのだ。
 「なるほど。子どもたちをあいつらの餌にするつもりで連れ去ったのだ」
 たぶん、既に幾人かは犠牲になっているのだろう。
 「なら早く助け出さないと」
 だが、相手は尋常ならぬ大きさの猛獣だ。どうやって、檻まで行くのか。
 皆の眉間に皺が寄る。
 そこで私は皆を安心させることにした。
 「案ずるな。呼吸を5回する間なら、私はあの獣の動きを封じられる。その間にあやつらの首を落とせ」

 早速、皆で柵の中に侵入した。
 その気配に気付き、大トカゲが私たちの方に近付いて来る。
 そこで私は呪いを唱え、トカゲの足を止めた。
 「今だ。はやくこやつらを」
 ガリクとカインがトカゲに襲い掛かり、二匹の頭を切り落とした。
 息を吐く間もないうちに、檻の方で「きゃあっ」という子どもたちの叫び声が上がった。
 檻には『子を捜す母』が、子等の救出に向かっていた。
 そっちに顔を向けると、あろうことか、隅の方にもう一匹の大トカゲが隠れていたらしい。
 その一匹が檻の方に向かって来ていたのだ。

 私はすかさず大トカゲの前に出て、呪文を唱えた。
 大トカゲは今にも『子を捜す母』に食いつくところだったのだが、やはり他の二匹の時と同様に動きを止めた。
 ガリクがトカゲに近付き、首を切ろうとする。
 その寸前で、私はガリクを制止した。
 「待て。一匹だけなら、私はこいつを操ることが出来る。それならこいつを」
 皆が私の顔を見る。
 「西の王の寝所の中に放してやる手だ」

 束の間の仲間だったが、目的を達した暁には別れの時が来る。
 子を取り戻した母親は部族の村に帰ることになった。ガリクも八人の子等の安全を守るために、村まで着いていくらしい。
 もう一人のカインという修行僧も自分の寺に戻る。
 『子を捜す母』は、別れ間際に私の手を握った。
 「どうも有り難う。私の名前はメリンと言います。私の子は見つかったから、もう『子を捜す母』では無くなりました」
 メリンの傍らには、五歳位の男児が付き添っている。
 「『女呪い師』さん。貴女はお一人で大丈夫ですか。それに本当の名前は何でしょうか」
 そのメリンに私は答えた。
 「私はただの『呪い師』でよい。女の呪い師は他にいないからな。それと私は一人きりではない」
 この後、私は自分で歩かなくとも済む。
 もはや大トカゲの背に乗って移動すれば良くなったのだ
 ここで覚醒。
 
 これまで、眠る度に怨霊の出る悪夢を観ていたのですが、このところ、連日、ごく普通の夢を観ています。大トカゲは何かの象徴ですが、たぶん、悪縁の一種だろうと思います。
 悪縁を殺し、また反転させ味方につけるのは、けして悪い夢ではないように感じます。
 ここ数日で、状況がかなり好転しつつあるような気がします。
 油断は禁物ですが、最大の「危機の峠」を越えつつあります。