日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎冷やし味噌ラーメン

◎冷やし味噌ラーメン
 栄養士が時々、病棟に来て、栄養指導をするのですが、そのチーフが花巻出身の女性です。
 品良く「女性」と書くと、もう一行説明が要るようになるから、ここは最初から「オバサン」と書いた方が分かりよいと思います。
 しかし、「オバサン」では「言葉遣いが相手を下に見た言い方だ」と思う人もいるらしい。
 でもこっちだって「オヤジジイ」だし、「オヤジ」が同世代の女性を「オバサン」と呼んで何が悪いのか。
 若い子が中年女性を「オバサン」と呼ぶのは、自分たちが「若さ」を持っているだけに、見下した感じになる。こりゃアウト。
 ま、若いヤツはとにかくアウト。とりあえず、中高年は若者をとにかく否定した方がよい。
 上が重いと、若者は「こいつらを倒そう」と頑張るし、反面教師で振る舞いに気を付けるようになる。
 物分りの良いオヤジジイが世の中を駄目にします。

 「だから今後は堂々とオバサンと呼ぶことにする」と書くつもりが、よく考えたら、当方は普段から中年以降の女性を「ババア」と呼んでいました。
 悪口を「親しみ」として受け取ってもらえる域は、まだ遠いです。これにも熟練が必要。

 とにかくそのオバサンは花巻出身だけに、大谷選手や「ユーセイ君」の話題になると、まるで「親戚の子」みたいな話し方をします。で、長くなる。
 そこでサクサク帰らせ、自分が眠るために、顔を見た瞬間にこちらから話題を振ってスルーすることにしています。

 栄養士:「食事では何がお好きですか」
 今日は、魚類にどれだけリンが含まれているかの説教に来たらしい。患者は肉をほとんど食べませんが、魚は食べます。
 「その魚にもリンがこんだけ」という道筋です。
 そこで、先んじて攻めます。
 当方:「いやあ、私はこの時期は、断然、『冷やし味噌ラーメン』ですね」
 この「冷やし味噌ラーメン」はマイナーな食べ物らしくて、知っている人は殆どいません。
 栄養士:「食べたことがないですねえ。どんなものなんですか?」
 当方:「おそらく発祥は北陸です。所沢に住んでいた時に、近所野中華屋さんの主人が新潟だかその辺の出身でメニューに出していました。私はこいつなら毎日でも平気です」
 栄養士:「味噌ラーメンを冷やしたもの?」
 当方:「具材は味噌ラーメンですが、全然違います。冷やし中華と味噌ラーメンの親戚ですが、どっちにもるというか似てい、似ていないと言うか」
 ここから滔々と具材に何を使っているとか、細かい説明に入ります。
 当方:「というわけで、夏の食べ物と言えば『盛岡冷麺』だった当方が、唯一、『冷麺もこいつには負けるかもしれん』と思うのが『冷やし味噌ラーメン』ですねえ」

 すると、周囲が全部この話を聞いていて、あちこちから声が掛かります。
 患者:「美味しそうですね。どこで食べられるんですか」
 うーん。東京周辺では、数軒しかやっていないのでは。
 所沢の店は、店主がトシを取り、閉店した模様です。
 当方:「難しいですねえ。そのレシピが生まれ育った地を離れると、味は別のものになってしまいます」
 ここでオヤジ看護師も参加して、「探してみよう」という話になりました。
 患者は食が細いし、看護師は休みが少ないので、この手の話には敏感です。

 結局、そこから延々と「美味しい料理」の話をしたので、結局、眠れませんでした。
 栄養士を適当に追い返して、ゆっくり寝ようと思っていたのに。
 それでも、さすが花巻情報は詳しくて、台温泉の穴場旅館のネタを仕入れました。
 いずれ父を連れて行こうと思います。

 ちなみに、盛岡出身の者にとっては、盛岡冷麺が真っ向から勝負して「負けるかもしれない」というのは衝撃なのですが、こいつは味噌味なのにあっさり食えるのです。冷やし中華の酸っぱいタレやまったりのゴマ味ではなく、冷麺の辛い味でもない、不思議な味です。冷え汁の風味に少し似ていなくもないが、やはり独自ジャンルです。
 あのオヤジ一人だけが作れる、特別な味でないことを祈ります。

 長患いで最も苦労するのは、食が細くなること。
 「食べたい」と思うようになって来たのは良い兆しで、また土俵際から一歩中に戻ったことを実感します。