日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話 第738夜 学校で

◎夢の話 第738夜 学校で
 6月1日の午前2時半に観た夢です。

 今日は小論文のテスト。しかも一時間目だ。
 俺は念のため、早目に高校に行くことにした。
 7時頃に学校に着く。

 校門を入り、玄関に向かうと、入り口の近くに女子が4、5人立っていた。
 ちょうど壁掛け時計の真下だ。
 皆ほっそりしており、スタイルがいい。どこかポーズを取っているような、うまい具合の配置だった。
 「絵画みたいだよな」
 写真を撮ろうか。
 でも、「撮ってもいいですか」と訊いた瞬間に、このバランスが崩れてしまう。
 そこで俺は女子には黙って、こっそり撮影することにした。
 もちろん、ファインダーを構えたりもしない。
 腰の辺りに据え、パシャパシャと数枚撮った。

 玄関に入ろうとすると、女子の一人が黙って、俺のカメラを指差した。
 「撮ったわね」という仕草だ。
 微笑んでいるから、怒ってはいないのだろう。
 俺は「ウン」と頷き、右手を小さく上げた。 

 教室に入り、自分の席に座った。
 俺は一番前の机だから、教師の声が頭の上で聞こえる。
 迂闊に正面にいると、教師の唾が飛んで来るから、椅子の端っこに腰掛け、体をなるべく外側に傾ける。
 この日はテストだから心配は無いのだが、いつもそうしているので、何となく同じ姿勢になってしまう。
 集中力を切らさずにいたので、テストは無事に終わった。

 場面はすぐに翌日に替わる。
 教師が教壇に立ち、「昨日の答案を返します」と言う。
 随分、手際が良いよな。昨日の今日だ。
 ところが、答案用紙を生徒に配り終わっても、俺の分を寄こさない。
 教師が背中を向けたところで、俺は声を掛けた。
 「先生。俺の分がまだですけど」
 教師が振り向く。
 「え。おかしいな。全員分を返したはずだが」
 教師が鞄の中を探す。

 「ないなあ。君は昨日のテストをちゃんと受けたの?」
 「ええ。もちろんです」
 「でも、君がテストを受けていた記憶が無いんだけどね」
 そりゃそうだ。俺は教師の真下で、視線の外。昨日のテストでは、俺は最初に書き終え、答案を机に置いて外に出た。
 「え。俺が最初に答案を出したんですよ」
 「そうなのかあ」

 すると、後ろの方で他の生徒たちが噂話を始めた。
 前までその話が聞こえて来る。
 「あいつ。昨日、学校に来てたっけ」
 「覚えてねえなあ」
 それも分かるよな。俺は一番前の机だから、他のヤツからは背中しか見えないわけで。

 俺はここで昨日の写真のことを思い出した。
 「そうだ。俺は昨日は7時に学校に来て、玄関の前で写真を撮りました。その画像と画像のプロパティを調べれば、俺がその時刻には学校に来ていたことが分かります」
 すぐにカメラを取り出し、画像を開いた。
 教師はその画像を目にすると、小さく頷く。
 「あ、本当だ。これはここの玄関だな。時刻も間違いない」
 何時の間にか、周囲に生徒たちが集まっている。
 「おお。女子を撮ってら。どこのクラスの子たちだよ」
 ここは男子クラスだから、他のクラスの女子には興味津々だ。
 皆が一斉に画像を覗き込む。

 すると一人が声を上げた。
 「こんなきれいな女子。ここの学校にいたっけ?」
 他の生徒が口々に言う。
 「本当だ。見たことの無い女性たちだよ。先生、この子たちはどこのクラスなの?」
 教師が覗き込んで、首を捻る。
 「わたしも覚えが無いなあ」

 放課後は文化祭の仕度で遅くなり、校舎を出る頃には、周囲は薄暗くなっていた。
 玄関を出ようとすると、すぐ脇に女子が5人立っていた。
 例によって、時計の下だ。
 俺を見ると、こないだ俺に合図をした女子が声を掛けて来た。
 「タカシ君(仮名)。待ってたよ」
 5人とも、タレント以上の美人揃いだから、少し緊張する。
 俺は男兄弟で育ったから、女子とうまく話せないのだ。
 「何か用?こないだ写真を撮ったことなら、無断で撮ったのは悪かったよ。でも、構図を崩したくなかったからさ」
 すると、その女子たちの中の親分格と思しき女が口を開く。

 「ううん。そんな話じゃないよ。私らは君の味方になってあげようと思ってさ。私らが君の傍につけば良いことだらけだよ。何をやっても上手く行くようになるもの」
 一瞬、自分がこの美女子軍団を引き連れて道を歩いている姿が頭を過ぎった。
 通り過ぎる人は、絶対に全員が振り返って見るよな。

 「でも、何か変だよな。話が美味過ぎるもの」
 そう言えば、この学校にはこの女子たちを見た者が一人もいない。
 そこで、俺は最初の女子に訊ねた。この子が一番話し易そうだと思ったからだ。
 「ね。君たちはこの学校の生徒じゃないんだろ。どこから来たの?」
 すると、その瞬間に、周囲の空気が一変した。

 「私らはね。あそこの神社から付いて来たの」

 うへへ。ここで出たのか。
 それじゃあ、この子らは「生きている人間」ではないということだ。
 せっかく良い話の流れだったのに。

 俺は左手に持っていた竹刀袋の紐を解き、中から御守刀を引き抜いた。
 最近はいつもこの刀を持ち歩いているが、さすがにそのままでは他人目を惹くから、竹刀を入れる袋に入れてあったのだ。
 「君らがどんな素性でも、また俺に好意を持っていようといまいと、5メートル以内に近付いたら無条件に斬る。いつもそう言っているだろ」
 死霊が取り付くやり方は、まず現世利益を与えるところから。労せず金が儲かったり、出世したりする。本人の努力や才能以上のものがどんどん返って来る。
 だがそれは、取り入って、味方だと思わせるための手口だ。
 
 そこから先、俺は刀を振るい、斬って斬って斬りまくった。
 「執着心を解き放ち、冥土に行け」
 5人を斬ると、どんどん沸いて出て来たから、それも斬った。
 延々と斬り続けているうちに、ようやく覚醒。

 美女で心根が優しそうな風情なのに、中に入られると具合が悪くなります。
 無条件で跳ね除けるほかはないようです。