日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

競争入札

公共事業が全面的に競争入札になるというのが今の流れです。
右か左か極めて一方向的な決断をするのが政治や行政の特色で、何か不都合があると正反対の方向に走りすぎるきらいがあります。
公共事業は、建設やライフラインなどいわゆる現業部門だけでなく、企画部門の事業も当然あります。
企画案を作る仕事は、基本的にアイデア勝負で、出発点の発想自体が違っており、競争入札はなじみません。

20年近く前、OA化の機運が最初に盛り上がった時には、都道府県自治体が運用システムの発注を競争入札で行いました。そこで生じたのは、大手企業が1円とか10円とかで落札するというものでした。
ちなみに、推定費用は2千万とか3千万とかの規模です。
もちろん、それには裏があり、当時はソフトとハードが半ば一体化した状況で、3系列くらいの情報機器体系の中でいずれかを選択しなくてはならなかった。
すなわち、ソフトを発注することは必然的に、ハードを選択するということをも意味しましたので、ソフトに関する2千万をサービスしたとしても、何百台・億円規模の機器の発注が後ろに控えていました。
ということは、すなわち、仕事としては何億+2千万なので、2千万はサービスしても十分に利益が上げられます。

要するに、この場合は、ハード・ソフトを両方とも事業展開する大企業だけが、入札に参加できることになります。
競争の性質は、「強いもの」、「大きいもの」が勝つシステムなので、自由競争は実質的に力のあるものを利する結果を生みやすいのです。
「自由化」だ、「改革」だと言っていれば聞こえは良いのですが、実際に潤うのは金持ちであり大資本で、これは過去5年間の経済を見ればはっきりと結果に現れています。

私の本業は総合政策で、この分野の専門家は層が極めて薄いので、30歳ソコソコで会社を作り、事業を展開することができました。ここでは自治体の総合計画を組み立ててゆく際に、いかにその地域なりの条件を取り込んでいくかというのが主眼になります。
いわばソフト中のソフトと言えますが、ここでは一定方式でトコロテン式に押し出すというわけには行きません。なぜなら、他とは違うその地域なりの長所や短所を踏まえたものにしないと、全く意味を成さないからです。
しかし、競争入札の時流の中で起こってきたのは、次のような展開でした。
まず自治体から電話が掛かってきます。
「~という方向で計画を作りたいのですが、予算取りのため見積をお願いします」
イデアにより、構成は違いますので、見積は事業計画とリンクしています。このため、ほとんどのケースで事業計画書を添付することになります。自分の持っているノウハウももちろんある程度書かざるを得ない。
1、2ヵ月後、予算が取れましたと連絡が来ます。
「それで、○日後に競争入札としますので、見積書を出してください」
これへの返事は、「既に出してあります」ということになります。
ノウハウに自信を持っていますので、掛け値で予算取りをすることもなければ、ダンピングすることもありません。

さらにこのケースでは、情報は間違いなく漏れており、企画書をコピーされたうえ、見積書は5~10%減価した値で地元の業者が出すことになっているのです。
事業の内容が決まっているとき、コストを最も低くすることができる業者は、要するに庁舎の前に事務所のあるところです。
ゼニカネの話はともかく、苦労して作り上げてきたアイデアが簡単に流出されては腹が立ちます。

競争入札にすれば、総てが「公正に」行われるわけではありませんよ。
現業部門はともかく、ソフト事業に関しては、概ね安かろう・悪かろうです。
まずは企画そのもので選び、それから費用を考えるというのが筋ではないでしょうか。
あるいは、予算上限を定めた上で、その範囲内で可能な企画コンペを行えばよいのです。