日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第234夜 ガレージにて

4月2日は息子の入学手続きで、学校へ行きました。
病み上がりなので、半日座っていただけで、かなり疲れます。
帰宅後、倒れるように床に腰を下ろし、そのまま眠り込んでしまったのですが、その時に見た短い夢です。

眼を開くと、薄暗い場所に座っている。
目の前には半開きのシャッターが見える。
シャッターは地上40センチくらいのところで止まっており、地面との隙間から明るい日の光が差し込んでいる。

「ここはガレージだな」
眼が慣れて来ると、室内の様子が見え始める。
どの壁際にも棚があり、道具類が雑多に積まれている。
埃だらけで、息もつけない。
と言うか、オレは息をしていない。

横目で脇を見ると、床に割れた鏡が転がっている。
元は壁に掛かっていたが、結び紐が切れたので、床に落ちたのだ。
真っ直ぐ下に落ちると、鏡は案外割れないものだ。
少し欠けてはいるが、室内全体を映し出していた。

鏡に映ったオレの姿は、自動車だった。
しかもかなり古い。
十年以上もの間、まったく人が乗っていなかったのではないか。
ボンネットが半開きだが、そこにも埃が溢れている。
「なんてこった。人間じゃないどころか、ついに生き物でもなくなってしまったか」

がらがらと音がして、前のシャッターが上がった。
そこから2人の若者がガレージの中に入ってくる。
「くれると言われても、こんなオンボロ車じゃなあ」
1人がこぼす。これはこの家の息子だ。
「いいじゃん。案外動くかもよ。元々ドイツ車なんだし、シンプルで頑丈に出来てる」
これはその息子の友だちらしい。

若者2人は送風機を持ち出し、オレの上に積もったゴミを吹き飛ばした。
(なるほど。手で払うより簡単だな。)
それから2人で、プラグやオイルを取り替えたり、バッテリーを充電したりして整備を始めた。
チャラい外見とは違って、意外と機械にも詳しいらしい。

半日が過ぎ、ひと通りの整備が終わった。
「よおし。エンジン掛けてみっか」
息子の言葉に、友だちが頷いた。
「行くぞ」

ぶるん。ぶるんぶるん。プススス。ガガガ。
やはり、錆びたエンジンはそう簡単には回らない。
何せ、半世紀も使いづめだったポンコツだもの。

この家の息子が笑い出した。
「さすがオヤジが若い頃に乗った車だけはある。ひと筋縄じゃあ行かないな」
「でも、それくらいじゃないと面白くない。こういう感じの車はオレは好きだね」
おお。なかなか見どころのある奴らじゃないの。
女の子だって車だって、従順すぎるのほどつまらないものはない。
自己主張の強いのと、うまくやって行かなきゃね。

「よおし。オヤジが昔やってたのと同じ感じで、チョークを開けて見るかな」
「チョーク?チョークって何?」
「この車は古いから、右のサイドにチョークが付いてるんだよ。トルクを開けるやつ」
「ふうん。まいっか。行ってみよう」

ぶるんぶるん。ぶるん、ぶるぶるるー。
エンジンが回り始める。
(よっしゃ。少しこいつらに協力してやっかな。)
オレはそんな気持ちになっていたのだ。

たまには外に出て、郊外を飛ばしてみたくなったぞ。
「行くぞ。それ」
ぶるぶるぶるぶる。
何とかオレのポンコツなエンジンが動いてくれそうだ。

ここで覚醒。

車の夢は多くの人にとって、また多くの場合、性的な意味があることが多いようです。
でも、この夢は違います。
毎朝、起き掛けには心臓の調子がイマイチで、不整脈が起きています。
この脈の乱れ方が、ポンコツ車のエンジンの動きに似ています。
そういう鼓動のせいで、こんな夢を見たのだろうと思いますね。

ちなみに、車を擬人化するた時には、ヘッドライトを眼に当てはめることが多いのですが、実際に車になってみると、眼にあたる部分はフロントガラスでした。
なるほど。外を見るのはそこからです。