日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話 第581夜 裏返しの星

◎夢の話 第581夜 裏返しの星
 3日の午前3時に観た夢です。

 我に返ると、杭の上に立っていた。
 直径30センチくらいの杭の上に、左足1本で立っていたのだ。
 「おいおい。これじゃいずれ倒れてしまう」
 周囲を見る余裕はないが、元々、周りにはガスがかかっている。
 霧なのか。
 風が吹き、そのガスが少し飛ばされると、下が見えた。
 「うひゃひゃ。霧じゃなくて雲だ」
 はるか下の方に大地が見える。3千メートルは下だろう。
 ということは、オレは空に突き立った高さ3千メートルの杭の上に、左足1本で立っているわけだ。
 絶望的な状況だな。
 若い頃なら結構長くもつだろうが、最近のオレは数秒で足をついてしまう。
 時間の問題だ。しかもほんの少しの。

 しかし、どんな状況でも生き残る方法を考えねば。
 オレは杭の上に立っているんだから、杭は地面まで繋がっている。
 それなら杭を伝って降りれば、いずれ地面に降り立つことができるのではないか。
 「ダメだな。腕力がもたん」
 それに、スルスルっと下がろうとしても、今度は摩擦熱で焼けてしまう。
 「それでも、ただ落ちるよりはましだ」
 そこで、オレは上着を脱ぎ、両手に巻きつけた。
 これで杭の側面に掴まれば、熱がほんの少し緩和される。
 気休めなんだけどね。

 そこで、一端小さくジャンプし、両手を広げて下に落ち、杭の側面に取り付いた。
 それから、スルスルと下に向かって下がって行く。
 そのまま長い距離をすべり落ちたが、それほど熱は生じなかった。
 「ここが空の上で、雲が出ているから、表面が湿っている。だから擦れずにすべるんだ」
 果てしない時間が過ぎる。
 それでも次第に終着地が近付いた。
 地面らしき底に足を着くと、隣に人が立っていた。
 白いローブを身に着けた老人だった。
 (何だこいつ。神様みたいな格好をしやがって。)
 その老人が口を開いた。
 「わざわざ柱を伝って降りて来たのか?飛び降りれば良かったのに」
 「そんなことをしたら、ぺしゃんこに潰れてしまうだろ」
 すると、老人がかかと笑った。
 「お前。ここがどこか知らんのか」
 そんなこと知るわけが無い。
 「え。ここはどこなの?」

 老人は軽く頷いて、ゆっくりと答えた。
 「ここは裏返しの星だよ。世界は星の内側に向かって作られている。重力は外側だけでなく中心に向かっても働くから、外側の地面には静かに下りられる。杭から飛び降りても良かったんだよ。ほら」
 ここで、老人は上に向かって飛び上がった。
 すると、ひゅうっという音と共に、一端、老人の姿が空に消えたが、老人は数分後にゆっくりと降りてきた。
 「だろ?」
 「じゃあ、中心を跳び越して反対側に降りることも出来るのかい?」
 「出来るさ。真ん中辺りで一度停まるから、そこは少し泳がなくちゃならんけど」
 
 ってことは、この星では「空を飛べる」ってことだ。
 そんな面白いことはない。
 オレは片手を上げ、もう片手は腰につけ、まるっきりスーパーマンの格好で空に飛び上がった。みっともないが、他に思いつく格好が無かったのだ。

 老人の言ったとおり、雲の合間を縫って、はるか高いところまで飛んで行けた。
 中心に近づくと、動きがゆっくりになり、そこで停まった。
 オレは平泳ぎをしながら考えた。
 「それなら、何でオレは杭の上に立っていたんだろ」
 ここで覚醒。