日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

九戸戦始末記 北斗英雄伝 連載の始まり

4月より岩手の新聞(盛岡タイムス)にて、連載を開始します。

北斗英雄伝 其の壱 葛姫(くずひめ)の章

天正十八年の冬はいつもの年に増し寒さが厳しく、川という川の表面に厚い氷が張った。
その一方で、年の暮れまで雪はほとんど降らず、このため山の木々も幹の芯まで凍てついた。
晦日の昼頃になり妙に生暖かい東風が吹いた後、突然ドカ雪が降り始め、これは夜になると氷のような粗目(ざらめ)雪に転じた。
年が明け天正十九年に替わったのだが、初春とは名ばかりで、暮れから始まった雪は途絶えることなく降り続いている。・・・

[あらすじ]
姫神山の麓に住む疾風(厨川五右衛門)のもとに、玉山重光とその甥の小次郎が訪ねてくる。彼らの用件は領主・日戸内膳の命により、疾風に内膳の三女・葛姫の守護と東方の見張りを任じるものであった。疾風は2人とともに葛姫の住む山館に向かうが、そこで会ったのは眼の青い姫であった。
疾風と小次郎は内膳の密命により、三戸偵察に向かう。

[ミニ解説]
「北斗の英雄」とは、九戸政実を指し、この物語(伝奇小説)は九戸の戦いをモチーフとしたサイドストーリーです。
この章の登場人物は次の通りです。

厨川五右衛門宗忠:通称は疾風。姫神山の麓に住んでいますが、日戸内膳の命を受け、葛姫の保護と三戸
         偵察を命じられます。弓の名手。
         九戸の戦いで奮戦した工藤右馬助をモデルとする創作上の人物です。

葛姫      :日戸内膳の養女。熊に殺された「山の者」(アイヌ)の子で内膳に育てられます。
         碧眼の美女。
         玉山村(現盛岡市)に、「中世の頃、山中に美しい姫君が住んでいた」という伝説があ
         り、これを取りました。

日戸内膳秀恒  :実在の人物。九戸の戦いでは三戸方の武将として戦いに参加します。
         地元の古文書にも書かれていますので、実際にいたことは確かです。

玉山重光    :創作上の人物。内膳の腹心の配下。後に玉山常陸となりますが、こちらは実在の人物です。
玉山小次郎   :重光の甥。疾風の弟子となります。後の玉山兵庫六兵衛。
レタル     :狼で、葛姫の家族が熊に殺された際に、姫を守って熊と戦いました。
         アイヌ語で「白(シロ)」を指す言葉で、綴りはレタルですが実際の音は「レタ」に
         近いはずです。

「葛姫の章」では、疾風と葛姫の出会いから三戸出発までとなります。
この後の「残雪の章」では、三戸に出発した疾風、小次郎と盗賊との戦い、葛西衆の孤児・市之助との出会いを描きます。

地元の方は新聞で、それ以外の方はいずれ出版された際に楽しんで頂きたいと思います。