長いハイウエイ・ドライブの後、ターミナルが近付いてきました。
私は大型のバイクに乗り、何百キロか旅をして来たのです。
ターミナルは、高速道路が縦横に交錯する間に立つ、細長いビルです。
ここは夢の中に何度も出てきますので、ここに来ると、「今、自分が夢の中にいること」を自覚します。
「またこの夢じゃん」
ここはどことなく池袋に似ています。
近道で行こう。
ビルの中に入り、勢い良くバイクで階段を上ると、屋上階に出ます。
成田空港のチェックポイントに似た検問に近付くと、係官が2人立っていました。
1人は中年の男。もう1人はまだ20代と思しき女性です。
「ちょっとちょっと。ここからは日本国内に入るから、ヘルメットを被ってくれないと」
またかよ。いつもメット無しで、止められるんだよな。
「持ってきてないですけど」
「よくいるんだよね。じゃあ、バイクは預かっておくから、近くでメットを買ってきて」
買ってくるのかあ。お金があったかな。
「あそこが商社ビルで、その2階でヘルメットを売っている店がありますよ」
これは女性です。
街に下り、言われたビルに入っていきます。
商社と言う割には、まるで雑居ビルで、中小企業がたくさん入っています。
各々の会社の前には、段ボール箱が山積み。
「こんなとこで、メットなんか売っているのかいな」
事務服を着た女の子が2人通りかかったので、尋ねてみます。
「バイクのヘルメットを売っている店があるって聞いたんだけど、このビルにあるのかな」
気安い口調で聞きました。
すると、2人のうち背の高い方が、くすくすと笑いながら答えます。
「ここにはありませんよ。ヘルメットを扱っているのはあっちのビル」
窓の外、指差す方を見ると、3ブロックは先のようです。
時間が掛かりそうだな。
家に着くまでは、まだ遠いなあ。
実家で待っているだろう母の顔が思い浮かびます。
ここで覚醒。