我に返ると、車で高速を走っていました。
神戸までは1千キロあります。
「長いよね。名古屋あたりまでで良いから、少し出てきてくれないかな」
しかし、これから会おうとしている知人は、足が悪いことを思い出しました。
「無理だよね」
車はトランザムをぎりぎりまで改造したもので、楽に時速300キロは出ます。
もちろん、直線的な道だけで、カーブは曲がれませんけど。
ポルシェを追い越しながら、「あの車って、作りがチョロQだよなあ」と感じました。
1千キロを5時間くらいで走り、約束の駅の前に着きました。
ロータリーの真ん中に停車し、知人が現れるのを待ちます。
来ないなあ。
車を降り、外で煙草を吸います。
あたりは既に夕暮れで、帰宅する人の群れが駅から出てきます。
駅前に着いたのは昼過ぎなので、もう5、6時間は待っていた勘定になってます。
来ないよねえ。
場所か時間を間違えたかな。
ここでドキッと気付きます。
間違えたのは、場所でも時間でもありませんでした。
「相手」です。
ここで自分が、20年くらい前に別れた女性を待っていることに気付きました。
「いまだに待っているのかよ」
先程までは20台の青年だったのに、車の窓ガラスに写る顔は既にオヤジジイに転じていました。
「ああ。わずか1日で二十数年も時が経っちまった」
いつまで待っても来るわけ無いよな。
車に手を掛けたまま、号泣します。
回りでは沢山の人が見ていますが、構わず泣き続けます。
胸が苦しくなるくらい泣きました。
ここで覚醒。
眼を開けると、夢を見ながら泣いていました。
やや。左胸が苦しい。
夢の中だけでなく、実際に左胸が苦しくなってます。
この苦しさは尋常ではないぞ。
そういえば、最近、胸にオーブが出てたっけな。
「気をつけろ」という暗示かも。
しばらくすると収まったけど、明日は病院に行こう。