日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第144夜 災いを取り去ってくれる人

今日の昼過ぎ。仮眠中に見た夢です。
この夢の中では、私は35歳くらいでした。
 
お祭りを見に、K町に行きました。
八幡様の入り口で道の端に立って、山車の通るのを待っていると、最初に子どもたちが6人くらい乗ったヤツがきます。
子どもたちは、顔を白く塗り、鼻の所だけ赤い朱を塗っていました。
太鼓をトントン叩くのを眺めていると、隣の人が話をしているのが聞こえました。
「ああ。これは○○の山車だ。あそこは○○藩でこの辺とは拍子が違うもの」
ふうん。藩境が町の中にあるとは聞いていましたが、今も現実に風習が違う所があるわけね。

「あっ。次がいよいよ○○さまだ」
周囲の人たちが色めき立ちます。
「○○さま?○○さまって何」
背を伸ばして、北の方角を覗いてみます。しかし、人垣が一杯で何も見えません。
「二十年ぶりだね。○○さま」
「本当だね。二十年ぶりだ」
また、話し声が耳に入ります。
(その「○○さま」って、一体何なの?)

しばらくそのままで待っていると、ようやくお目当ての山車が近付いてきました。山車の両脇には人が1人ずつ立ち、籠から花びらのような物を周囲に撒いています。
山車の中央には、なにやらでっかい人が座っていました。
あれ、あれって・・・。
瞬時に思い出したのは、「スター・ウォーズ」に出ていた「ジャバ」とかいう蛙の親分みたいな怪物です。

体重が少なくとも二百キロくらいありそうだぞ。
醜悪な姿です。
その醜悪な怪物の乗る山車は、道の真ん中をゆっくりと進んでいます。道の人垣から人が近寄っては、その怪物の体に触れていました。
触れた人は、喜色満面の表情で帰ってきます。
「やった。手に触れられたよ!」
「お召し物に触れたよ」

何か特別な意味があるのか。
老若男女が悉く近寄って、その巨大な男(たぶん)に触ろうとしていました。
1千人近くもの人が、一斉に山車の回りに集まり、少しでも近寄ろうとしている様は、とてつもなく奇異に映ります。
ついに我慢できず、近くにいた老人に訊いてみました。
「あれって、どういう人なんですか?」
老人は既に触ってきたと見えて、かなりの上機嫌です。

「あれはな。○○さまと言って、神様から選ばれた人なんだよ。春先に家の玄関に名前の書いた紙が貼ってあって、それが神さまが選んだという証拠になる。ほれ」
 老人が差し出したのは、チラシのような紙です。そこには、端正な顔つきの若者の写真が載っていました。
「え。これって誰なんですか?」
「あそこにお座りになっている○○さまだよ。○○さまは世人の苦しみを吸い取って、救ってくださる。礼大祭で社に納まるまで、その身に苦難を集めてくださるのだ。だから外見はああいう風に変わってしまう」
 写真に写る若者は細身で、かなりのハンサム。あれがわずか数ヶ月であそこまで変貌してしまうのか。

「○○さまが選ばれるのは二十年ぶりだよ。すぐにアンタも行って、災いをお渡しして来な」
そりゃ、すぐに行かなきゃ。
このところ、オレはついてない。離婚したばかりだし、仕事も辞めてしまった。
そこで、山車に走り寄って、手を伸ばします。
近くで見ると、○○さまは遠目よりもはるかに醜悪な怪物でした。
でも、ジャンプして手を伸ばし、○○さまの左手に触ります。

あれ。気持ち良い。
体のあちこちにあった重しのような感覚がスッと無くなりました。
こりゃ、本当なのかも。

山車は山の上にある神社の方に向かいます。
山車のままだと坂を登れないので、途中で神輿に乗り換えて境内に入っていきました。
境内の中央には、櫓のように木が沢山積んでありました。
○○さまは梯子段を上り、櫓の中央に座ります。

「あれ。あそこに座って何をするんですか?」
先ほどの老人に尋ねます。神社まで一緒に上がって来ていました。
「火を点ける」
「え?それじゃ、死んじゃうでしょ」
「世の中の災いを集めたのだから、燃やしてしまわないとね」
「殺人になるのでは」
そこで老人がゲタゲタ笑います。
「○○さまになると、すぐに生まれかわることになっている。ほれ、あそこを見れ」
老人が指差す方向には、白布を敷いた台座の上に、妊婦が1人乗っていました。
「生まれ替わる先も決まっておる。○○さまを出した家も、また今度生まれ替わる家も、この後は大いに栄えることになっておる。だからこれを拒む者は今まで1人もいないのだ」
「でも、表向きというか、世間一般的には犯罪になり、皆捕まってしまうのではないですか」
「掴まるわけがないだろ。警察が仕切っているのに」
境内の中では、人垣が崩れないように、地元の警察が5、6人も出て整理に当たっていました。

こういう風習が実際にあるとは。
「こんな山の中に暮らす人々がこれまで何百年も無事に暮らして来れたのは、○○さまのおかげだよ。ここは寒くて、作物なんかろくに取れやしないんだから」
そう言われてみると、何となく納得してしまいます。
回りは過疎のムラばかりなのに、ここだけには若い人が沢山いました。

ぼっと音を立て、炎が燃え上がりました。
「ああ~」
人垣から声が上がり、皆が一斉に手を合わせます。
炎の中央では、○○さまが苦しそうに身をよじっていました。

ここで覚醒。