日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第161夜 母が呆ける

夕食後、居間に座り、そのまま眠り込んでいた。
せっかくゆっくり寝ていたのに、誰かが喚く声で目覚めた。
両目を開くと、オレがいたのは、40年前に住んでいた家だ。
(その家はもはや取り壊されており、今はもうない。)
オレはその家の2階の自分の部屋で眠っていたのだ。
 
はっきりと目が醒めてみると、隣の部屋で誰かが声を荒げていた。
そこで、その声の主に向かい、注意した。
「ちょっと!煩くて眠れない。少し静かにしてくれないか」
すると、そのオレの声が届いたらしく、人が部屋を出る音がする。
廊下で足音がして、人の気配はこっちの部屋の入り口に来た。
入り口に姿を現したのは母だった。
 
母はオレに向かって喚き散らし始めた。
「何言ってるんだい。だいたい、オマエは・・・」
その母の剣幕に驚かされる。
 
実際の母は病弱だったので、人生で一度も大きな声を出したことがない。
その母が、「オマエは何だ」と、オレの落ち度を言い立てていた。
びっくりして母の顔を見ると、視線があらぬ方向を向いていた。
どうやら齢で呆けてしまっているようだ。
「お袋。訳が分からなくなっているのか・・・」
なんだか胸が痛くなる。
 
(オヤジはどこだろ。誰もこんな母の面倒を見ていないのだろうか。)
隣の部屋には、人の気配がなく、深閑としたままだ。
(「あ、オヤジはもう死んだんだな」、と悟る。)
父が死んで、家に独り残っていた母は、それほど間を置かずに呆けたということなんだろう。
 
オレは身勝手で、何ひとつまともな事が出来ない放蕩児だった。
母のことも、随分苦しめてきたことだろう。
引き取ってやらなきゃな。
目の前の母は、やはり先程までと変わらず、何ごとか喚き散らしている。
ここで覚醒。
 
夢のルールで言えば、私の落ち度を言い立てるこの母親は、私自身です。
自分にとって最も身近な存在の姿を借り、これまでの生き方を責めている。
「いいトシこいてモタモタと何をやっているのか。せめて残りの人生はしっかりと生きろ」と自分自身で諭しているということです。