日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第194夜 自分の心がわからない

こんな夢を見ました。

オレは42歳。妻と3人の子どもがいる。
この他に、「彼女」が1人。わざわざ「1人」と断るのは、30代の頃には2人3人いたからだ。
「彼女」は大学時代の同級生だ。卒後20年の同窓会でたまたま再会したのがきっかけで、付き合うようになったのだ。
もう2年くらい関係を持っており、月に1、2度密会する関係だ。

この女性とは大学時代にも付き合っていたので、相手の心のツボはよく知っている。
ダンナを含め、今の境遇に不満を抱いているらしい。
専業主婦ではなく共働き。子はいないので、それぞれが仕事を持ち、精力的に働いている。
収入も出張も多い暮らしだ。

付き合い始めは「明日も出張」のメールだった。
その日は偶然、オレも同じ街で取材があった。「泊りはどこか」と訊いたら、なんと向かいのホテル。
「じゃあ食事でも」という話になった。
元カレ・カノで、それぞれ人生に不満を抱える中年が、「食事でも」で済むわけがない。
それから、月に数度の出張機会を調整し、旅の途中や旅先で、会うようになったのだ。

ところが、付き合い始めから不自然なことが起きた。
2人で車に乗ると、カーナビが正常に作動しなくなる。
わざとするかのように、遠回りしたり、目的地に着けない道順を選ぶ。
要するに、前方が通行止めだ。
ホテルの駐車場に車を停めると、翌朝、タイヤがパンクしている。
何度も続くと、さすがに「こりゃおかしいぞ」という気になってくる。

次は、ホテルの浴室のドアが開かなくなる。
誰もいないはずの内側から鍵がかかるのだ。
この辺から、「たまたま起きたことではないな」と気づいた。
どうやら、この関わりは歓迎されていないらしい。
誰にって?
そりゃ、オレの回りにいるオバケ達にだ。
オレは子どもの頃から霊感が強く、頻繁に幽霊を目撃するし、声も聞く性質だ。

「今起きている異常な事態は、警告ではないか」
なんとなく、そう感じてはいるが、元々、「飲む・打つ・買う」三昧の生活をしていたので、愛欲には溺れやすい。
関係をやめることが出来ず、半年、1年と時が経つ。
そのうち、カーナビやホテルの奇妙な現象が起きなくなった。
その代わり、今度は体調が著しく悪化するようになったのだ。

密会に出かけようとすると、具合が悪くなる。
帰ってくると、病院の検査の値が極端に悪化する。
オレは放蕩三昧だったので、この齢で、既に成人病のフルコースを味わっている。
20分と立っていられない。
密会の間じゅう体調不良で、ずっと横になっていることもあった。

こうなると、デートもさすがに楽しくなくなる。
愚痴めいた言葉が口から出てくるようになった。
相手の方も、同じようにつまらなくなってきたはずだ。
メールが途切れ途切れになって来る。
それでも、数か月に1度は会う時間を持った。
中年はとかく寂しいのだ。

この日も、約束の場所に出掛けようとして、玄関のドアを閉めた。
すると、頭の後ろで声が聞こえた。
「お前。もうそろそろ潮時だぞ」
はっきりとした男の声だ。
びっくりして振り返ったが、もちろん誰もいない。
自分の潜在意識がそう言っていると考えるヤツもいるだろうが、それにしては声が大きすぎる。

彼女に会いに行ったは良いが、具合が悪くて散々な結果になった。
やはり気まずい思いを抱いて帰宅した。
帰ってみると、彼女からメールが入っていた。
「私の人生に、あなたがいる意味がよくわからない」
意味を考えてしまうのは、要するに「別れたい」ということだ。
別れる理由を考えるために、意味を探す。
だが、人が生きていくのに、さしたる意味はない。
意味を考えたくなる具体的な理由は、要するに「別に好きな男が出来た」ということだ。
この辺は、オレも放蕩のベテランなので、心の内はよく見える。

この彼女と別れるのは、これが初めてじゃない。
人生に関わるような縁ではないことは、最初からわかっている。
そこで、淡々と「今まで楽しかった」という内容のメールを書き、アドレスをすべて消去した。
もちろん、だからと言って、寂しくないわけじゃないが。

次の日、目が醒めてみると、いつになく爽快な気分だ。
「ありゃ。今日は調子が良いな。なんでだろ」
心臓に持病があり、他にも肝臓や腎臓の機能が低下しているのに。

ああ、なるほど。1つの問題が無くなることは、2つ無くなることだ。
妻に対して、その彼女に対して後ろめたい気持ちがあったのが、両方とも消滅してくれたわけだ。
好きだった女性と別れた直後なのに、「気分が良い」とは、本当に人の心はわからない。

もっと、不思議なこともある。
数日後、病院で検査を受けたら、数値が著しく改善されていたのだ。
腎臓の機能も、驚くほど改善されていた。
「普通は考えられない事態です。何がありました?」と、医師が首をひねる。

でも、オレ自身は分かっている。
別れを境に、総てのことが好転し始めたからだ。
体のことだけではない。
すぐに新しい仕事が入った。
予期せぬお金が入って来た。しかも結構な大金だ。

思い返せば、再会の時から一貫して、「関わっても良いことはないから、やめておけ」と言われていたのだ。
これはもちろん、モラルの問題ではない。
オレには道徳心が無いので、何をしても良心は痛まない。
もともと、道徳は生きている人間が作ったもので、霊の世界とは関係が無い。
ルールは違うが、しかし、どこか「やってはならないこと」に踏み込んでいたのだろう。

例えば、オレの近くにいる霊が、彼女(もしくはその回り)のことを「嫌いだ」というケース。
または、その彼女に取り憑いているヤツが「自分たちに近づくな」と言っているケースだ。
オレはずっと、オレ側の問題だと思っていたが、その後の経過を見ると、どうやら相手に関わることらしい。「気を付けろ」と言うべきかもしれないが、もはや通りすがりの人と同じ存在だ。
ひとつ物事を決めると、オレは徹底的にやり通す性格なので、彼女の個人情報は完全に消去してある。

この半年は「自分はすぐに死ぬかも」と思ってきた。
だが、彼女と別れた次の日から、そんな気分は微塵も無くなった。
長生きはしないだろうが、オレが死ぬのは、明日でも来週のことでもなさそうだ。
半年先どうなっているかはわからないが、少なくとも今日や明日ではないのだ。

ここで覚醒。

似たような経験があり、夢で記憶を整理した模様です。