日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第216夜 山荘にて

朝まで起きており、昼前に仮眠を取った時に見た短い夢です。

別荘を買いました。
山の上にある家で、広めの4LDKなのに、たった百万円です。
元の持ち主に会い、直接、お金を払いました。

「広くてきれいな山荘なのに、どうしてこんなに安く売るんですか?」
そう尋ねると、アラ50くらいの持ち主(女性)は、わずかにほほ笑んで答えます。
「夫が死に、もう来られなくなったので売りたいのです」

(それでも、下の道の脇に看板を立てて「売ります」はないよな。業者を間に立てれば、5倍は固そうです。でも、本人が売ると言ってるんだから、ま、良いか。)
この辺は、明らかにお買い得物件なので、短絡的な思考をしてしまいます。

高原の小山の上にあるこの別荘は、すこぶる良い設備でした。
やや古めの洋館ですが、なんと調度類も質の高いものが置いてあります。
「信じられん。これをたった百万で売る人がいるのか」
こりゃ、友だちを呼んでパーティをしなくちゃね。

ひとまず、1人で泊まってみることにしました。
暖炉に火を入れて、ゆっくりとくつろぎます。
燃える炎を眺めているうちに、座ったまま寝入ってしまいました。

なにやら人の声がして目覚めます。
壁の時計を見ると、深夜の2時過ぎでした。
「こんな時間に何だろう?」
人の声は1人2人ではなく、数十人はいそうです。
この山荘の周囲を取り囲むようにして、大勢の人が立っているような気配がします。

ドアを開けて外に出ようかとも思いますが、いちいち挨拶をするのも面倒です。
外の様子だけ確かめればよいので、階段を中2階まで上がり、窓から外を眺めてみました。
すると、実際にこの家の周りには大勢の人がいました。
集まっているというわけではなく、皆が家を避けるように、一方向に歩いているのです。
全員がまさに「流れるように」歩いています。

なんだこりゃ。
この時間帯に、こんな大勢の人が、一体どこに行こうと言うのでしょう。
一瞬、「こいつらは宗教団体か何か?」と思いました。

すると、今度はその人たちの声が届き始めました。
「俺はそんなつもりはなかったんだよ」
「どうしてこうなるんだろう」
ぶつぶつと悩みごとや、恨みつらみを口にしています。
大勢なので、がやがやとうるさく聞こえますが、話をしているわけではなく、ひとり1人の独り言が重なっているだけでした。

(これは前にもあったよな。)
ふう、とため息をつきます。
家の周りを流れて行く人たちは、この世の人間ではなく、死んでもあの世に行けない人たちです。
己の妄執にとらわれているので、歩きながら、恨みつらみを述べ立てているのです。
たくさんの人が歩いていますが、お互いに隣に同じような霊がいるのに気づきません。

(なるほど。ここはそういう霊たちの通り道だったわけね。)
この家の前の持ち主が、幾らでも良いから早く手放そうとした理由はそれでした。
私は幽霊のことは平気な性質ですが、ここまで煩くては、さすがに夜中に寝られません。
「道に看板が立ったままだった筈だから、そのまま立てて置き、早く売ってしまおう」
そういう風に心に決め、ティッシュで耳栓をしました。

ここで覚醒。

幽霊ががやがや騒ぐ声は何度も耳にしたことがあります。
その時の煩さを思い出したのだろうと思います。