日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第215夜 海岸のテラスで

夕食の後、気づかぬうちに寝入っていました。
これはその時に見た短い夢です。

目を開くと、私は椅子に座っていました。
どこか海の見える場所で、家の前に木造のテラスがこしらえてあります。
そのテラスの中央にテーブルがあり、そのテーブルの上に両手を置いて座っていたのです。

「ねえ君」
声のした左側を向くと、60歳くらいの男の人が、私と同じように座っていました。
髪はすっかり白髪ですが、精悍な表情をしています。
「君がここで暮らすようになってから、もう三月だな」
「はい」
ここで、私は自分の境遇を思い出しました。
私はこの家の前の砂浜に流れ着き、この家の主人に助けてもらったのです。
なぜここに漂着したのかは憶えていません。
それまでの記憶をすっかり失くしていたのです。

「ここは悪くないだろ」
悪くないどころか、理想的な暮らしです。
穏やかな気候の中で、毎日、釣りをしたり、散歩したりするのが日課なのですから。

パタパタという音に、山の手のほうを向くと、若い女性が洗濯物を干しているところでした。
あれは隣に座る主人の娘です。
その娘は、薄いワンピースを着ていたので、体の線が見えていました。
今風のがりがりのモデル体型ではなく、全体的に線がやわらかで、腰のくびれもなだらかです。
(お尻とか、さぞきれいだろうな。)
しかし、3か月の間、この家で暮らしていますが、その娘にはまだ会ったことがありません。
かなりの恥ずかしがり屋だという話ですが、それだけではない秘密があるようです。

「君がもし良かったら」
主人が話を続けます。
「ずっとここにいてもらってもいいんだよ」
この海岸の上のほうには、広大な果樹園が広がっており、この主人はその果樹園全部の持ち主です。
仕事と言えは、時々その果樹園を見回るくらいで、後は海を眺めて暮らしているのです。
(もう少し若かったら、ここは退屈に思えるかもしれないが、きっとオレはもう30台の後半だろうし、このままここでずっと暮らすのも悪くないかも。)
「もちろん、娘と連れ合いになって欲しい、という意味なんだが・・・」
言葉に釣られ、もう一度その娘のほうを向くと、その娘は先ほどと同じように、こちらに背中を向け、洗濯物を干しています。
栗色の長い髪が潮風になびき、背中が少しだけ見えます。
小さなほくろ1つ見つけられそうにない、真っ白な肌です。

「でも、君が昔のことを思い出したら、きっと帰りたいと言うことだろう」
すぐさま「そんなことはないです」と答えたいのですが、餌を与えられた犬のような振る舞いのような気がして、じっと黙っています。
「それに、娘は大きな問題を抱えているから、ちょっと無理な相談だったかもしれんね」
「問題ですか?何かお困りのことでも?」
私自身のことより、あの娘のことのほうが気にかかります。

「娘が君の前に現れないのは、出ることができないからなんだよ。それを知れば、きっと君もここを去って行くことだろう」
「一体どういうことなんですか?」
私の頭の中では、色んな想像が湧きあがって来ています。ああ見えてもその娘には重い病気がある、とか、昔は素行がかなり悪かった、とかです。

主人はひと呼吸置いて、話を続けます。
「私の娘はね。体の半分が魚なんだよ」
え?
体の半分が魚。それって、人魚ってこと?
あまりに突拍子のないことなので、声が出ません。

しかし、先ほどから眺めている後ろ姿は、完全に人間のもので、完璧に近い美女です。
ここで、頭の中では別の想像が湧いてきました。
「半分が魚」の意味には、ふた通りあります。
上が人間で下半身が魚だと、これは人魚。言葉の順番の通りです。
しかし、その逆の配置だと、すなわち下が人間で上が魚だと、これは「半魚人」です。
あの見事な体のラインの上に、魚の頭が付いていたりして・・・。

(鯛ならともかく、鯉じゃあ嫌だよな。泥臭くて。)
その場の状況にそぐわない変な想像をしてしまいました。
顔を上げると、主人が私の内心の気持ちをはかるように、じっと私の顔を覗き込んでいます。

ここで覚醒。

文字には落としませんでしたが、遠くから娘の後ろ姿を眺めた時に、少なからずエッチな想像をしましたので、半魚人のイメージを抱いた時にはショックでした。
この夢にいったいどういう意味があるのか、まったく想像できません。