日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第217夜 広い部屋の中で

夢の中で、自分自身に気がついてみると、私は広い部屋の中央に独りで立っていました。
50叩20辰らいの広い部屋です。
天井も高く、普通の家の2階より上にあります。

「ここはどこだよ」
殺風景な一室で、がらんとしています。
壁はコンクリートではなく、大理石みたいな冷たい光を放っていました。

たまに神殿みたいな建物の中にいることがありますが、一体ここはどこでしょう。
頭の中でそう考えると、突然、背後から声が聞こえました。
「ここはね」
その声に振り向くと、男が1人ごく間近にいました。
「いつの間に・・・」
アラ50位の風貌のその男は、くすっと笑います。
「ずっと前から、私はここにいたんだよ」

うそ!人の気配なんてしなかったぞ。
「さっきの話の続きだけど」
「はい?」
「ここはお前の住む世界そのものだ」
(なんだ。抽象的な話かよ。つまらん。)
「いや、想念の話ではないぞ。ここはお前にとって、あるいは総ての人間にとって、世界そのものなのだ」
「プ-ル1つ分の広さしかない部屋が、人類を取り囲む世界の総てだなんて、話にならんですよ。だいたい、ここには何ひとつないじゃないか。我々2人の他には誰もいない。すなわち、あんたの言っていることは例え話だってことでしょ」
「はは。あると思えばあるし、ないと思えばないのだ」
「じゃあ、地球を含めもろもろの恒星惑星など物的な存在や、人類が作り上げてきた思念の蓄積、すなわち歴史なんかも、この部屋の中にあるわけ?ここには何もないじゃん」
「大した違いはないだろ」
「こんな部屋じゃあ、500人も入れば一杯だよ。それ以前に、空っぽなわけだし」

男の表情には「コイツ。しょうがないなあ」と思っているのがアリアリと出ていました。
「だから、いつも言ってるだろ。こだわりを持つから存在しているように見える・思えるが、ないと思えばないんだよ。世界ってのは、そんなもんだよ」
「いつもって、私とあんたは初対面じゃないのかよ」
「時々、お前のほうがフラフラと来ているだろ。勝手に入り込んでいるくせに、『ここはどこ?』と大仰に騒ぐのも、いつも通りだ。そろそろいい加減に学べよな」
だんだん男の言葉遣いが乱暴になって来ました。

(そう言えば、何度かここに来たことがあるなあ。)
改めて男に言われてみると、かすかに記憶があるような気がします。
その都度かたちは違いますが、しかし、同じ場所です。
「だろ?」
(コイツ。人の考えていることを読むと言う妖怪か。確かサトリとか言ったな。)
「いいや。妖怪ではない」
「じゃあ、何だよ」
「私はお前たちの言葉で言えば、神あるいは仏、みたいなものだ」
「おいおい。自分のことを神や仏と見なすのは、詐欺師か狂人だろ。霊感師とか指導者も同じだが、ただの妄想家に過ぎない」
男は小さく頷きました。
「そう。お前の知るすべての神や仏。それと、分かったようなことを言うような輩は全部ニセモノ。本人が妄想を抱いているだけだ」
「あんたもそうだろ」
「いや、私の場合、全部実証出来るんだよ。ほれ、この部屋はこの通り、広いと思えば広くなる」

男が言葉を言い終わるかどうかの時に、一瞬にして、周りは宇宙空間に変わりました。
星のいくつかが生まれては、次々に消えて行きます。

「過去や現在、未来も同じで、あると思えばあるし、ないと思えばない。お前だって、確かめられるのは『今』があることだけだろ。私らクラスだと、『今』もあやふやだってことを知っているし、変えられるんだよ」
ここで、ぎゅうっと体が落下していき、ある惑星の表面に落ちて行きます。

地表の大半は密林で覆われており、ところどころに火山が口を開けていました。
その地面に降り立ちました。
程なく背後からどこどこと足音が聞こえます。
振り返ってみると、駆け寄ってきたのは、なんと恐竜でした。
「うひゃあ。マジかよ」

男がにやっと笑います。
「スゲーだろ。でも、大きく見えても、こいつらが生きた時とお前たちの時とは、重力が違うから。こいつら自身の体感は、お前たちで言えば60キロの体の感覚と変わらない」
「なるほど。同じ重力で、15トンもある体だったら、立って歩けるわけがないや」
「お前たちを悩ませてやろうと思って、そういうように変えてやった。要は遊び心だ」
(退屈しのぎだったってことだな。)
「そう。そう言っても良い」

「人類どころか、宇宙の総てが退屈しのぎだったわけなの?」
私の問いに、男は再び笑います。
「だって、こんな部屋の中にいるんじゃあ、何か遊びが必要だろ。そうだよね」
「外の世界があると思えば、存在するようになるんじゃないの?ここから出れば良いじゃん」
そこで男は首を左右に振りました。
「そりゃ、駄目だよ。私にはまだ許されていない」
「許されていないって、神さまなんだし何でも出来るでしょ」
「いや」
男がもう一度首を振ります。
「僕は子供だから、好き勝手は出来ないんだ。僕はまだ5千億歳にもなっていないんだから」

ここで覚醒。
神さまの口ぶりは、人間の子どもが「ボクは5歳」と言うのにそっくりでした。