◎夢の話 第686夜 悪霊が妻に化ける
15日の午前2時に観た夢です。
ドアを開いて家の中に入る。
今は深夜で、家の者は皆寝静まっているようだ。
居間に入ると、長椅子2つのそれぞれに人が寝ていた。
「そうか。今は人が沢山来てるんだったな」
この家の中には、少なくとも7、8人が寝泊りしているはずだ。
腰を下ろしたいが、座る場所がない。
たぶん、俺のベッドも誰かが使っているだろうと思う。
人の気配がして、誰かが階段を下りて来た。
寝巻きを着た女が居間に入って来る。
「コイツは俺の女房のような気がするが、女房はこんな寝巻きなんか着ないよな」
女は俺のことを認めると、険しい表情で俺に詰め寄る。
「今までどこに行っていたの?私を放って置いたまま」
「仕事で遅くなったんだよ」
よく思い出せないが、たぶんそうだ。その後で、飲みに行ったかもしれんが、記憶がおぼろげになっている。
「嘘をおっしゃい。一体誰と会ったの?どこの女?」
おいおい。さすがにそれは無いだろう。
俺はオヤジジイだし、もはや色恋沙汰は面倒臭くなっている。
「女なんかとは会っていないよ」
「じゃあ、誰?」
うーん。思い出せない。
すると、女は勝ち誇ったような表情をした。
「ほら言えないでしょう。あんたは外で何をやっているか分からない。お陰で私は苦労のし通しだ。見てごらんよ。この家にはこんなに人がいる。この人たちの面倒を見るのは本当に大変だ。それなのに、あんたは自分だけ外に出かけては、たっぷり遊んで来る。あたしゃあ、許さないよ」
さすがに、こんな女の言い回しに、俺も気が付いた。
「おい。『あんた』『あたしゃあ』って言い方を、俺の女房はしないね。女房は外人だからな。お前は俺の女房のふりをしているが、実は女房じゃないんだな。お前は一体誰だよ」
「何を言ってるの。とんでもない話だ。自分の不始末を棚に上げて、この期に及び、私のことを疑うのかあ」
女が激高して、声高になる。
すると、あちこちで横になっていた者たちが、体を起こした。
「煩いなあ。こんな夜中に、一体誰だよ」
「ああ。眠い」
男も女もいる。差し当たって、この部屋には5、6人がいたらしい。
ゴトゴトと家の各所から物音が聞こえる。
家の中に15人か20人くらいがいるような気がするぞ。
すると、一人の女が立ち上がり、すかさず叫んだ。
「あんたたちは誰?何故ここにいるの?」
男が言い返す。
「そういうお前は誰だ。何故俺の家にいるんだ」
その途端に、男女が言い争いを始めた。
どうやら、同じ家族じゃないばかりか、互いに見知らぬ間柄らしい。
おまけに、各々が「ここは自分の家」だと思っている。
俺はここで、俺の女房みたいな外見をしている女に向き直った。
「おい。お前は何者だ。俺の家を乗っ取ろうとしているのか」
女はじっと俺のことを見詰める。
「え。何を言うの。ここは私の家だよ」
目の光り方を見ると、この女は本当にそれを信じ込んでいるらしい。
さらに俺はここで気がつく。
「どうやら、こいつは夢の中だな。家は俺の体、俺という人間の象徴だ。そこに色んなヤツが入り込んで、めいめいが『ここは自分の家だ』と思っている」
そして、この家の中に、自分の居場所を確保しようと考えているのだ。
「しかも、自分が本来は外の者だってことに、気付いていない」
すなわち、不浄の霊たちが、俺の中に入り込んでいるということだ。
口には出していないのだが、この俺の考えが相手にも伝わったらしい。
俺の前の女房みたいな姿をした女が、ここで初めて疑問を覚えたのか、ほんの少し小首を傾げた。
「え。じゃあ、私は誰なの。お前はこの俺を一体、何だと言うのだ」
ここで覚醒。
夢の中に出て来る最初の「異性」は、実は「自分自身の本心」であることが多いのですが、この夢では違います。何故なら、家人そっくりな風貌をしていますが、こいつは男が化けたものだからです。
また、幽霊は心の中が姿かたちに現われますので、顔のかたちが一秒ごとに一変しました。