◎夢の話 第948夜 スタンドで
四月五日の午後11時に観た短い夢です。
スタンドでガソリンを入れ終わり、そのまま座って女房を待っている。女房はトイレに行っていた。
すると、コツンと車のお尻にぶつかる音がした。
振り返ると、大型のベンツで、車はそのまま立ち去ろうとする。
「コイツ」
急発進してバックし、そのベンツにがっしゃり激突させた。
すると赤ら顔のでかい男が出て来た。
「おい。何すんだ」
「何すんだも何も、人の車に当てたのに、そのまま行こうとするからだろ」
「何だとおう」
男が怒った顔で前に出て来る。
「俺のことを誰だと」
男が叫ぶ途中で、横から足が飛んで来て、男の顔を蹴った。
ぐしゃらっと男がひっくり返る。
横を見ると、男を蹴ったのは女房だった。
「きれいな回し蹴りだな。いつ練習していたんだよ」
俺の方も後ろ腰にスパナを隠していたから、それで男の頭をぐしゃらっと潰した。
「自分が誰か知ってるか、なんて、俺が最も嫌う言い回しだ。それが誰であってもだ」
「さてどうしよう」
もちろん、ベンツと男と男と女の関係のことだ。
「スタンドだからカメラが付いてるよ」
「それなら、最初の件から映ってるだろうな」
最初はこちらが被害者だったんだよな。
警察でそのことを証言している自分の姿が思い浮かんだ。
「でも、知り合いだったヤクザ上りのAさんは、不良とトラブったら再起不能にした方が早いと言ってたっけな。後腐れが生じないようにだ。素人が不良を殺しても大した罪にはならない」
十秒ほど考える。
俺は腹を決め、女房に伝えた。
「お前はウチの車で家に帰れ。俺はスタンドごとコイツを焼いてくから」
カメラも何も関係ねーや。コイツはどうしても気に入らない。
ここで覚醒。
目覚めた瞬間、エレベーターの中で「背後に立った男」が今も間近にいるのを悟った。
実際、ささいな運転の仕方で、前を走る車を煽り倒してやりたくなる。
「ぶつけろ」「コロしてやれ」という声まで聞こえる。
俺みたいな者がうっかり「悪縁を拾う」とこんな風になる。
逆上しないように気を付ける必要があるが、まだ「男」を追い払うつもりはない。
何が起きるかをぎりぎりまで観察するためだ。
ちなみに、俺の本体は「夢の中に最初に出て来る異性」だから、「女房」ということになるが、夢の「女房」は俺より先に男を蹴り倒していた。基本は短気だということだ。
最近、ささいなきっかけで暴力を発露する事件が起きるが、コロナのストレスの他に「背後の何かに扇動される」というケースがあるのかもしれぬ。
きっと心を支配され、自分では止められなくなっている。