日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話 第1133夜 たそがれ

◎夢の話 第1133夜 たそがれ

 五月六日の午前四時に観た夢です。

 

 当家の駐車場は家から五十㍍離れたところにある。家の前にも駐車スペースはあるが、息子が車に乗るようになった時のことを考え、こちらは空けてある。現状で家の前には妻が生けた鉢植えが二十個も並んでいる。

 家から離れた方の駐車場は、小山を崩して作った平地の奥にあるが、方向転換が可能なように車が三台入れる広さの余裕を持たせてある。よって、そこに車を置いても、その他に八畳くらいの空きスペースが出来ていた。

 この日、駐車場に歩み寄ると、端の方に一匹のリスが立っていた。低い草叢の中に後足二本で立ち上がっていたのだ。

 俺が近寄っても、リスは微動だにせず、どこか一点を見詰めている。

 「何だろ。弱ってでもいるのか」

 具合が悪く、じっとしているのかもしれん。

 そのまま死なれるのは嫌だが、苦し気な表情でもない。リスはただ上の方を見上げてじっとしていた。

 「ま、とりあえず静観するか」

 少し時間が経てば、この場を去るかもしれん。

 所用を済ませ、再び駐車場に戻ると、リイスが二匹に増えていた。奇異に思ったが、車を停めるのに影響のない草叢の中なので、この日はそのまま家に戻った。

 

 翌日、再び駐車場に行くと、リスが三匹に増え、その隣に猫がいた。猫はリスのように立ち上がってはいなかったが、やはり上を見上げてじっとしている。

 その様子がいかにも不自然なので、俺はスマホでそれを動画撮影した。

 家に戻り、妻にそれを見せた。

 「ほら、何だかおかしなことになっているんだよ」

 妻は動画をインスタに上げるのが道楽で、主に鉄道や車の動画を上げているが、他にも目に付いたものについてジャンルを問わず公開している。

 「じゃあ、私も撮影するね」

 妻はカメラを持って、出て行った。

 

 妻は程なく戻って来たが、着くなり、「何だかすごいことになってるわよ」と俺に告げた。

 「猫や犬、リスが十匹以上集まって空を見てるよ」

 うーん。どんどん増えているわけか。

 スペースに余裕があると言っても、このまま増えたら、車を入れる時に轢いてしまうかもしれん。

 俺は車を家の前の駐車場に移すことにした。

 

 翌日になり、遠くの駐車場を見に行くと、犬猫、リスに加えて、狸が計三十匹もいて、皆が空を見上げていた。

 ここで俺は初めて、「こいつらは一体何を見ているのだろう」と疑問に思った。

 総ての動物が同じ方向を見上げていたのだ。

 そこで、動物たちの視線の先を追ってみると、大空の一点に視線が集中していることに気付いた。

 「あそこに何があるというのだろう」

 だが、そこに見えるのは青空だけで、俺の眼には何ひとつ見えなかった。

 飛行機が飛んでいるわけでも、太陽や月、惑星が見えるわけでもない。

 太陽の軌道に沿う位置でもないのだ。

 だが、この「太陽の軌道」という言葉でパッと閃く。

 「今はあの位置に太陽は来ないが、もう幾日かすると、あの位置を太陽が通る」

 概ね四日くらい後の「午後四時過ぎ」にあの位置に太陽が差し掛かる。

 「もしかすると、あいつらが見ているのは、空でも太陽でもなくその時(時刻)なのかもしれん」

 四日後の午後四時という時点を見ているのかもしれんのだ。

 

 家に戻ると、妻が興奮して俺を迎えた。

 「動画をアップしたら、もの凄い反響があったよ。同じことが色んなところで起きているらしい」

 マジかあ。

 俺は急いでPCの前に座り、動物について検索してみた。

 すると、この国のあちこちだけでなく、世界中で同じことが起きていた。

 殆どの動画では「原因不明」とされている。

 俺の駐車場では、それが太陽の軌道上の一点に合致すると分かったが、地球は丸いから、この地点での「四日後の午後四時」が夜中にあたる場所もあるわけだ。

 半ばパニックになりかかっている者もいいたから、俺は俺なりの見解をネットで配信した。

 「たぶん、これは地点ではなく時点を見ているのではないかと思う」

 その時、何かが現れるか、起きるかする。

 

 ここで俺の心の中に、陳腐な言い方だが、「黒雲のように」不安が広がった。

 なるほど、「来るべきこの時に何かが起きる」と考えるのがまともな筋だ。

 動物たちは事前にそれを知り、その時が来るのをじっと待っているのだった。

 「だがそれって、絶対に良い出来事ではなさそうだ」

 

 たぶん、この世の終りが間近に迫っている。

 ここで覚醒。