日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話 第962夜 息子が溺れる

◎夢の話 第962夜 息子が溺れる

 二十一日の午前四時に観た短い夢です。

 

 我に返ると、「俺」は家の居間の長椅子に座っていた。膝の上に一歳くらいの女児を乗せている。

 (夢の中の「俺」は夢を観ている私とは別人格だ。「俺」は三十代の半ばで、妻と三歳の長男、一歳の長女がいる。妻はこれまで見たことのない女だった。)

 この時、妻は周囲にはいなかったから、たぶん、息子と一緒に風呂にでも入っているのだろう。

 

 そこに、その妻が入って来た。

 頭にタオルを巻いているから、やはり風呂だったか。

 「マサルはどこ?」

 「何処って、お前が一緒だったんだろ」

 「え。電話が来たから、私は脱衣所から先に出たけど」

 「どれくらい前?」

 「三十分くらい前かな。友だちから連絡があったから、少し話をした」

 「それじゃあ、おかしいだろ。見に行かなきゃ」

 すぐに立ち上がり、風呂場に行った。

 息子は湯舟の中、おもちゃのヨットで遊ぶのが好きだから、もう一度、浴槽に戻ったのかもしれん。

 風呂場に行くと、しかし、息子の姿が無い。

 この家の浴槽は、昔風に底が深いタイプだから、念のため、中を覗き込む。

 すると、湯船の底に息子が沈んでいた。

 「わ。大変だ」

 すぐに息子を引き上げる。

 お湯の中に沈んでいたから、たぶん、水を飲み込んでもいるだろう。

 そこで、最初に息子を自分の肩の上に乗せ、逆さまにした。

 息子の口からお湯がだらだらと流れ落ちる。

 次に息子を床に寝かせ、心臓マッサージを施した。

 どうやら、沈んで間も無くのことだったらしく、一分ほどで息子は息を吹き返した。

 「ああ良かった。息を吹き返してくれた」

 

 ここで妻を見上げ、叱責する。

 「お前、一体何をやっているんだ」

 すると妻が言い返す。

 「あなたこそ、マサルが戻ってこないのにどうして気付かないの」

 「気付かないの」と言われたって、俺はこの世界ではさっき目覚めたばかりだ。

 「とにかく、マサルが生きていてくれて本当によかった」

 

 息子の体を丁寧にバスタオルで拭き、下着を穿かせる。

 「マサル。父さんは心の底から心配したぞ。もう一人になるなよな」

 息子を抱き上げ、脱衣所の外に出た。

 廊下を横断し、今に向かおうとした時、廊下の端の二階への階段のところで、白い服の裾と脚の先が見えた。

 「妻が二階に何か取りに行ったのだろう」と考え、居間に入る。

 すると、妻はそこにいた。

 

 「お前。ずっとここにいたのか?」

 「うん。マサルに何か飲ませようと思って」

 じゃあ、さっきの白いスカートと足は誰なの?

 俺の家には妻子三人しかいないのに。

 ここで覚醒。

 

 この家には、部屋と言わず廊下と言わず、いたるところに鏡が架けてあった。

 なるほど、前々からおかしな出来事が起きていた、ということだ。

 夢の中の「俺」の息子が風呂で溺れかかったのは、これが二度目だった。

 

 咄嗟に「じゃあ、本来の私の息子は?」と寝ぼけ頭で考えたが、私の息子は既に大人になっていた。だが、親の意識では、三歳の時と変わらないから、少しく焦った。