◎夢の話 第998夜 白い少女
三日の午前三時に観た夢です。
目を覚ますと、病棟のベッドに寝ていた。
半身を起こす。
すると右隣のベッドに、白い入院着か着物を着た少女が座っていた。
小学生のような顎までの流さのショートだから、「少女」と思い込んだのかもしれん。
普段、右隣はアラ四十くらいの女性患者なのだが、今日は別の病院に行ったか。
「こんにちは」と挨拶をする。
少女が小さく頷き返した。
少女の顔には、右眼の下に大きな赤い痣があった。
(ああ。これは確か、若い人に出る内臓の病気で、その病気の影響で顔や体に痣が出るんだったな。まだ子どもだろうに、可哀想なことだ。)
座っているからよく分からぬが、身長が百五十㌢に届くかどうかだろうから、十歳から十三歳くらいか。
まだ子どもなのに、戦うのが人生ではなくて自分の身体の病気だ。
だが、その子の顔をチラ見すると、顔はつるんとしているのだが、どことなく中年女性のようにも見える。
時々、どういうわけか年を取らぬ人がいて、外見が若い頃と変わらない。
目じりにほんの僅かなしわが出来る程度の違いだったりする。
少し我慢していたが、やっぱり訊いてみることをした。
「ごめんね。失礼な話だとは思うが、ちょっと訊いてもいいかな。俺にはあなたが少女に見えるのだが、本当はお幾つくらいなの?」
少女は答えを返さず、俺に向かって小さく微笑んだ。
人間は体の周囲に目に見えぬ光や熱のエネルギーを発しているが、それがまったく無い。
う。この感じは・・・。
「それとも、あなたはもう死んでる人?」
この瞬間、急に眩暈がしてベッドに仰向けになった。
天井がくるくると回る。
気落ちが悪いぞ。あと少しで吐き気がしそう。
俺は目を瞑った。
俺はそのまま眠っていたらしい。
再び目覚めると、どこか知らぬマンションの一室の中だった。
妻と息子が部屋の反対側にいる。
「おお。ここはどこだ?」
妻が答える。
「寝ぼけてるの?このマンションに引っ越そうと考えて、見に来たんじゃないの。見本部屋に一泊していいっていうから、今日はここに泊まってみるのよ」
じゃあ、「ほとんど買うことになっている」という話だ。
起き上がって窓に近づき、外を見る。
この部屋は二階だったが、俺たち家族が住むのは三階になるらしい。
外には広い庭園が広がっていた。
「こいつはスゴイじゃないか」
建物の裏は、すぐ間際まで池だった。
人工の池というより、元々は大きな川の一部だったのを整えて池に見えるように直したのだ。
ここで「ピンポーン」とチャイムが鳴る。
玄関に出てみると、母と叔母たちだった。
「どんなところに引っ越すのか、見に来ました」
気が早い。まだ金も払っていないのに。
母たちを案内し、建物の周囲をひと回りした。
叔母が「贅沢なつくりだねえ」と呟く。
裏の池に回ると、池の端は五㍍くらいの崖になっていた。
「ここは流れが氾濫したら、流されてしまわないかしら」
「でも、ここは池だから水が押し寄せるなんてことは」
と言い掛けて、「この池は本来、外の川に繋がっている」ことを思い出した。
あれあれ。形勢が芳しくなくなったぞ。
ここで地面がぐらぐらと揺れ始める。
「地震だ。かなり強いぞ」
犬が吠え、木々が揺れた。
すると、俺たちの見ている前で、目の前の崖が崩れ始める。
マンションの建物は、そこから僅か十㍍だった。
自身はすぐに収まったが、崖はぐずぐずと土が崩れて続けていた。
「ここ、ダメじゃんか。いずれ建物まで地盤が崩れる」
基礎工事から見直す必要がありそうだから、ま、俺たちは「契約しない」ということになりそうだ。
何気なく池の向こう岸に目を遣ると、そこには白い着物を着た少女がぽつんと一人で立っていた。
ここで覚醒。
状況的に致し方無いが調子の悪さが歴然だ。「建物」は「体」の象徴だから、「自分の居る建物が壊れる」のは、「体調を崩す」ということになる。ま、老病死は必然で、私の場合は徐々に最後に向かって進行しつつある。
「白い着物」は、私に「何かのメッセージがある」ことを示唆するものだ。「最初に出て来た異性」は、自我の変化したものだから、私の潜在意識が何かを伝えようとしているということなのか。
昨年頃から、視界の隅に「白い着物の女性」が入るようになった。画像の中にも時々いる。
夢の少女が「潜在意識」ではなく別のものなら、ちょっとややこしい事態になる。
目覚めると、隣の部屋で息子が夢にうなされていた。
神棚は息子の居る部屋にあるから、お神酒を替え、柏手を軽く叩いた。
その音が聞こえるから、息子の悪夢をさりげなく中断できると思う。
息子にも程なく声が聞こえるようになる。もちろん、誰の耳にも響いているが、それを上手く認識できないだけだ。