日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第684夜 女

夢の話 第684夜 女
 6日の午前4時に観た夢です。

 瞼を開くと、そこはマンションらしき部屋の中だった。
 ここがどこで、自分は何者なのかということは、まだまったく分からない。
 「疲れるなあ。まずは自分の名前を思い出すことからか」
 部屋は1階にあり、入り口がガラス張りなので、おそらく元は店だったところを買って住居にしているのだろう。
 ボケッとガラス戸の向こうを眺めていると、外に人影が見える。
 ちらちらとこっちの部屋の中を覗きこむような仕草をしていた。

 「何だろ」
 玄関のガラス扉を開き、外を確かめると、まるで「待ってました」と言わんばかりに、人が現われた。
 そこにいたのは女で、俺よりもたぶん年上だ。
 「どうしているのかと思って、来てみたの」
 え。このひとは誰だろ。
 俺が怪訝そうな顔をしているのを知ると、女は俺の部屋に入って来ようとする。
 「最近、なかなか会えないから」
 俺は慌てて、自分の体で入り口を塞いだ。
 「ちょっとちょっと。いきなり何?」
 すると、女の右の眉が少し吊り上がった。
 「やっぱり私は遊びだったのね。中には奥さんがいるんでしょ」
 女は部屋の中に入ろうと、俺の体に手を掛けた。

 ここで俺は状況を思い出した。
 俺は33歳だが、まだ独身だ。名前は川合だか川村と言う。
 建設関係の仕事をしていて、売買契約を取りまとめるのが俺の務めだ。会社の中の司法書士みたいな役割だな。
 その俺がどこかでこの女と付き合うようになったが、4回目に会った頃から次第に重荷になって来た。
 最初に聞いていたより齢がかなり上だし、色々と嘘が多い。
 ま、女の嘘にいちいち目くじらを立てていたら、身が持たないわけだが、すっかりその気が失せてしまったのだ。
 そういう気配は相手にも伝わるから、女は「去ろうとしている男」を引き寄せられないかと考え、家に乗り込んできたわけだ。
 すなわち、痴話げんかというヤツだ。

「俺は今、ものすごく忙しいんだよ」
 それは事実で、俺が契約を取った相手の会社が傾いていることが分かったので、その処理に追われていた。女どころではない。
 すると、何時の間にか、女の後ろから二人の女が出て来た。
 「やっぱり。あんたは遊びだったんだ。ミサキさん、こいつはやっぱり嘘つきだよ」
 二人は双子のようにそっくりな容姿をしている。米国のプロレス団体にいるアイコニックスという二人組にそっくりだ。小悪党で、やいのやいのと騒ぐお囃子隊だ。
 実在のアイコニックスは嫌いではないのだが、この場合は別だ。
 男に会いに来るのに、手下を連れて来るような女だと分かると、さらに気が萎える。

 とりあえず、俺の前にいる女が「ミサキ」という名だということが分かった。
 外人ぽいルックスなのに、たぶん、日本人なんだな。
 ここで、俺の中いる別の人格が頭をもたげて来る。
 「そう言えば、この女は、これまで付き合って、別れた女たちに少しずつ似ている
 あれれ。この考えは「俺」の考えじゃないぞ。
 色んなことにしくじってばかりいるオヤジジイ、すなわち、起きている時の俺の考えだ。
 すると、しゅるしゅると夢の中の人格が小さくなり、夢を観ているほうの人格が大きくなった。
 「おいおい。面倒臭い状況になったからと言って、俺に預けるなよ」
 だが、33歳の俺の人格はすっかり陰に隠れ、この場に立っているのは、昼日中の俺に代わっていた。
 「俺は女心が分からない。だから散々失敗して来た。でも自分なりに誠意をもって接して来たつもりなんだがな」
 ここで目の前の女が口を開く。
 「何をぶつぶつ言ってるの?ここに私がいるんだから、きちんと話をしてよ」
 どうやら、俺は女たちを前にして、自分ひとりの世界に浸っていたらしい。

 埒があかないと思ったのか、女が俺を責め始めた。
 「大体、あなたは何をやっても中途半端で、何ひとつまともに出来たことがない。途中で何でも放り出す。だから、私のことも興味本位で、今は放り出そうとしている」
 本当だ。この女の指摘は正しい。俺は嘘つきで何ひとつやり遂げられないくだらない男だ。
 すると、女は嵩にかかって細かいことを言い始める。
 「あの時だって」「この時だって」
 すごいぞ。なぜ俺のことをそこまで知っているんだろ。

 ここで俺は思い出した。
 「なるほど。夢に出て来る最初の異性は、俺の本心がかたちを変えたものだ。すなわち、この女は俺自身で、俺は自分の人生を顧みて、反省しているわけだ」
 やりたいことをやり、好きなように生きて来たつもりで、俺の人生に後悔など無縁だと思って来たが、それでも自分の誤りや過ちは自分自身が良く知っている。
 そこで、もう一人の俺が現われて、俺を批判するわけだ。
 それなら納得だ。
 そう思った瞬間に、女たちがしゅっと消え去り、俺は町の中に独りで立っていた。
 ここで覚醒。

 自分自身のことは、自分が一番知っている。
 頭で情報を作り替えて、そうでない自分のイメージを前頭葉の前面に出しても、やはり本人は忘れていない。
 安倍総理もその奥さんも、時が過ぎ、総てを忘れた頃になってから、自分のついた嘘に責められるようになる。
 女や男の分身が現れて、「あんたは嘘つきだ」と言い立てることだろう。

 嘘をつかない人はおらず、後悔のない人生はない。