日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話 第1K40夜 新たなる旅の始まり

「今」の起点は四年前らしい。

夢の話 第1K40夜 新たなる旅の始まり

 五日の午前二時に観た短い夢です。

 

 我に返ると、俺は旅館の一室にいた。

 部屋の中には、ごちゃごちゃと物が散らばっている。

 「どうやらここに長居するようだな」

 何となく、自分はここで人生を終えるのだな、と感じる。

 だが、ここで俺は思い出した。

 「なんてこった。俺にはまだ行くところがあるじゃないか」

 具体的な場所のことは思い出せぬが、ま、出発すれば途中で思い出すだろ。

 ボストンバッグを引っ張り出し、荷物を詰め始める。

 ロッカーを開くと、フードの付いたでっかいオーバーと、女物の黒いレインコートが下がっていた。

 「これは俺んじゃないよな。誰のだろ」

 だが、途中で要るようになるかもしれん。

 レインコートは女房のにしては細身の人用だが、ま、いいか。

 結構な荷物だが、家族か友だちのかもしれん。

 出発すべく廊下に出ると、俺がいたのはやはり古びた温泉旅館だった。

 

 駅は割とすぐ近くで、見慣れた改札に駅員が立っていた。

 「げげ。ここじゃあ、まだ鋏で切符を切っているのか」

 ここで気が付く。

 「これは夢だな。俺は今、夢の世界にいるのだ」

 この駅も、さっきまでいた温泉旅館も、これまで散々、夢で観た世界のものだった。

 それじゃあ、自分がどこに行こうとしているのかも分からんわけだ。

 

 列車の席は空いていた。

 荷物を抱えていたが、上の網棚と隣の席に置けたので、不自由せずに済んだ。

 数分もしないうちに列車が出発する。

 俺は何とも言えぬ高揚感を覚えた。

 「やったな。俺にはまだ旅の続きがある」

 窓の外には、眩しい程の新緑が広がっている。

 ここで覚醒。

 

 夢の中の「建物」は肉体を意味する。古びた旅館は私自身の体だから、病気がちであちこちほころびている。旅館の中にいれば、そのうち建物が崩れるのを見ることになる。

 「自分が中にいる建物が崩れる」のは最大の凶夢で、滅びや死が傍まで来ていることを暗示するものだ。

 旅の夢はよく見るが、これは人生や時間を象徴するものだ。再び、旅に出る私には「まだ時間が残っている」ということで、要は今の病苦が多少なりとも改善に向かうことを暗示している。

 私のバッグには、「でかい男」と「細身の女」の服が入っている。

 この服はこれから旅を共にする者たちのものなのだが、「細身の女」は最近、正式に連れになった「黒い女」のものだろう。もはや私の一部だから、この女の持ち物を持って行く必要がある。

 では、「でっかい男物のオーバー」は何だろう?

 しばらく考えさせられたが、何のことはなく、アモンのものだった。コイツははるか昔から私と一緒にいるのだった。

 

 他の人には想像もつかぬだろうが、例えて言えば、私は「稲荷神社の前を通る時には数十メートル迂回して近寄らぬようにする」生活を送っている。これに類する禁則措置は沢山ある。

 このことを長らく「ハンデ」だと思っていたが、必ずしもそうではないようだ。

 何せ、私は自分がどれほど「あの世に近いか」を知ることが出来るし、それを眼で見て音で聞く。

 おまけに写真まで撮れてしまうから、信じるとか信じぬという次元の話ではない。

 「知る」ことは「手立てを打てる」ことだから、危機的状況を回避できる場合がある。

 今回は四か月は苦しんだと思うが、どうやら程なくその状況を脱する段階が来たようだ。

 心底より「良かった」と思う。

 どれほどの期間なのかは分からぬが、私の旅はまだ続く。ま、それが数日でも数か月でも、再び自らを顧みる機会が得られれば、如何程でも十分だ。

 

 そして、私はまた一段次の段階にシフトする。私の「今」は起点となる時点が分かっているが、その時からこれまで連続していた。だが、もはやそれも卒業で、次の段階に入るべき時が来たと思う。

 これまで続いた「今」は、何百回も夢に観た「亡者の群れ」を実際に画像に捉えた時点に始まった。

 これがその時の画像で、その場にいたのは私ひとりなのに、複数の人影が背後に連なっていた。

 その時はその状況を信じることが出来ず、散々に疑ったものだが、今では微塵も疑念はない。

 これからは、状況を統制する側に立つ。

 「アモン」や「黒い女」の見てくれは怖ろしいが、生きた者の考える善悪とは無縁の存在だ。あの世には善悪の考え方とは違う基準がある。

 「黒い女」は時々、幽霊を捉えているのだが、あれは迷っている者を「拾い上げている」のだった。

 これは同化を受け入れて、初めて理解できることだ。

 ひとまず、今後は「同行三人」ということ。

 

 ちなみに表現が「まるで新興宗教の人」だが、ある程度致し方ない(笑)。棺桶に両足を揃えて入り、小窓しか空いていない状態だった。

アモンと黒い女(イリス)