夕方、居間でうたた寝をした時に見た夢です。
眼を開くと、空を見上げていました。
私がいたのは高台の上で、そこには私だけではなく、数十人の村人がいます。
「すごい」
空に浮かんでいたのは、巨大な宇宙船でした。
「アダムスキー型って言ったっけかな」
でも、よく見ると、円形ではなく楕円形をしています。
長径のほうは、ざっと2キロはありそうです。
宇宙船はじっと空中に留まっています。
「いったい、何しにこの村に来たんだろうな」
フィリピンの島に移り住んで数年経ちますが、こういうことは初めてです。
この島は4キロ四方しかありませんので、島の上空は全体がその宇宙船で覆われたような状況です。
「あ。着陸船だ!」
宇宙船から、やや小さめの船が降りてきました。こちらは直径が30辰らいとかなり小ぶりです。
「森の方に下りるらしい」
島の中央は森ですが、そのちょうど真ん中に、ちょうどその船が停まれるくらいの広場があります。
皆で小走りでそこに向かいました。
その場所に着いてみると、やはり小型の船が停まっています。
恐る恐る近寄ってみます。
着陸船は卵のかたちをしていました。
皆で囲んでいると、船の中から何やら機械的な音が聞こえてきました。
「もしかして、これから扉が開くのでは」
放射能に汚染されているかもしれないし、少し後ろに下がります。
(放射能を警戒するなら、近寄ること自体間違いでしたが。)
やはり、扉が開きました。
つるんとした壁面が唐突に開いたのです。
ぽっかりと暗い穴が開きます。
しばらくすると、中から人が出てきました。
人間の女性です。
着陸船から降りて、完全にに姿を現してみると、女性は金髪で、近代西欧のドレスのようなものを着ていました。
(マリー・アントワネットみたいだな。)
歴史の教科書に載っている、その時代の風俗にそっくりです。
宇宙人はなにやら亀のようなかたちの台車に乗っていました。
大きさは縦横3辰らいで、高さはほぼ2辰任后
「ここまで宇宙人と接触するのは、人類史上初めてかもしれないぞ。村長、村長!」
この島の村長を呼び寄せました。
「こちらにそそうがあって、先方が腹を立てたら面倒なことになる。あんたがここの代表なんだから、あの宇宙人に友好的な態度を示せよ」
村長は十秒ほど考えましたが、「わかった」と答えます。
村長は島の人々にむかって、何やらタガログ語で話をします。
すると、後ろの方から、若い娘2人が前に出てきました。
カモナとモリーンの二人で、この島きっての美人姉妹です。
(なるほど。美人姉妹を伴って行くことで、誠意を見せようとしているのか。)
村長と美人姉妹の3人は、ゆっくりと宇宙人に近づきます。
宇宙人はその3人が近づいてくるのを見ると、突然、歌を歌いだしました。
柔らかな声で、きれいな歌です。
どういう仕掛けなのかは分かりませんが、台車の周りから伴奏のような音も流れてきます。
「この世のものではないような歌声だな。まるで天使だ」
天使。容貌と声とが相まって、まさに天使の佇まいです。
美しい歌声に引き寄せられ、村人全員が宇宙人に歩み寄ります。
宇宙人を囲んで、2百人くらいの人の輪が出来ました。
皆で宇宙人の歌声に聞き入りました。
そのまま5分間くらいの間、歌を聴いていると、すこぶるいい気持になって来ました。
皆野気が緩み、その場にしゃがみ込む者が増えてきます。
「なんだか、眠くなってしまうほどの美しい歌声だね」
皆が一斉にしゃがみ込みます。
すると、頃合いを見計らったのか、宇宙人の立つ台車から、突然、触手のような、あるいは蜘蛛の足のようなものが飛び出しました。
その触手の先端は、どれも鋏のように尖っています。
鋏と言うか、鎌に近い形状です。
その鎌がぎらっときらめいたかと思うと、近くに座っていた7、8人の首が刎ね跳びました。
「うわっ!」
皆が驚いて、後ずさりします。
次に宇宙人は台車から、足のような触手を出します。
まさに蜘蛛のかたちになりました。
宇宙人はその足を踏ん張ると、もの凄い速さで、村人を襲い始めました。
大鎌を次々振るい、村人の首を刈って行きます。
蜘蛛に化けて見ると、最初の貴婦人は、しゅんと半分ほどにしぼんでしまいました。
人ではなく、人のかたちを模した飾りだったのです。
「おいおい。あれは疑似餌だったのかよ」
貴婦人の部分は、おそらく生き物を引き付けるための餌で、本体はあの蜘蛛のほうです。
あの宇宙人は餌を探すためにこの星に来たのでした。
私はもちろんのこと、村人は宇宙人から遠ざかろうと、必死で走ります。
逃げながらも、私の頭の中は比較的冷静でした。
「宇宙人から皆が一目散に逃げている。蜘蛛の子を散らすように逃げる、ってのは、まさにこのことだよな」
ここで覚醒。
何かを象徴しているのでしょうが、何のことやらサッパリわかりません。