日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第247夜 寮の部屋で

ホラー映画(DVD)を見た後で、そのまま少し居眠りしたのですが、その時に観た夢です。

眼が醒めると、狭い部屋の中。
2畳半か3畳の細長い部屋で、ベッドの他には机しかありません。
「ああ。ここはあの寮だ」
(夢の中ですが、いつも通り、「ここは夢の中」という意識があります。)

この寮は18歳から19歳の時に入っていた寮です。
「うなぎの寝床」という言葉がありますが、部屋のサイズはまさにそれ。
3階建ての建物に、260部屋のうなぎの寝床がありました。

頭の先にはガラス窓があります。
私の部屋番号は256で、国道みたいな番号でした。
「今は何時?」
机の上に目覚まし時計があり、夜の2時過ぎを指しています。

窓の外から話声が聞こえます。
ぶつぶつという男の声です。
「またか」
この寮は午後9時以降は、部屋の行き来が禁止でした。見回りが来て、他の部屋にいると、寮の舎監に思い切り叱られます。このため、話し足りない寮生たちは屋上に上り、隅に隠れて話をしました。
屋上で話をする場所は、通気口の裏で、それはすなわち私の部屋の真上でした。
このため、時々、がやがやと話声が聞こえたのです。

ところが、その人声は1人の声でした。
「オレはどうして、こんなことになったんだ」
「そんなつもりはなかったのに」
「嫌だ。嫌だよ」
何やら、自分を責めたり、過去を悔いたりと、苦しそうな内容です。

そんな話を聞いていても、気が滅入るだけです。
そこで、「トイレにでも行こう」とベッドから起きようとしました。
すると、体がまったく動きません。
「これって、もしや金縛り?」
そんなことはないよな。金縛りは「夢うつつ」の時に起きるもので、要するに、頭は目覚めているが、体の方はまだ起きていない、という状態のはずです。
私の頭は比較的はっきりして、周囲の状況も冷静に判断できました。

「ううう」
窓の外では、唸り声のような、泣き声のような声が響いています。
「気持ち悪いなあ。やめてよ」
ここまでは、まだ気持ちに余裕がありました。
「だいたい、この寮の学生はバカばっかりだし」
夜中に1人で泣いてるヤツだって、幾らでもいそう。

それが一変したのは、すぐその後です。
首がようやくほんの少し動かせるようになったので、窓ガラスのほうを見上げました。
窓の外に、人が立っています。声の主は男で、摺りガラスの窓の外に、うっすらと顔が見えていました。
「うひゃあ。幽霊じゃんか!」
私の窓の外には桟がなく、要するにそこに人が立つスペースも取っ掛かりもないのです。
すなわち、その男は空中に浮いているわけです。

ベッドから転がり落ちるように下り、ドアに進みます。
歩くことはもちろん出来ず、這って進みました。

ドアを開けると、そこに寮の舎監が立っていました。
「あれ。君は1人なの?声が聞こえるから、どやしつけてやろうと思って、ここまで来てみたのに」
寮の舎監は、インターフォンを盗聴器として使い、各部屋の音を聞いては、取締りに使っていたのでした。
私はさらに戦慄しました。
「うえ。それって、あの男が部屋の中にも来ていたということじゃん」

ここで覚醒。

この夢は想像や妄想ではなく、過去の体験をなぞる夢です。
もう幾度となく同じ夢を見ましたが、まだあの悪夢のような体験から解放されていません。
山の斜面にあったお墓を崩して作ったその寮では、頻繁に異常な出来事が起きました。
(詳細には書きたくないです。きっと、他の人が怪談として知る都市伝説の中でも、かなり気持ち悪い部類です。)
私と同じ体験をした寮生も多く、1度はドアの前で「それ」に立たれた寮生が、隣の部屋の窓ガラスを蹴破って、逃げて来たことがあります。
私はその隣の部屋をたまたま訪れていたのですが、窓から飛び込んできたその寮生は、割れたガラスで血だらけで、怖さのあまり小便を漏らしていました。
当事者として経験がありますので、その寮生の恐怖はよく分かります。
この寮では、自殺者も出たりして、本当に恐ろしい思いをした1年でした。

今は同じ路線の別の駅に乗り降りしていますが、何十年経っても、その寮のあった駅に降りる気がしません。
これは次から次に、恐ろしいことが起きた「あの寮」の話で、長い間、都市伝説になっていました。
その後、その寮の建物は取り壊されたのか、怪談話を聞くことは無くなりました。
もちろん、思い出したくないので、寮の「その後」を調べることもしません。

居眠りをする直前に観たホラー映画の何百倍も怖い実体験でした。