夕食の支度をした後、つい寝入ってしまいました。その時に観た短い夢です。
気がつくと、長椅子に座っている。
「ここはどこだよ」
周囲を見回すと、どこかホテルのロビーのようなところだ。
「なんでここに」
まったく思い出せない。
ま、いっか。
そこに、女がやってくる。
年恰好は三十台の終わり頃くらいか。
なんとなく、これは自分の妻だという気がしている。
「ねえ。〇〇がまだ来ないよ。どうしたのかしら」
「道が混んでるんじゃないか」
「それにしては遅すぎるよ」
「まだ1時間も経っていないよ」
女は渋い表情だ。
何か催しがあって、皆でここに集まることになっているが、家族のうち1人が遅れているのだ。
「何か連絡はない?」
「いや。何も」
そこに、若い女と3歳くらいの女がやってくる。
「ねえ。〇〇が来ないよ」
「うん。今俺たちもその話をしていたところだ」
「迎えに行って来ようかな」
若い女がバッグから鍵を取り出す。
「じゃあ、私も行く」
前の女が立ち上がった。
「先にご飯でも食べてなよ。遅くなるかもしれないから」
女2人と子どもは、連れだってロビーから出て行く。
そう言えば、今日は何も食べてないな。
少し腹が減った。
このホテルには、良いレストランがあったっけか。
「確か中華があったよ」
前のソファにいる女が口を開く。
「そうだな。ここの中華は美味いんだよな。一緒に食べに行こう」
「うん」
ここで、あることに気がつく。
あれ。この女は誰だっけ。妻らしき女と娘。それと孫みたいな3人は、さっき出て行ったのに。
いったいコイツはどこから来たわけ?
じっと女の顔を見る。
このオレの視線に女が気づいた。
「何?」
「いや。お前は誰だっけかと思ってさ」
「20年も連れ添った奥さんに、いまさら何言ってんの」
そう言えばそうだ。
コイツはオレの古女房だっけな。早く結婚したから、まだアラ40だ。
待てよ。じゃあ、さっきのは誰?
妻は娘や孫と一緒に、息子?を迎えに行ったのではなかったか。
うーん。
頭がぼんやりする。
もしやオレは、もはや認知症で、誰が誰だかわからなくなっているわけなの?
「まだ爺さんの齢ではないよな」
知らず知らず口に出して言っていた。
横の女が「え?」と顔を向ける。
オレって、もしかすると、周りのことが全然分からなくなっているのかも。
急に不安感に襲われる。
ここで覚醒。
「恐怖」に近い不安感を得て、目覚めました。
この世で最も怖ろしいのは人の心ですが、その中でも、自分の心が最も怖ろしいです。