日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第274夜 パーキングエリアで

どうにも体調がかんばしくなく、寝たり起きたり。
横になっていても、眠ることが出来ず、睡眠はわずか。
そんな状態で観た夢です。

家人と2人で車を走らせている。
ここは高速道路か、あるいは郊外の観光道路のようです。

「お茶でも買おうか」
パーキングエリアのような場所があるのに気づき、車を寄せます。
駐車場は300台くらい入りそうなスペースで、何十台も車が停まっていました。

「先にトイレに行って来る」
「じゃあ私がお茶を買って来る」
家人がドアを開けて車から出て行きます。
私の方は鍵を閉め、トイレに向かいました。

トイレを出ると、家人が待っていました。
「お父さん。ここは変だよ」
「何があったの?」
「人が誰もいない」
え。そんなことはないでしょ。
車がこんなに停まっているし、売店にはぶつかりそうなくらい、通路に人がいるでしょ。
「人が1人もいないよ」
「客はともかく、店員がいるだろ」
「それもいない」
「じゃあ、オレも行ってみる」
2人で売店に向かいます。

家人の言うとおり、店内には誰もいませんでした。
「そんな筈がないんだけどな」
陳列棚に近づきます。
普通は土産物が積んである筈ですが、箱が2つ3つ置いてあるだけでした。
しかも埃まみれです。
「なんだか、1年くらい放置されていたような感じだな。どういうことだろ」
「おかしいでしょ」

2人で外に出ます。
「こんなに車があるのに、皆どこに行ったんだろ」
正面に観光バスが見えています。
そのバスのドアが開いていました。
なんとなく、バスの方に歩き出します。

バスの手前10メートルくらいのところまで近づきました。
「なんだ。人が乗ってるじゃん」
バスの窓には、沢山の人が見えます。
「きちきちと詰め、全員が椅子に座っているようだ」
さらに近づきます。

窓の真下に行き、見上げました。
「うひゃあ」
思わず声を上げてしまいました。
後ろにいた家人が「え。なに?」と近づこうとする気配がします。
「こっちに来るな。このバスの乗客は皆死んでるぞ」
ガラスの向こうに見える乗客の顔は、干からびた死体のそれでした。
座席に座り、頭を落とした状態で死んでいたのです。

「なんだこりゃ。いったい何が起きたんだろ」
家人を遠ざけ、私だけ次の車に向かいます。
乗用車の運転席に座っていたのも、やはり死体でした。
そして、さらに次の車も。

「お父さん!」
急に家人が私を呼ぶ声がしました。
「なに?」
振り向くと、家人がバスを指差しています。
「動いてる。この人たちは動いてるよ」
すぐに家人の許に戻りました。

「ほら。あの人たちを見て。少しずつ動いてる」
そんな馬鹿な。
バスのドアから中に入り、上に上がってみました。
やはり乗客の全員が頭を落とし、下を向いています。
「そのままじっと見ていて」
家人の言葉に、乗客たちを見続けます。
すると、確かに乗客は少しずつ動いていました。
ごく僅かですが、体を揺すっていたのです。

「おい。大丈夫か」
一番前の席の乗客に声を掛けてみました。
20歳くらいの女性でした。
乗客の顔がよく見えるように、腰を屈めます。
すると、すぐに女性の体から死臭が湧き上がって来ました。
慌てて体を離します。
「やはり死んでるよ。それもかなり時間が経っている」
家人がこれをすぐに否定しました。
「でも、ほら」
顔を上げて、家人が指す方を見ます。

すると、後ろの乗客の顔が上がっていました。
「ありゃ。ほんとだ。はっきり動いてら」
先ほどまでは、頭を落としていたのに、今は顔を上に向けていました。
この時、私は一瞬の間、「こより」を思い浮かべました。
紙の「こより」に、水を一滴落とすと、よじれがもとに戻ろうとして動きます。
じりじり・くねくねと「こより」が動く様子によく似ていました。
でも、もちろん、今の状況はそれとは違います。

「とても生きているようには見えないけれど、動いているのは確かだな。こいつらはゾンビなのか」
いずれにせよ、ロクなことはなさそうです。
2人でバスを降りました。

「ここで何があったんでしょ」
「何かの大量破壊兵器が使われたとか、あるいは」
口にしてはみたものの、大量死の可能性はなさそうです。
この辺りは死体で充満していますが、厳密な意味で死んではいない模様ですから。
「もしかして、オレたちは、この世のものならぬ領域に足を踏み込んでしまったのかも」
「じゃあ、すぐにここから出なくては」

私はため息を吐き、小さく首を振りました。
「もし、オレたちがただここに迷い込んだだけならいいけどな」
しかし、そうではないかもしれません。
つい先ほどから、私は自分の手が黒く干からびているのに気づいていました。

ここで覚醒。

「程なく死ぬのではないか」という思いがあり、これが形を変えて、夢に現れた模様です。