いつも、目覚める直前の夢を1つか2つは記憶しています。
脈絡がないことも多いのですが、筋や意味がありそうな時にはメモを取るようにしています。
日曜の深夜、トイレに目覚める前に観ていた夢です。
どこか暗いところを歩いている。
灯りがまったく無く、どこを歩いているか見当もつかない。
道端の用水路に落ちてしまうかも。
しかし、さしたる不安感を覚えず、歩を前に進めている。
坂道を上り、そして下り始める。
すると、先の方にぼんやりと光が見えて来た。
なんとなく、「自分はあの光に向かって歩いているのだ」という気がしてくる。
ゆっくりと光に近づく。
30辰らいの所にくると、光の中の実体が見えて来た。
人が立っていて、その回りが鈍く光っているのだ。
さらにその光に近づく。
向こう側を向いているが、そこに立っていたのは女だった。
声を掛ける。
「おい」
我ながら横柄な口調だ。
声に応じ女が振り向く。
その女は家人だった。
「オトーサン。遅いよ」
家人は生前と同じで、口やかましい。
ここで、自分が「生前」という言葉遣いをしたことに驚く。
「どれくらい経った?」
「12年」
12年か。それじゃあ、確かに時間が掛かり過ぎる。
「スマンな。ここから先は時間の感覚が無いんだよ」
実際、峠の向こうにいると、時間の経過が分からない。
「お前はもっと長生きするかと思ったのに」
オレが死んだ後、独りでどうしていたんだろ。
「トーサンが早く死ぬから、私は結構苦労した」
「子供たちは?」
「皆元気にしてる。孫も3人出来たよ」
そっか。
いずれにせよ、こちらでは知りようがない。
「じゃあ、行くか」
「うん」
2人でオレが来た道を戻り始める。
また峠を上って、坂を下りると、あちら側の世界だ。
生きていた頃とはまったく別のものを見ることになる。
「暗くて前が見えないだろ」
家人に手を差し出す。
この先の峠を下ると、また別々の道を進むことになる。
それまでに、家人が上手く馴染めるように説明してやらねば。
ここには時間が存在しないので、今の現実を受け入れた時が終点だ。
オレは案内役なので、家人が独りで前に進めるところまで手助けする必要がある。
まあ、いつかは受け入れるし、受け入れてしまえば、それまでが一瞬のように思えるはずだ。
「すぐ着くからね」
そこに到達すればお別れだが、今はもうしばらく言わずに置こう。
オレのほうも生きていた頃の感覚を、もう少し味わいたいからな。
「結局、キャンプには行けなかったね」
そう言えば、オレが死ぬ直前に「いつかキャンプに連れて行く」と約束したが、果たせずに終わったのだった。
「別に、寄り道をしようと思えば、ここでも同じことは出来る。ま、この近辺は少し暗いんだけどね」
「ちょっとここは暗いわね」
そのまま、2人で歩き続ける。
しばらく進むと、家人が急に立ち止まった。
「わたし。死んだんだね」
「ウン。オレの後で良かったね。オレより先に死んだら、どこに行けば良いか分からなかったろ。お前はそそっかしいからな」
「本当だね」
この先は道に迷うことは無い。
道の先が薄らボンヤリと明るくなっており、「こっちに来い」と言っているようだ。
ここで覚醒。