日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第268夜 暗夜行

いつも、目覚める直前の夢を1つか2つは記憶しています。
脈絡がないことも多いのですが、筋や意味がありそうな時にはメモを取るようにしています。

日曜の深夜、トイレに目覚める前に観ていた夢です。

どこか暗いところを歩いている。
灯りがまったく無く、どこを歩いているか見当もつかない。
道端の用水路に落ちてしまうかも。
しかし、さしたる不安感を覚えず、歩を前に進めている。

坂道を上り、そして下り始める。
すると、先の方にぼんやりと光が見えて来た。
なんとなく、「自分はあの光に向かって歩いているのだ」という気がしてくる。

ゆっくりと光に近づく。
30辰らいの所にくると、光の中の実体が見えて来た。
人が立っていて、その回りが鈍く光っているのだ。

さらにその光に近づく。
向こう側を向いているが、そこに立っていたのは女だった。
声を掛ける。
「おい」
我ながら横柄な口調だ。
声に応じ女が振り向く。
その女は家人だった。

「オトーサン。遅いよ」
家人は生前と同じで、口やかましい。
ここで、自分が「生前」という言葉遣いをしたことに驚く。
「どれくらい経った?」
「12年」
12年か。それじゃあ、確かに時間が掛かり過ぎる。
「スマンな。ここから先は時間の感覚が無いんだよ」
実際、峠の向こうにいると、時間の経過が分からない。

「お前はもっと長生きするかと思ったのに」
オレが死んだ後、独りでどうしていたんだろ。
「トーサンが早く死ぬから、私は結構苦労した」
「子供たちは?」
「皆元気にしてる。孫も3人出来たよ」
そっか。
いずれにせよ、こちらでは知りようがない。

「じゃあ、行くか」
「うん」
2人でオレが来た道を戻り始める。
また峠を上って、坂を下りると、あちら側の世界だ。
生きていた頃とはまったく別のものを見ることになる。
「暗くて前が見えないだろ」
家人に手を差し出す。
この先の峠を下ると、また別々の道を進むことになる。
それまでに、家人が上手く馴染めるように説明してやらねば。

ここには時間が存在しないので、今の現実を受け入れた時が終点だ。
オレは案内役なので、家人が独りで前に進めるところまで手助けする必要がある。
まあ、いつかは受け入れるし、受け入れてしまえば、それまでが一瞬のように思えるはずだ。

「すぐ着くからね」
そこに到達すればお別れだが、今はもうしばらく言わずに置こう。
オレのほうも生きていた頃の感覚を、もう少し味わいたいからな。
「結局、キャンプには行けなかったね」
そう言えば、オレが死ぬ直前に「いつかキャンプに連れて行く」と約束したが、果たせずに終わったのだった。
「別に、寄り道をしようと思えば、ここでも同じことは出来る。ま、この近辺は少し暗いんだけどね」
「ちょっとここは暗いわね」
そのまま、2人で歩き続ける。

しばらく進むと、家人が急に立ち止まった。
「わたし。死んだんだね」
「ウン。オレの後で良かったね。オレより先に死んだら、どこに行けば良いか分からなかったろ。お前はそそっかしいからな」
「本当だね」
この先は道に迷うことは無い。
道の先が薄らボンヤリと明るくなっており、「こっちに来い」と言っているようだ。

ここで覚醒。