日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第273夜 悪魔

昼に仮眠を取った際に観た短い夢です。

熱病が大流行した。
簡単に言うと、「発生源がこの国からは遠い」とたかをくくっていたのが原因だ。
飛行機を経由して侵入したらしく、最初に空港で数人の患者が収容された。
その後は、毎日数十人ずつ患者が増え、半月後には日に数百人、ひと月後には千人単位で増えるようになった。
今では、発症患者は3万人に達している。

オレは保健所の職員で、防疫が専門だ。
あまりに感染患者が増えたので、患者の隔離はもはや不可能になっている。
そのせいで1週間の外出禁止令が出たが、街は人通りも無くひっそりとしている。

消毒しても消毒しても、感染者が増える。
オレたちは、この大量感染の原因を突き止めるために、街中を調べ直している。
色々と調べてみると、不思議なことがわかった。
ウイルスは毎日、夕方の一定時刻になると、空気中にまんべんなく漂っていたのだ。

「これじゃあ、まるで空から降りて来ているようだよ」
これがヒントになった。
まるで空中散布したみたいな出方だ。
誰かがこの街の上からウイルスを撒いているのではないか、という疑いが強くなった。

その時から、空や高層ビルの上に注意が払われるようになった。
ウイルスが撒かれる時刻になると、オレたちだけでなく警察、消防を含め、総動員で監視を行ったのだ。

そして、オレは高層ビルの屋上で、1人の男を見つけた。
男は屋上の片隅で、空を見上げていた。
「おい。何をしている」
背後から声を掛けると、男が振り返った。
「あ。コイツは」
オレの夢に度々出て来る悪魔だった。
(この辺はいつも通り「今は夢の中にいる」という自覚があります。)

黒く長い髪。ラテン系の風貌だ。
「お前か。今度の夢では、お前は役人をやっているのか」
驚いたことにコイツも「今はオレの夢の中にいる」ことを自覚していた。
それなら話が早い。

「お前が犯人だったのか」
オレが追及すると、男が笑う。
「はは。大体想像がついただろ」
この世に害悪が蔓延するのは、概ねコイツが原因だ。
ひと言で言えば、コイツは悪魔なのだった。
「どうやって、貴様はウイルスを撒いたのだ」
男は空を見上げた。
「なあに。アガメムノンの怪物を呼んだのだ」
何だよ、そりゃ。
「それは何だ?」
「見た目は蛸みたいなヤツだ。ま、人間の眼には見えないんだけどね。俺には見える」
「どこにいる」
悪魔は黙って人差し指を空に向けた。

オレは上を見上げるが、何ひとつ異常は無かった。
悪魔が笑う。
「人間の眼には見えないと言ったろ」
ウイルスの撒かれ方から想像すると、かなり大きいヤツだ。
「きっと相当でかいんだな」
悪魔が頷く。
「ちょうど三原山くらいの大きさだな」
ここでオレは言葉に詰まった。
三原山の大きさじゃあ、空からまんべんなくウイルスが降り注いでいるのも当然だ。早く止めさせないと。)

悪魔がオレに釘を刺す。
「核ミサイルでもダメだぞ。コイツは透明な蛸だ。ふわっと空に浮いて難を逃れるだろうよ」
これでオレは閃き、すぐさま携帯で連絡した。
「すぐに、放射能の汚染物質を、ほんの少量だけ海に投与してください」
再び悪魔が笑う。
「何だそりゃ。核ミサイルでもダメだと言っただろ」
今度はオレが笑った。
「お前は知らないのか。この国には、ビキニ環礁の実験で生まれた守護神がいるんだよ」

三原山放射能と来れば、あの破壊神が思い浮かぶ。
放射能の匂いで、あの神がきっと動いてくれる。
相手が怪物なら、きっと我らの破壊神が倒してくれるだろ。
悪魔はオレの考えに気づくと、「ちっ」と舌打ちをした。

ここで覚醒。

ゴジラよ、永遠なれ。
姿かたちのイメージは、最初のあのモノクロのスゴイやつです。