日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第319夜 本当の恐怖

体調がイマイチで、お昼ごろに横になっていた時に観た夢です。

僕は十歳。
北国の田舎町に住んでいる。
この地区には一応、十数軒の家が建っているが、隣の家までは五十辰らいある。
小学校までは1.5キロくらいの距離があり、毎日、4人の子どもたちと一緒に歩いて学校に通っている。
春から秋まではどうということもないが、冬は大変だ。
雪が膝まで積もるので、登下校に片道90分は掛かってしまう。

下級生の面倒も見なくてはならない。
2年生までは親が送るが、集団登校では5年生が僕1人で、4年生の女子が1人。あとは3年生だ。
小柄な3年生なら、雪が腰の近くまで積もることもある。

4年生の女子はアキコという名前で、3軒隣の子だ。
お母さんが家におらず、お父さんは出張が多いので、いつもはお祖母ちゃんと2人で暮らしている。
このアキコが僕にとっては頭痛の種だ。

家にはお祖母ちゃんしかいないから、外で遊ぶことが多くなる。
でも、ここはイナカだから同じ年頃の子は僕だけだ。
だから、アキコは僕を遊び相手にしたくて、まとわりついてくる。
登下校は皆で一緒にするのが決まりだから仕方ないけれど、それ以外では女子と遊ぶのは嫌だ。
僕は山に行ったり、川に釣りに行きたいけれど、仲間に女子がいると動ける範囲が限られる。
それに僕が女子と一緒にいるところを他の地区の子らに見られると、学校で冷やかされるのだ。

学校から帰ると、僕はアキコにつきまとわれないように、家の中にカバンを放り捨てて、走り出る。
どこに行くのか知られなければ、アキコがあとをついて来ることもないからだ。
アキコだって、うかうかしていると自分が置いて行かれることは知っている。
だから、僕と同じように、家にランドセルを置いて、すぐに走り出て来るが、大概の場合は、僕はもう3百メートルは離れた所にいる。
僕の姿が指の先みたいに小さくなってれば、もうアキコも追いかけては来ない。
こうすれば大丈夫。
ちょっと可哀相な気もするけどね。

12月の雪が降った日に、僕は山の子の家に遊びに行く約束をした。
その子は開拓農家の子で、2キロほど山道を登った所に家がある。
坂道がキツいので、僕くらいの体格がないとそこには行けない。
「こりゃ、今日はアキコに見つからないようにしないと」
後からついて来られた日には、面倒を見なくてはならなくなる。
校舎を出る時から心構えをして、家に帰った時の段取りを考えた。
家の出入り口には、竹のスキーが置いてあった。
もちろん、普通のスキーほどの長さは無く、せいぜい30センチ。かんじきよりも簡単な雪歩きの道具だ。
「あれを履いて、さっさと先に行けば、アキコもついて来られないよな」
腹は決まった。

山の子の家に行って、戻って来るには時間がかかる。
家に戻る頃には、きっと暗くなっているだろ。
僕の足はどうしても速くなる。
家の近くに着く頃には、アキコたち下級生を百メートルくらい置き去りにしていた。

僕の家の近くの国道には、白い車が停まっていた。
僕はその車の横を通り過ぎて、家に入った。
「しめしめ。これだけ離して置けば、アキコがついては来られないぞ」
僕は大慌てで、竹スキーを履き、外に出た。

しかし、アキコもさるもので、僕の下校時の振る舞いから、必ずどこかに出掛けるとふんだらしい。
アキコは家に帰ると、たぶん父親のものだろう、大きな長靴を履いて、外に走り出て来た。
僕は百メートル先を歩いていたが、アキコはその僕を見つけると、僕を追い駆け始めた。
「あの長靴じゃあ、この竹スキーには追いつけないな」
僕はたかをくくって、のんびり山道を登り始めた。
「どうせ3百メートルも行かないうちにあきらめるだろ」
後ろも見ずに先に進む。

しばらくしてから、何の気なしに後ろを見ると、アキコはまだ僕の後ろをついて来ていた。
もう僕の地区からはかなり遠い。
「やや。困ったな」
少し先の道分かれを曲がると、すっかり国道から離れてしまう。
「この辺で家に帰してやらないと不味いよな」
僕はアキコを家に帰すべく、完全に置いてけぼりにすることにした。
最後に後ろを振り返ると、必死な表情で僕を追い駆けるアキコの顔が見える。
アキコの後ろから白い車が走って来たので、その車がアキコの横を通り過ぎた時を合図にして、僕は猛然とダッシュした。

道別れを曲がったところで、僕は足を速め、ぐんぐん引き離した。
「もう3、4百メートルは離しただろ」
息が切れた所で、後ろを振り返ると、既にアキコの姿は無かった。
「ああ。諦めて家に帰ったんだな」
僕は安心して、歩調を緩め、山の子の家に向かった。

山の子の家で遊んだ後、僕は家に戻った。
この夜の夕ご飯はカレーだった。
僕はカレーが大好きだから、「週に1回だけでなく、2回3回カレーでも良いのに」と思いながらお替りをした。
2杯目を食べている時に、家に誰かがやって来た。
母が応対に出ると、アキコの家のお祖母さんだった。
「家のアキコを知りませんか。まだ帰って来ないのです」

僕は心底驚いた。
アキコはあの道別れの所から、家に帰ったと思っていたが、そうではなかったのだ。
「え。もう8時を過ぎてますけど」
母の心配そうな声が聞こえる。
そう言えば、最近、不審者が小学生を連れ去ろうとした事件があった。
学校からも「注意するように」と言われていたっけな。

嫌な感じがして、胃の辺りが冷たくなった。
そう言えば、下校の時、なぜか国道に白い車が停まっていた。
アキコのことを追い越そうとした車も白だった。
あれは同じ車だったのではなかろうか。
もしかして、あの車。子どもを攫うつもりで、見張っていたのではないか。

「僕は変な車を見ました。白い車です。ナンバーの最後が※×□◎でした」
その番号は、たまたま僕の家の電話番号と同じだったから、僕は憶えていたのだ。
母が僕をきつい視線で睨む。
「何で早く言わないの!」
しかし、そんなことを言われたって、まさかこんなことになるとは想像すら出来ないわけで。

母はすぐさま警察に電話して、近所の子がいなくなったことを報せた。
それから、この地区の人が総出で、アキコの行方を探すことになった。

事情が分かったのは、深夜になってからだった。
さすがに僕は一睡も出来ず、布団の中で丸くなっていた。
すると、2時を過ぎた頃に家の電話がジリジリと鳴った。
僕の胸はぎゅうっと締め付けられた。
「もしアキコが誘拐犯に殺されてたら、僕はどうしよう」
とてつもなく恐ろしかった。

ここで中断。
記述はここまでにします。
目覚めた直後に、慌ててメモ替りに書き始めましたが、丁寧に書くと、物語になりそうな感じです。
おしまいまで書くと、「1度書いた」ことになるらしいです。