日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第342夜 ストーカー

第341夜を観て目覚めた後に、再び眠りに落ちました。
これはその時の夢です。

目を開くと、机に座っている。
顔を上げて、5台あるビデオを見詰めていた。
「ここは?」

ここはスーパーの裏の控え室で、オレは警備担当だった。
オレが監視しているのは「万引き」だ。
今、都会では、もし万引き犯の証拠を掴むと、すぐにそいつを捕まえ警察を呼ぶ。
これはボールペン1本でも、ポリ袋1杯の食品でも同じ扱いだ。
テレビの報道番組では、万引き犯を捕まえた後に、店長が問い質すが、あんなことはしない。
「万引きしましたね。その証拠はビデオに撮ってあります」
こう告知するだけで、後は警察が来るまで待つだけだ。
都会では、それくらい万引き犯が多いのだ。

だが、ここみたいに地方の中堅スーパーではそうも行かない。
店に度々警察が入って来ると、客に敬遠される。
このため、「やったようだ」くらいでは摘発しない。
都会の大型店みたいに、精度の高いカメラを使っているわけでもないので、証拠をきちんと積み上げないと、ひっとらえたりはしないのだ。
万が一、それっぽく見えるだけの客なら、後が面倒だ。
まあ、疑わしい素振りの者はほぼやっているわけだが。

それ以前に、警備が監視しているのはレジの係だ。
レジ係が知り合いの品代をスルーさせるようになると、被害額は何十万何百万になる。
最も重点的に監視しているのはレジ係で、万引き犯はその次の対象になる。

しかし、万引き犯を即座に捕まえずとも、その犯人がどこに住んでいて、ダンナがどんな仕事をしていて、子どもが何人いるかくらいは承知している。
その子どもがどこの学校に行っており、部活は何か、ということもだ。
主婦を例えに出したが、やはり割合が高い分、主婦の万引き犯が一番多い。
この店の警備担当は、オレともう1人で、相棒は女性だ。
相棒は30歳だが、犯人に近寄り、証拠を掴む時には、やはり女性の方がやり易い。

この日はある女に注目していた。
相手は50歳台の主婦。ダンナは大手企業の管理職で生活に困っている筈がない。
娘は高校生で、オレの娘と同じ学校に行っている。
オレは画面を見ながら、思わず呟いた。
「この人はもう病気としかいいようがない。レジを済ませた後に、もう一度店内に戻り、精算の済んだレジ袋に品物を入れている。最も分かり易くて、目を付けられやすいやり方なのに」
隣にいるオレの相棒は、高木由紀子という名だが、この子もその女のことを見ていた。
「この人はもうベテランです。そろそろ見逃せないのでは。月に何万円も盗んでいます」
「ま、そうだよな。お母さんが窃盗で捕まったら、娘さんが可哀相だから見ていたが、止める気配が無いどころか、エスカレートしている」
「店員がいないところを探すから、店内をぐるぐると歩き回っていますね」
「それも万引き犯ならではだよな。スーパーじゃあ、どこも監視カメラがあるんだから、どこでも同じなのに」
ここで視線を横にやると、高木由紀子は既に受話器に手を掛けていた。
「先に電話しておくのか」
「はい。ここの警察は電話してから到着するまで15分は掛かります。電話してから押さえましょう。あと、なるべくパトカーは後ろに停めるように言っときます」
「OK。それで良いよ」
娘と同級生か。可哀相だが仕方ない。
万引きはほぼ病気で、薬物中毒と同じだ。
人生が破たんするまで、絶対にやめられない。
「私が行って、押さえて来ます」
「じゃあ、オレはビデオをチェックして置く。佐藤君にもそっちに回るよう連絡しておくから」
佐藤君はこの店の若手社員で、身長が180センチを超える体育会系だった。

高木由紀子が部屋を出て行く。
オレはそのままビデオを眺め続け、万引き女の位置を伝えた。
ビデオでは、高木由紀子と佐藤君がその女の方に近づいて行くのが映っている。

オレは警察にその女が万引きした証拠を提出するために、ビデオをコピーした。
それから、警察が探すのが楽なように、万引き場面を探しておくことにした。
脇のモニターでそのビデオをチェックしているうちに、オレは別のものを見つけた。
25、26歳のきれいな女だ。
「おお。この近くにもこんな美人が住んでいるのか」
スッキリした目鼻立ちで、背が高い。
「モデル並みだな。ミスコンに出ればいいのに」
だが、オレの関心はその女本人に向けられたものではなかった。

その女の後ろに男が映っているのだが、男は店内のどこに女が移動しても、必ず十辰らい後ろに立っていたのだ。
しかも、自分は買い物をせず、チラチラと女のことばかり見ている。
「こいつ。ストーカーかよ」
しかも、かなり異常な部類のようで、明らかに目つきがおかしい。
「こりゃ不味いよな。この人に教えてあげた方が良いかも」

もちろん、オレの心のどこかには、「注意してあげることで、この女と何か接点が生まれないか」という下心がある。
だから、絶対に危険を教えてあげなければならないのだ。
「まあ、自分がストーカーにならない範囲でだけどね」

チラッと上のカメラを見ると、既にこの店の2人が万引き犯を捕まえていた。しかも、警察も到着しており、女の脇に立っている。
「珍しいな。警察がこんなに早く来ている」
じゃあ、オレはミスコンの方に行くことにしよう。
ここでオレは立ち上がって、ドアに向かった。

オレはごく軽い気持ちだったが、この後でまさかあんな怖ろしいことになるとは。
この時のオレは、まったく気づいていなかった。

ここで中断。

これは「面白怖い」話なので、小説にすることにしました。
だいぶ形が変わるとは思います。