日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第376夜 輝ける未来

昼寝の際に観た夢です。

気がつくと、霧の中に立っていた。
赤いスカートを穿いている。上に繋がっているから、スカートと言うよりワンピースだ。
両掌を拡げて見ると、ほっそりしていた。
ああ。私は女なのだ。

ここで少しずつ思い出して来る。
私の名前はナナミだ。仕事はモデル。
身長が170造鯆兇┐討い襪里如▲愁灰愁海離轡隋爾暴个蕕譴討い襦
でも齢がもう28で、そろそろヤバくなって来た。
モデルとして一線で働けるのは、ごく若いうちだけで、多くの場合は年齢が少し上がるとパタッと仕事が来なくなる。
30歳を越えて同じ仕事を続けているのはひと握りで、他は別の仕事に移ることになる。
タレントとして生き残りを賭ける者もいれば、今の業界で企業を試みる者もいる。
私は前者で、女優になる準備をしていた。

今回、ある知人が、大手のプロダクションの社長を紹介してくれると言うので、その知人の車で先方の社長の別荘を訪問することになった。
私は同じ事務所の女の子2人と共に、知人の車でその社長の別荘に向かった。
その別荘は、名の知られた高原の一角にある。
高原の入り口までは記憶があるのだが、そこから先は覚えていない。
他の人はどこにいったのだろうか。

回りを見回しても、四方とも二十胆茲盡えないくらいの霧で覆われている。
もくもくと動く霧は、ただ眺めているだけで恐ろしさを覚える。
このまま夜になったらどうしよう。

地面を見ると、かすかに道の跡が見えている。
人が数人通れるくらいの小さな道だ。
じっとしていてもしょうがないので、この道筋に従って前に進んでみることにした。
十分ほど歩くと、ゲートが見えて来た。
角材を組み板を張り付けたような木づくりの門だ。
西部劇で牧場の入り口に門が出てきたりするが、あれに似たシンプルな門だった。
門の上には、何やら文字を書いた板が貼ってある。
「これは表札だわ」
その表札には「輝ける未来」と書いてあった。

そのまま門を潜り、前に進む。
真っ白な霧の中をさらに進むと、次々と木の切り株が現れた。
切り株の太さは3辰發△襦
何百年も育った樹木を切り倒した跡だった。
これが数十本分も先に続いている。
その切り株の間を進んで行くと、ひとつの切り株に男が座っていた。
黒髪で、彫の深い顔立ちだ。
外国人かしら。

「ようやく来たね。待ってたよ」
あれ。この人は誰だろ。
もしかして、この人が社長さんかしら。
男の人が立ち上がって、私の方に近づいた。
背が高い。女としては私も長身の方だが、私よりも15造蝋發い世蹐Α
もの凄くハンサムだ。
きっとラテン系の血が混じっているんだわ。

目の前の男が口を開く。
「これから君の望みを叶えよう。もちろん、タダじゃないがね」
ある程度、何か代償を求められるだろうと予想はしていた。
呼ばれたのは3人で、そのうち1人が採用になる話だった。
選ばれるのは、要するにその社長さんの「好み」だってことだってこともある。
まあ、多少のことは覚悟している。

「これから君をテストする。それに合格できれば、君には輝ける未来が待っている。これは保証しよう。だが失敗すれば、その先は地獄だ。君は何も得られない」
私の想像とは少し違うようだ。何だろう。
「これから行うテストは簡単なものだ。ついこの先に石を敷き詰めた小道がある。距離はたった20辰澄そこを最後まで歩き切れば、君は何でも君の望む物が得られる。お金だろうが名誉だろうが、望む物総てだ。もちろん、行き切ればということで、もし最後まで行けなかったら、何もかも失う」
けしてオーデョションという訳じゃないようだ。
「今ならテストを受けるのをやめて帰ることも出来る。来た道を戻り、最初の場所に着いたら、道の反対側に進むと、下の街に戻れる。まあ、半日は歩くことになるけどね。君はやるかい?」
半日も歩くのは嫌だ。もはや夕方なので、深夜になってしまう。
それに、私はこの先成功するためにここに来たのだ。

「やります。たった二十辰寮仂?瞭擦鯤發韻侘匹い鵑任垢茲諭
「結構痛いよ。怪我はしないけどね」
ああ。お寺でたまにある「あれ」だろうか。小石を敷き詰めた上を裸足で歩かせるところ。
若い人は平気だけど、中年以降は足の裏が痛くて前には進めない。
「やります」
男は私の返事を聞くと、大きく頷いた。
「よし。じゃあ早速やって貰おうか」

男に導かれ、10辰曚描阿某覆爐函▲好拭璽肇薀ぅ鵑あった。
男が言う通り、丸石が敷き詰められた石の道だった。
「ここを先まで歩けば良いんですよね?」
「ああそうだ」
「じゃあ、初めても良いですか」
「よし。靴と靴下は脱ぐんだぞ」
男が私の傍から離れる。

足元には霧が渦巻いている。
地面から30造旅發気里箸海蹐泙任、霧で覆われているのだ。
「何だか雲の上にいるようだわ
私はその霧の中に足を踏み出した。
裸足の足の裏に、小石の感触が当たる。
何とも無い。
痛くも痒くもなく、ただの小石の感触だった。
「これなら、どうと言うこともないじゃない」
20辰覆乕簡發睚發ないわ。

私は2歩目を踏み出した。
今度はぐにゃっとした感覚だった。
「え?」
石の感じではなかった。
思わず下を見る。手で霧を払ってみると、私が踏んでいたのは人の顔だった。
「痛いよ。酷いじゃないか。なぜオレの顔を踏む」
私の体重で顔が歪んでいる。
足を上げて確かめる。
「あ。あなたは」
高校の同級生だった。同じクラスで、通学路が一緒だったから、時々同じ道を歩いた。
「何だよ。友だちだったのに。顔を踏みつけるなんて」
「ごめん」

後ろから声が響く。
あの男の声だ。
「どんどん前に進まないと、後ろの足場が崩れて行くぞ。落ちたらそこで終わりだからね」
後ろに足を伸ばしてみる。
男の言う通り、わずか50存紊蹐砲蓮△發呂簑場が無かった。
「前に進むしかないのだわ」
でも、さすがに人の顔を踏みつけるのには抵抗がある。
「まさか、人の頭だけってことはないでしょうね」
上着を脱いで、周りを払うように霧を振り払ってみた。
すると、驚いたことに、前の道の総てに、人の顔が埋まっていた。
何百何千という人の顔だった。

「この上を踏み越えて行けと言うの?」

ここで中断。

女はたくさんの顔を踏み越えて、前に進みます。
しかし、顔は次第に身近な人のものになって行きます。
ゴールの近くまで行った時に、男が誰で、何の意図でこれを課したのかが分かります。
結末は、仏教説話のように教訓めいたものにはなりませんでした。
門の先は「輝ける未来」などではなく、もはや地獄の中でした。

似た作品があると思いますので、ふた捻りくらい必要だろうと思います。、