日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第386夜 まだ傍にいる

25日土曜の6時過ぎに観ていた夢です。

原稿を書くのにに没頭し、気が付いたら朝の6時。
「そろそろ休憩すっかな」
カップを持って、階下に降りる。
居間の扉を開けると、テーブルの向こう側にある長椅子に誰かが座っていた。

一瞬、長女かと思うが、髪のかたちが違っていた。
女性であることは間違いない。

長椅子はテーブルの陰なので、見える位置に移動する。
するとそこには、和服を着た女が座っていた。
「う」
ごく大人しい色の着物だ。
普段からこういうのを着ているのだろう。

「うわあ。幽霊だな」
目で見る姿は普通の生きた人と変わらないが、佇まいがやはりこの世のものではない。
ついにまともに出るようになったのか。

俺は時々幽霊を見るが、いつもほんの一瞬だ。
やはり普通の「生きている人」とまったく同じに見えるのだが、すぐに消える。
例えば、公園を散歩している時に、ベンチで人の姿を見る。
視線を外して、1、2秒後に見直すと、すでにその周囲20辰砲録猶討消えている。
生きている人間であれば、数十辰竜?イ鬘院■寡辰念榮阿垢襪海箸覆鵑峠侏茲覆ぁ
消えてみて、初めてそいつが幽霊だったと分かるのだ。

ところが、目の前のコイツはじっと動かずに座っている。
時間が経っても消えることがない。

女が顔を上げて、俺のほうを見る。
こざっぱりした印象の顔つきだった。
「ねえ。私がどこかに行ってしまったと思ってた?」

あ。この女は。
すぐに思い出した。
二十年以上も前に、八戸の根城を訪れた時に、夜中に悪夢を観てうなされた。
病気がもとで死んで行く女の夢だ。
女はまだ若く、この後の人生でやりたいことが沢山あったのに、病気に罹ってしまった。
今なら治る病気だが、この女が生きていたのは何百年かは前の時代だ。
悲しく、悔しい。
そんな女の気落ちが俺の胸に流れ込んでくる。
俺が見詰めるその前で、ついに女が息絶える。
「夢や希望があったろうに。可哀相にな」
俺がそう考えると、死んでいた筈の女がむっくりと体を起こした。
「そう思ってくれるの?なら、私のために私を慰める物語を書いてください」

俺が創作を始めたのは、それからだ。
このことがあったので、いいオヤジになってから書き始めたのだ。
それからも、時々、この女が夢に現れては、死の床から体を起こしていたが、ついに起き上がって話をするところまで来たか。

「しばらく姿を見せなかったのは、貴方を休ませてあげようと思ったからです。どこかに行ったわけじゃない。そろそろ、また私を慰めるような物語を書いて貰おうと思って、今日はここに来ました」
ああ、やはり侍の時代の話を望んでいるのだな。

そりゃあ、全然OKですよ。
まだ書くべき素材も、書き漏らしている物語も沢山あります。

俺はその女に告げる。
「でも、そのためには俺の心臓にもうしばらく動いて貰わなくてはならない。俺が起きて、活動できるくらいには、貴女も協力してくれ」
結構、大変だよ。
今や、神さまや仏さまが総動員で、俺のポンコツの心臓をやっとこさ動かしているのだもの。

ここで覚醒。